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「おやき」 素朴で濃厚 昔は主食

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焙烙の上で焼いた後、渡しに移して仕上げるおやき。地元のお年寄りらが手作りした素朴な味が魅力だ(長野県小川村のおやき村で)

 昨夏、出張した長野県では「おやき」があちこちで売られていた。関西では聞き慣れない。焼き餅(もち)のような見た目に、甘いまんじゅうを思い浮かべたが、メニューに並ぶのは「野沢菜」「ナス」「切り干し大根」……。味のイメージがわかず、買わずに帰ったことが気になっていた。1年ぶりに足を運んだ。

 JR長野駅から西へ約20キロ。北アルプスを望む人口3000人余りの小川村に、お年寄りらが名産品で村おこしを目指す第3セクターの「小川の庄(しょう)」がある。おやきの販売拠点である「おやき村」を訪ねた。

 おやきは、みそやしょうゆで味付けした野菜、山菜などを、小麦粉を練った生地で包んでつくる。稲作に不向きな山間地が多い県北部で、そばとともに米飯の代わりを果たしてきた。

 同社統括総務部長、伊藤宗善さん(70)は子どものころを、「3日のうち2日は、夕食がおやきだった。翌朝まで囲炉裏の灰の中で保管し、弁当の代わりに学校へ持っていったもんだ」と振り返った。

 ここでは、焼きたてを食べることができる。囲炉裏の上につるした焙烙(ほうろく)で焼き色を付け、火元を扇状に囲む焼き台の「渡し」にのせて遠火で約20分。「ファストフードのように見えて、実はスローフード」と伊藤さんが言う通り、ゆったりと待つ時間が心地よい。

 できたてをガブリとかんでみた。皮はわずか2ミリと聞いていたが、かみごたえがある。みそで味付けされた野沢菜が中にたっぷり入っている。味が皮にもしみこみ、素朴でいて濃厚な味だ。

 これで、1個170円。2個も食べれば、立派な昼食になる。粉もん(小麦粉など粉をベースにした料理)の味と値段にうるさい関西人としても、納得だ。

 「日本コナモン協会」(大阪市)の熊谷真菜会長は「おやきと大阪のたこ焼きは似たもの同士」と話していた。地域や家庭ごとに具材や作り方に特徴がある。おやきも、焼いたり蒸したり、調理方法が様々という。

 だから、別の味も楽しもうと、善光寺仲見世などでも販売する長野市の「おやきや総本家」に立ち寄った。こちらでは、一度蒸してから焼く。10種類以上ある中から、若者のリクエストで誕生したという「じゃがバター」(150円)を選んだ。生地に長芋がすり込まれており、歯に吸い付くような、もっちりとした食感。お菓子感覚で楽しめる。

 昨今の値上げラッシュで、小麦粉の相場も上がり、おやき製造に影響もあるようだ。それでも、市川武邦社長(70)は、月に一つは新製品を出してきた。「次世代に愛されなければ、郷土食は将来がない」との思いからだ。

 地域に長く根ざしてきた粉もんの力を、ここ信州でも、感じることができた。(中館聡子)

「おやきや総本家」のおやきの作り方

 「おやきや総本家」の市川社長に、家庭でのおやきの作り方(5個分)を教えてもらった。〈1〉小麦粉(中力粉またはうどん粉)150グラムに水100ccを入れ、耳たぶの硬さに練り、1〜2時間寝かせる〈2〉練った粉をちぎって5等分し、直径12センチ大に丸く延ばして中に好みの具材を入れ、包む〈3〉包んだおやきを約20分蒸した後、フライパンで焼き色を付ける。同社(026・278・3641)、小川の庄(026・269・3760)は、おやきの通信販売を行っており、おやきづくり体験の申し込みも受け付けている。

2008年9月5日  読売新聞)
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