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    おまかせコース ◎鮨わたなべ札幌(札幌市中央区)

    道東愛 寿司にこめて

    • 福司酒造の道東限定酒「咲楽」と端正な握り。(前列左から反時計回りで)マグロのづけ、締めたホッケ、イクラ、サメガレイの昆布締め、自慢のコハダ。おまかせコースの一例で、実際には1貫ずつ出す
      福司酒造の道東限定酒「咲楽」と端正な握り。(前列左から反時計回りで)マグロのづけ、締めたホッケ、イクラ、サメガレイの昆布締め、自慢のコハダ。おまかせコースの一例で、実際には1貫ずつ出す

     寿司すしは個性の時代に入った。先月15日、札幌・ススキノに暖簾のれんを掲げた「すしわたなべ札幌」を訪ね、その思いを強くした。

     鮨わたなべの本店は道東の中標津町にある。店主の渡部朋仁さん(45)は同町出身で、東京の有名店で経験を積んだ職人。32歳の時に故郷で独立を果たした。

     地元に戻って感じたのは、「魚の質はいいのに、うまく使われていない」ということ。魚はって終わりではない。漁獲後の処理の仕方など、市場に並ぶまでのちょっとした気遣いや工夫で質や価値はさらに上がる。

     そういう魚を築地で見てきた渡部さんは、道東の漁業者や市場関係者らと関係を築きながら、価値を伝え、魅力を高める努力を続けてきた。その甲斐かいあって、町外、道外にも顧客を持つ人気店となった。

     前置きが長くなったが、「次のステップに」と開店した札幌の店には渡部さん自らが立ち、本店同様に“中標津ずし”でもてなす。

     おまかせコースの最初に出てくるのは、中標津産の牛乳。同町の「牛乳で乾杯条例」にのっとって、一口で飲める量を振る舞うのだ。これが後味すっきりでおいしい。気分はぐっと中標津に近づく。

     まずはつまみから……となるが、わたなべでは握りから始まる。最初の1貫目は「その日一番のネタを挨拶あいさつ代わりにお出ししています」と渡部さん。

     その後、数貫握りを楽しんでから、少量ずつ多彩な、また手の込んだつまみを挟み、締めの握りが6貫前後続くスタイルだ。いずれもできる限り道東産、北海道産の素材をと心を砕く。

     酢飯は道産米「ゆめぴりか」に赤酢を合わせる。米の香りが広がる酢飯との調和を大切に、魚ごとにさばき方、締め方、熟成方法を変え、細かく仕事を施す。

     例えば寿司ネタでは珍しいサメガレイは、塩で余分な水分と脂を抜き、羅臼昆布で締め、その香りをまとわせつつ、本来のうま味を引き出す。イクラはまだ粒が小さく皮が軟らかい“若卵”のみを使う。人肌の酢飯に寄り添う卵の味わいがたまらない。

     渡部さんの思いはお酒にも表れている。道東の地酒「北の勝」や「福司」、さらに道東限定酒に重きを置く。

     地元愛、道東愛という個性が、何とも心地よい一軒である。

    (文・小西由稀 写真・山本顕史)

    【住  所】 札幌市中央区南6条西4丁目、プラザ6・4ビル4階

    (電)090・8636・1369

    【営業時間】 午後5時30分~10時30分(最終入店時間9時)。要予約。不定休。

    【主なメニュー】 ◇おまかせコース1万3000円◇寿司が少ないミニコース1万円◇日本酒グラス500円~

    ※メニュー、価格などは変更されている場合があります。

    2018年03月29日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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