文字サイズ
    予選会

    中大2年ぶり本戦へ…2年生主将・舟津の尽力

    呪いのようについてくる伝統校の重さ

    • 予選3位と発表されて歓喜の中大メンバー(中央が舟津)(2017年10月14日、三宅宏撮影)
      予選3位と発表されて歓喜の中大メンバー(中央が舟津)(2017年10月14日、三宅宏撮影)

     1年前の予選会で、中大の1年生主将、舟津彰馬は泣いていた。

     中大は10位の日大に44秒及ばず11位となり、87年続いていた本戦出場が途切れた。1年生主将には、背負うものが重すぎた。

     「自分たちはやれると思って、やってきました。もし、先輩方に文句を言うような人がいたら、自分が受けて立ちます。先輩を悪く言うような人がいたら許しません」

     レース直後の報告会で、舟津は絶叫した。

     舟津を主将に起用したのは、2016年春からチームを率いる藤原正和監督の意向だった。歴代最多の優勝14回を誇る中大も、1996年の第72回大会を最後に優勝から遠ざかっている。世界選手権にマラソンで2度出場している大学OBの藤原監督に再建が託され、荒療治として断行されたのが1年生主将の起用だった。

     「戦う集団ではなかった。結果も出ていないのに好き勝手やっているというお子様の軍団だった。小学生や中学生がやっていることを、大学生がやっている雰囲気。このままではらちがあかない、『何かしら劇的に変えないといけない』ということで、あの時のチームの中で一番ハートがあって、結果を出せる人物を選んだ」

     ただ、チームを大改革するには、時間が足りなかった。

     予選会で敗れたあと、寮には、誹謗(ひぼう)中傷する電話が入り、ファクスが届いた。舟津は伝統の重さ、怖さを改めて思い知った。

     「言い方は悪いけど、呪いのようについてくる。でも、やることは一つ。逃げるつもりはない」

     舟津は2年生になっても、引き続き主将を務めた。いまは「キャプテンという立ち位置は、自分を成長させてくれる要素。キャプテンという立場を大事にしたい」と思っている。

    「能力と努力が握手し出した」

    • ゴール後に涙した舟津(2017年10月14日、三宅宏撮影)
      ゴール後に涙した舟津(2017年10月14日、三宅宏撮影)

     予選を3位で通過するほどチームに力がついたのは、舟津のキャプテンシーだけでなく、メンバー全員が覚醒したことが大きい。

     舟津は「他のメンバーが去年とは違って、雰囲気を作ってくれた。勝ちたい、という思いは伝わってきた」と感じるようになっていた。練習の内容自体は変わらなくても、選手たちの意識が変わり、個々のタイムが伸びた。コミュニケーションをとるため、朝食は朝8時にみんなでそろって食べるような工夫も加えた。

     チームの雰囲気がよくなるにつれ、舟津が自分のための練習をする時間が増えた。

     ただ、舟津個人が順風満帆だった訳ではない。

     米国遠征で合わないやり方もあったことから、春先に思うように走れなくなった。しかし、その時間も無駄ではなかった。

     「自分が苦しんで、走れない人の気持ちが分かって、(他の部員に対する)声かけの質が変わった。人間的に成長した。だから、チームとして、もう一段上にいけた」

     藤原監督はそう振り返り、現在の舟津に関しては、「能力と努力が握手し出したかな」と評した。

     今年の予選会終了後も、舟津は泣いた。

     「59分台(59分48秒で14位)でいい走りができた。夏やってきたことが間違いじゃなかったという涙。うれしかった」

     昨年はチームのために涙した舟津が、今年は個人的なことで泣けた。中大全体のレベルが上がり、下級生主将への依存度が低くなった証しだろう。

     舟津は年明けの本戦で、個人的には区間賞を狙っている。チームでは「8位以内でシード権獲得」という目標がある。

     「自分の結果も、チームの結果も追い求められるように、もう一度厳しくいく」

     2年生主将の挑戦は続く。

     (読売新聞編集委員 三宅宏)

    2017年10月15日 16時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun