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    鍋焼きうどん ◎うどん亭(札幌市西区)

    「急須」で熱々 手打ち麺

    • 急須型の土鍋に盛られた名物の「鍋焼きうどん」。ダシの香りと具のうま味が絶妙に溶け合う
      急須型の土鍋に盛られた名物の「鍋焼きうどん」。ダシの香りと具のうま味が絶妙に溶け合う

     雪虫がちらほら舞い、冬のにおいが漂い始めると、決まって足を向ける店がある。JR琴似駅のそばで1976年から暖簾のれんを掲げる「うどん亭」だ。

     今でこそ、うどん専門店は珍しくないが、創業当時の札幌は、うどん不毛の地だった。川崎市にある専門店に手ほどきを受けて習得した、コシの強い手打ち麺には自信があったが、「うどんといえば、風邪をひいた時に軟らかく煮込んで食べるものというイメージが強くてね。閑古鳥に鳴かれっぱなしでした」と店主の広瀬直治さん(74)は語る。

     窮地を救ったのが、開店以来40年間も看板メニューとして愛されている「鍋焼きうどん」だ。広瀬さんの遊び心から定番の土鍋ではなく、大きな急須型の陶器で提供したところ、これが話題に。客足の増加とともに、うどんの味も認められ、広まっていったという。

     さて、注文してから約10分。グツグツと音を立てながら、お目当ての鍋焼きうどんが運ばれてきた。白い湯気に包まれ、斜めに切った長ネギや厚焼き卵、エビ、紅白のかまぼこ、ホウレン草、シイタケ、鶏肉などが行儀よく並んでいる。

     まずは、ハフハフとつややかなうどんをすする。その日使用する分だけ毎朝手打ちする麺は、注文が入ってから5分ほどゆでて、具と一緒にさらに煮込むという。なえることなく、しなやかなコシがあり、プリッとした弾力と、もちもちの歯応えがたまらない。かつお節と昆布から取ったダシに、薄口醤油しょうゆとみりんを加えて仕上げた、香り豊かなつゆとも相性抜群だ。

     独特の甘味はキャベツが決め手。「うどんを煮込む時、鍋の底にだしで炊いた細切りのキャベツを入れることで、まろやかさが増すんですよ」と広瀬さん。

     また、この鍋焼きうどんに、たっぷりの揚げ玉と生卵をプラスしたコクのある「煮込みうどん」や、大ぶりのエビやホタテ、ワカメなどが入る海鮮風味の「特製鍋焼きうどん」も人気が高い。

     冷たいうどんメニューも各種そろうが、「うちではなぜか夏場でも『鍋焼き』が一番人気。冬になると、ふらりと顔を出すお客さんも多いですね」。

     熱々の鍋焼きうどんで、実感する冬の到来――。自分の町に変わらない風物詩があるのは、幸せなことだ。

     (文・葛西麻衣子 写真・藤倉孝幸)

    【住 所】 札幌市西区琴似3の2 日の出ビル2階 (電)011・611・2830

    【営業時間】 午前11時~午後9時、定休日月曜

    【主なメニュー】 鍋焼きうどん 煮込みうどん各1000円、特製鍋焼きうどん1400円、月見うどん550円、きつねうどん570円、冷やしたぬきうどん680円など

    ※メニュー、価格などは変更されている場合があります。

    2016年10月27日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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