いかだ被災・養殖数減…大きさ3割増の大型カキに宮城県南三陸町戸倉地区のカキ養殖業者が、大型カキのブランド化に挑んでいる。養殖いかだを失い、やむなくカキの数を減らして育てたところ、養分をたくさん取って大型化したという。 全国販売を目指した種付けも始まり、養殖業復興の先導役になることが期待される。 普通より3割も大きい1個20グラム以上の大物を「戸倉カキ」として売り出そうとしているのは、県漁協志津川支所戸倉出張所のカキ部会。1100台のいかだが全滅し、漁船500隻のうち9割が流失・損壊した。部会長の後藤清広さん(51)は「みんな廃業を覚悟した」と振り返る。 同業者から寄せられた約20台のいかだで昨年6月から試験的に養殖を再開すると、以前は2〜3年で1個15グラム前後までしか育たなかったカキが、4か月で約20グラムにまで成長した。 「こいづこそ、生ぎ残る道だ」。後藤さんは殻を開けた瞬間、そう確信した。「量を減らしても、うまくて大きなカキを売れば採算はとれる」と提案すると、若手らが本格的に大型カキの養殖を始めた。 震災前より7割少ない約300台のいかだを調達し、従来50メートルだった間隔を100メートルに広げた。これで、収穫周期を1〜2年に短縮できるうえ、大型化が望めるという。設備や漁船も共有してコストを抑える。 県水産技術総合センターによると、養殖密度が下がったことでカキに栄養が行き渡り、成長が早まったとみられる。同センターの志津川湾の水質検査では、基準値を超える有害物質は検出されておらず、同センターは「健康への影響はない」と太鼓判を押す。 環境NGO「WWFジャパン」(東京)も「過密養殖の解消は環境保全につながる」として、支援に乗り出した。漁場の水質調査を定期的に行い、一定水準をクリアすれば、認証などでブランド化を手助けする。 宮城、岩手両県の漁協によると、今季の養殖カキの生産量は例年の1割程度にまで落ち込んでいる。 東京海洋大の馬場治教授(漁業経済学)は「差別化を図ることで採算ベースに乗せられれば、養殖業の復興モデルケースの一つになるだろう」と話している。(児島圭一) (2012年1月27日 読売新聞)
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