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    自家製たれの焼き鳥 ◎やき鳥 いろ羽(札幌市西区)

    肉のうまみに絡むコク

    • 手前から自家製たれの「れば」、「豚小串」と「鳥精肉」。奥は「手羽先」
      手前から自家製たれの「れば」、「豚小串」と「鳥精肉」。奥は「手羽先」

     路地裏に入り込むと、ノスタルジックな昭和の面影が残るJR琴似駅界隈かいわい。地元で愛される老舗も多いが、最古参として暖簾のれんを掲げるのが「やき鳥 いろ羽」だ。創業は、まだこの辺りが未舗装の砂利道だった1965年(昭和40年)。

     朝一番に道産の丸鶏を仕入れ、部位ごとにさばき、一本ずつ丁寧に串打ちする。店主の長谷川寛さんが、半世紀の間、変わらずに続けてきた日課だ。

     カウンターのガラスケースには「鳥精肉」「とりもつ」「ひな皮」など6種類の串が整然と並ぶ。焼き台の前に立つ長谷川さんは、常連客と談笑しながらも、片時も手を休めない。炭火の加減を見極めながら、クルクルッと、すばやく串を回す手さばきは、まさに熟練の技だ。

     「焼き鳥は火の扱いが勝負。焼き方次第で、いくらでも味が変わっちゃうからね」。コショウは振らず、塩のみで焼き上げるのもこだわりという。

     定番の「鳥精肉」を塩でいただく。皮目はカリッと香ばしく、中はふっくらで、塩加減がまた絶妙。小ぶりの肉が、串からシュッと抜けるのも小気味よい。

     自家製のたれは、修業先の親方から譲り受けた70年物を、ぎ足しながら大切に使っている。「火事になったら、何をおいても、このたれだけは守るよ」とほほ笑む長谷川さん。焼く時は、薄味のたれに串をくぐらせてから、いったん焼き上げ、仕上げに濃いめのたれを付けて、再び香ばしくあぶる。

     「れば」にその自家製たれをたっぷり絡めて味わうと、しっとり、プルンとした肉のうま味に、たれのまろやかなコクが絡み合い、ついついビールが進む。

     串以外で人気なのが、伊達産の若鶏を半身ごと、じっくりと焼き上げる「若とり」。朝の仕込みで塩を振り、開店まで寝かせておくことで、プリッと弾力のある食感に仕上がるという。

     夕方5時、開店とともに常連たちが一人、また一人と暖簾をくぐり、それぞれの指定席に落ち着く。いつもの串をあてに、コップ酒をクイッとあおり、隣り合った顔なじみと静かに言葉を交わす。穏やかなにぎわいに、老舗の風格がにじむ。

     「50年ずっと通ってくれているお客さんもいるよ。お客さんも店も年を取った」

     コップ酒の向こうに“焼き鳥の哲学”が垣間見えた。

    (文・葛西麻衣子 写真・藤倉孝幸)

    【住 所】 札幌市西区琴似1の1コスモレジデンス1階(電)011・621・3750

    【営業時間】 午後5~10時、日曜定休

    【主なメニュー】 手羽先(3個)500円、豚小串、鳥精肉、とりもつ、ひな皮、たん、がつ、はつ、れば(各4本)480円、若とり1800円、コップ酒300円など

    ※メニュー、価格などは変更されている場合があります。

    2016年12月01日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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