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    箱根への道

    屈辱の予選会敗退 復活へ踏み出した古豪・明大“欠場”坂口新主将の決意

    • 紫紺のタスキと古豪復活の思いを末次前主将(中央)から託された坂口新主将(右)と三輪(カメラ・相川 和寛)(スポーツ報知)
      紫紺のタスキと古豪復活の思いを末次前主将(中央)から託された坂口新主将(右)と三輪(カメラ・相川 和寛)(スポーツ報知)

     全日本大学駅伝(5日)が終わり、学生3大駅伝は“最高峰”の箱根駅伝(来年1月2、3日)だけとなった。ただ古豪・明大は晴れ舞台に立つことはできない。予選会(10月14日)でエースの坂口裕之(3年)が体調不良で欠場。準エースの三輪軌道(のりみち、2年)が転倒して途中棄権というアクシデントが続き13位に終わった。坂口新主将を中心に屈辱を受け止め、はるか先の2019年箱根駅伝に向けて走り出した。

     2017年10月14日。明大はあまりにも不運だった。

    • 予選会敗退を乗り越え、練習に励む明大ランナー(スポーツ報知)
      予選会敗退を乗り越え、練習に励む明大ランナー(スポーツ報知)

     第94回箱根駅伝予選会の当日、エース坂口は頭痛を訴え、欠場を余儀なくされた。「13日から体調が悪くなり、14日の朝は起き上がれないほどだった。予選会はテレビで見ることもできず、寝込んでいました」と約1か月前の悪夢を静かに振り返った。

     予選会は登録メンバー14人のうち12人が出場し、個人20キロの上位10人の合計タイムで競う。坂口に加え、夏合宿で急成長を見せていた竹山直宏(3年)も調子が上がらずメンバー外。末次慶太主将ら4年生は不調のため、1人も登録メンバーに入らなかった。

    • 予選会で敗退し、厳しい表情であいさつした明大の末次前主将(右から2人目)(スポーツ報知)
      予選会で敗退し、厳しい表情であいさつした明大の末次前主将(右から2人目)(スポーツ報知)

     スタート前から暗雲が漂っていた明大にレース序盤、さらなるアクシデントが襲った。絶好調だった準エースの三輪が5キロ過ぎの給水ポイントで他校の選手の転倒に巻き込まれ、給水テーブルに左腰を強打して倒れた。「すぐに立ち上がって走り出そうとしたけど、痛みがひどくて無理でした」。坂口と同様に三輪も悪夢を静かに振り返った。

     負の連鎖を断ち切れず13位で敗退。優勝7回を誇る古豪は10年ぶりに箱根駅伝がない正月を迎えることになった。前回、88大会ぶりに本戦出場を逃した中大が今回は3位通過。中大の劇的な復活とは対照的な結末を迎えた。

     ギリギリ10位で通過した東京国際大とは2分31秒差。明大の10番手は1時間2分29秒。仮に三輪が59分57秒で走っていれば10位で通過していた計算になる。「勝負にタラレバはありませんが、59分40秒で走れた自信はあります」と三輪は断言する。その冷静な表情には「負け惜しみ」の雰囲気はない。

     東京・世田谷区の選手寮で伏せていた坂口は病院に行くため、昼前にようやく体を起こした時に敗戦を知った。「まさか、落ちるとは思っていなかった」と率直な気持ちを明かした。

     西弘美監督(65)は不運を嘆くことも選手を責めることも一切なかった。「坂口の体調をレース当日に合わせられなかったのも、三輪に給水地点での転倒の危険性を指導できなかったのも、全て私の責任です」と潔かった。責任を一身に負うベテラン監督に意気を感じた選手たちは前を向いて走り始めた。

     予選会の敗戦から3週間後、明大は全日本大学駅伝に臨んだ。坂口は戦列復帰を果たしたものの、エース区間の2区で25位と苦戦。三輪は練習を再開していたが出番なし。チームも関東勢最下位の15位に終わった。

     ただ、光明もあった。7区で阿部弘輝(2年)が区間新記録をマークし、MVPを獲得。「この1年間、全然結果を残せなくて、すごいモヤモヤしていた。やっと練習と結果がかみ合ったレースができた」とホッとした表情で話した。

     「予選会の一番の敗因は4年生がスタートラインに立てなかったこと」。立川で涙を流しながら頭を下げた末次主将は6区8位。実業団チームに進まない末次にとっては引退レース。力の限り走り抜いた。

     全日本大学駅伝を最後に17年度の戦いを終え、6日から新チームが始動。新主将には坂口が就任した。学生トップクラスの実力を持ちながら箱根駅伝では苦戦続き。1年時は3区最下位で8人に“ごぼう抜かれ”。2年時は10区で13位にとどまった。3年時は走ることさえできない。「箱根駅伝に出られないことは確かにマイナスですが、新シーズンに向けて早く動き出せる、とプラスに考えたい。主将として走りでチームを引っ張っていきます。選手としては4年目、最後の箱根駅伝は持てる力を出し切って気持ちよく走りたい」

     関東学生連合に明大の代表として参戦する中島大就(2年)は5区出場が濃厚。「来季、明大は復活すると決めています。連合チームで、そのための走りをしたい。クヨクヨしても仕方ないし、今はポジティブに考えている。5区は楽しそうですね」と明るく話した。

     三輪は胸を張って大きな目標を明かした。「来季、予選会突破は当たり前。シード権(10位以内)獲得も目標ではない。僕は数年前に大六野(秀畝、現旭化成)さんや文元(慧、現カネボウ)さんが優勝争いする姿を見て明大に入学することを決めた。目標はあくまで優勝争いをすること」と言い切った。

     2019年の第95回大会まで、あと420日…。明大は長い時間をかけて、強くなって箱根路に戻ってくるつもりだ。(竹内 達朗)

     ◆明大競走部 1907年創部。20年の第1回箱根駅伝に出場した4校のうちの1校で「オリジナル4」と呼ばれる伝統校。歴代6位の優勝7回を誇るが、最後の栄冠は49年までさかのぼる。全日本大学駅伝は最高2位(2014年)。出雲駅伝は最高7位(11、13年)。新チームの長距離部員は選手31人、学生スタッフ3人。タスキの色は紫紺。明大を含め早大、慶大などの伝統校は「陸上競技部」ではなく「競走部」を正式名称としている。

    (スポーツ報知)

    2017年11月08日 06時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun