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毛馬キュウリ(大阪市) ザクザク なにわの味復活

毛馬キュウリは「手間キュウリ」。曲がらないように長さ40センチ以上の野菜を作るには、竹の板に固定するなどの工夫がいる=大阪府河南町、上條喜八郎さん(67)の畑で

 上方の夏、といえばハモ。京都出身の食通・北大路魯山人は「肉もうまい、臓物全部がうまい」と絶賛した。湯引きして酢みそで食べたり、カマボコに加工したり。練り物の残りの皮はたれで焼き、薄く切ったキュウリと酢であえる。それが大阪の庶民料理「(はも)皮のざくざく」。

 「昔のキュウリは硬くて、包丁で刻むとザクザク、ザクザクッて音がした。そのまま料理の名前にしたんですよ」

 大阪の伝統食材に詳しい豊下(とよした)正良さん(60)はいう。ハモをウナギにすると「うざく」、わかめやじゃことあえることもある。ひと口、かみしめた音もザクザクッ――。

(右から時計回りに)浅漬け、しば漬け、かす漬け、深漬け(大阪市天王寺区の浪花漬西むらで)

 「今のキュウリは軟らかくて、そんな音でません」と大阪・四天王寺で伝統野菜専門の漬物店「西むら」を営む西村孝さん(65)。イメージは、水木しげるの「河童の三平」に登場するような長くて太いヤツ。俳人・与謝蕪村ゆかりの毛馬村(現大阪市都島区)で生まれた「毛馬(けま)キュウリ」は、「昔のキュウリ」の典型だ。

 江戸時代から勝間(こつま)ナンキンや田辺ダイコンなどとともに、商都の食卓をにぎわせた「なにわ伝統野菜」。ほろ苦い風味と歯ごたえ。長いものは、60センチ以上になる。そんな特産品も太平洋戦争後、生産効率の高い改良品種に取って代わられたという。

 「毛馬キュウリ」は「手間キュウリ」。油断するとすぐ曲がるし、病気にも弱い。昭和40年代から平成にかけては、市場から完全に姿を消していた。府立食とみどりの総合技術センターの森下正博さんが種を見つけ、試験栽培を始めたのは1998年だ。

 復活した「毛馬キュウリ」はまだまだ浸透していない。「『食い倒れの街』らしく、きちんと規格を決めるべきだ」と「浪速魚菜の会」の笹井良隆代表(53)が言うように課題も多いのだ。流通経路の確保、ブランドの確立、何より「手間」をどうするか……。

 「地産地消」と「地場野菜」が人気の21世紀。味はいいからこそ、ぼちぼち、焦らずに。「じっくり漬けて味が出る」(西村さん)キュウリなのだから。
(文・田中聡 写真・永井哲朗)

2009年8月10日  読売新聞)
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