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    謙信攻めあぐんだ山城

    「天と地と」増山城跡(砺波市)

    • 登山口の冠木門をくぐり、城跡探訪へ。ぐるりとめぐって1時間ほどだ
      登山口の冠木門をくぐり、城跡探訪へ。ぐるりとめぐって1時間ほどだ

    久しぶりに増山城跡を訪れ、山歩きを楽しむ人の多さに驚いた。山城が静かなブームと聞いていたが、どうやら本当らしい。車のナンバーを見ると、関東地方から「遠征」している人もいるようだ。

     増山城跡は「越中三大山城」の一つであり、2009年には国指定史跡となっている。上杉謙信が手紙に「増山之事、元来嶮難けんなん之地」と書いた堅固な城で、1560年から76年にかけて3回攻めて落としたとされる。

     なるほど、軍神が攻めあぐんだ城だ。西は蛇行する和田川が天然の堀となり、背後は山々に囲まれている。この地形を見ただけでも、その守りの堅さがうかがえる。

     上杉謙信の半生を扱った歴史小説「天と地と」にも、増山城攻めが出てくる。謙信がまだ長尾景虎と名乗っていたころだ。城攻めを前に、家来からこんな注進がある。

     「さすがに神保の先祖が数代の居城としていただけあって、修理半ばとはいえ、なかなかの要害でござる」(「天と地と」文春文庫より)

    • 一ノ丸からの眺望。蛇行する和田川が天然の堀となっている
      一ノ丸からの眺望。蛇行する和田川が天然の堀となっている

     謙信はこの城を攻めるにあたって、どんな戦略を練ったものだろう。登山口から山道を一ノ丸、二ノ丸とたどっていくうち、城攻めをしている気分になってくる。

     城跡一帯の栴檀野地域は、長尾家にとって因縁の地だ。祖父・能景は一向一揆との戦で芹谷にて討ち死にしたという。一説では父・為景も増山攻めで戦死したとされ、為景敗戦は小説前半の大きなヤマ場だ。

     謙信の采配やいかに……。歴史ロマンにあふれる山城歩きは確かに想像力をかきたてられ、その魅力にはまってしまいそうだ。

    フリーライター  沢田 香織

     

     ★「天と地と」

     海音寺潮五郎著。長尾景虎(上杉謙信)の半生を描く歴史小説。父・為景に疎まれた少年時代を経て長尾家当主となった景虎は天才的な軍略で越後統一を果たす。宿敵・武田信玄との有名な川中島の戦いまでを描く。1960~62年雑誌連載。大河ドラマや映画化もされた。

    2017年07月07日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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