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    砂防ダムよ、ありがとう

    「崩れ」立山カルデラ砂防博物館(立山町)

    • 立山カルデラの自然や砂防事業について紹介する立山カルデラ砂防博物館
      立山カルデラの自然や砂防事業について紹介する立山カルデラ砂防博物館

     「日本三大崩れ」の一つとされる「鳶山とんびやま崩れ」。1858年(安政5年)の飛越地震で立山連峰の大鳶山・小鳶山が崩壊した大災害だ。著者が、工事専用のトロッコ軌道で鳶山崩れに向かったのは1976年のことだった。

     鳶は富士山大沢崩れとも、静岡大谷崩れともまた様子がちがう。憚らずにいうなら、見た一瞬に、これが崩壊というものの本源の姿かな、と動じたほど圧迫感があった。(「崩れ」講談社文庫より)

     現在も砂防工事が続く現場へは、体験学習会に参加して行くことができる。体力に自信のない私が代わりに向かったのが「富山県立山カルデラ砂防博物館」。3D映像や大型ジオラマなどを駆使し、立山カルデラの自然や、砂防事業について紹介している。

     著者も乗ったトロッコに疑似体験乗車できるのが「トロッコツアーへようこそ」。座席が揺れ、画面には車窓からの眺めが映し出される。断崖絶壁にぞっとし、白岩砂防堰堤えんていの威容に土砂との闘いのすさまじさを思う。

     鳶山崩れで立山カルデラを埋め尽くした土砂は現在も膨大な量が残っており、もしも一度に流出したら、富山平野は2メートルの厚さで覆われるという。白岩砂防堰堤を中心とした砂防事業が、私たちの暮らしを守ってくれているのだ。

    • 貯砂量日本一を誇る本宮砂防堰堤
      貯砂量日本一を誇る本宮砂防堰堤

     博物館の帰路、本宮砂防堰堤に立ち寄った。上流からの土砂を調整し、下流を災害から守る砂防施設で、貯砂量500万立方メートルは日本一を誇るという。おりしも雨が降り続いたあとで、常願寺川は濁流が逆巻いている。ありがとう、砂防ダム。がんばれ、砂防ダム。いつしかエールを送っていた。

     ★「崩れ」

     幸田文の随筆。大谷崩れを目にしたことをきっかけに、富士山の大沢崩れや桜島など、自然災害の現場を訪ね歩く。自然の崩壊に自らの老いを重ね、荒廃の山河に寄せる切ない思いがつづられる。1976から77年にかけて雑誌連載。著者の没後、91年に講談社から刊行。

    2017年07月21日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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