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被災の酵母復元した「福香ビール」3月11日に発売

岩手・一関の酒造会社

醸造したビールの状態を確かめる世嬉の一酒造の佐藤常務(岩手県一関市で)

 岩手県一関市の酒造会社が14日、震災で死滅する寸前に復元された天然酵母を使ったビールの醸造を始めた。「福香(ふっこう)ビール」と名付け、震災から1年の3月11日に発売する予定だ。

 酵母は震災前の2010年、北里大海洋バイオテクノロジー釜石研究所(岩手県釜石市)が、盛岡市にある国の天然記念物「石割桜」の花びらから採取していた。この桜は花こう岩の割れ目に育った推定樹齢360〜400年のエドヒガンザクラで、酵母を使って試作したパンは香りが良く、商品化への期待が高まっていた。

 しかし、研究所は津波に襲われ、酵母を保存する冷凍機があった1階が壊滅。担当研究者の笠井宏明さん(51)と猪又幸江さん(40)が1週間後、天井にめり込んでいる冷凍機を見つけたが、常温にさらされた酵母は「息も絶え絶えの状態」(猪又さん)になっていた。

 2人は知り合いの研究者に協力してもらい、岩手大で酵母の復元作業を開始。昨年3月中に成功し、停電が続く研究所で、液体窒素を使って冷凍保存したり、ライト付きのヘルメットをかぶって培養作業をしたりした。

 この酵母を使い、県内18の業者が食品の開発に挑戦。このうち一関市の酒造会社「世嬉(せき)の一酒造」がビールの試作に成功し、商品の製造に着手した。

 ビールはえぐみが少なく、かんきつ系の爽やかな風味が特徴。330ミリ・リットル入りの瓶3000本を発売する予定で、同社の佐藤航常務(40)は「全国に売り出し、被災地が忘れられないようにしたい」と話す。

 猪又さんは「石割桜の酵母は希望の光。みんなを元気づける存在になればうれしい」と、他の商品開発も期待している。(中村和裕)

2012年2月15日  読売新聞)
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