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「カレイの煮付け」 秋元順子さん

アラ還の星 輝きの源

歌声とは違う、かわいらしい「アニメ声」もできる。「声優もやってみたい」=高橋美帆撮影

 大人の恋をテーマにした歌謡曲「愛のままで…」で、61歳にして昨年末の紅白歌合戦に出場を果たした。紅白初出場歌手としては史上最年長。

 「愛のままで…」は70万枚を超えるヒットになり、今や「アラ還の星」といわれる。「アラ還」とはアラウンド還暦(60歳前後)の意。

 情感あふれる中低音の歌声で愛の世界を朗々と歌う。でも、ふだんは飾らない性格で、そのギャップも魅力的だ。好きなものは「カレイの煮付け」。

 大ヒットにともなう忙しさでスーパーに立ち寄る機会は減ったが、夫に携帯電話でメールを送ってカレイを買ってもらい、自宅に帰ってさっと料理をする。

 「カレイの煮付けが元気の源なんです。ほくほくの身をほおばると、身も心も芯から癒やされます」。月に4、5回は食べるという。

 原点は子ども時代。釣り好きの父は休日になると、海や川に出かけては釣った魚を持ち帰った。食卓には常に魚料理。

 週1回程度、母がカレイの煮付けを作ってくれた。カレイの卵があまりに美味でそればかり食べて、「身も食べなさい」と母にたしなめられたこともある。

 煮汁は、ほどよい分量のしょうゆと砂糖に少々のお酒が加わった大人の味。「しょうゆと砂糖が絡まった甘辛い香りが食欲を誘うんです。ご飯にかけて食べると、何杯でもいけました」

 小学校4年生の頃、母が仕事に出るようになり、家族のために料理を作るようになった。ある日の晩ご飯、見よう見まねでカレイの煮付けを作ってみたが、しょうゆの分量を間違えて辛くなった。父の機嫌を損ねるのでは、と心配だったが、「おいしい、おいしい」と言って食べてくれた。

 「娘が作ってくれた料理と気を使ってくれたのでしょう。父はもう亡くなりましたが、家族のつながりを感じさせる、思い出深い料理なんです」

 高校卒業後、石油会社に勤務しながらアマチュアのハワイアンバンドで活躍していた。結婚後、子供2人の子育てのため音楽活動を休止していたが、40歳の頃、昔の音楽仲間に誘われ、活動を再開。自主制作した「マディソン郡の恋」が音楽関係者の目にとまり、58歳の時、念願のデビューを果たした。

 「歌手として成功する夢を実現できて、自分はラッキーだった」と振り返る。人知れず努力を重ねてきたというが、どんな努力かとたずねると、「それは秘密よ」とさらりとかわされた。

 「これからも色んなことに挑戦して、感性を磨きたい。だから、私の感性は『未完成』なの、あはは」と、得意のだじゃれで「オヤジギャグ」をとばす。カレイの煮付けをエネルギーに、これからも活躍してくれそうだ。(岩浅憲史)

 あきもと・じゅんこ 歌手。1947年、東京都生まれ。2005年「マディソン郡の恋」でデビュー。7月8日に新曲「黄昏Love again」(キングレコード)をリリースするほか、9月4日に米国のロサンゼルスでコンサートを開く予定。

2009年6月30日  読売新聞)
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