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    柳田国男の足跡たどる

    「北国紀行」愛本橋・舟見(黒部市・入善町)

    • 黒部川が峡谷部から平野部へと抜ける位置に架かる愛本橋。茶屋の娘が大蛇に嫁ぐ「お光伝説」が伝わる
      黒部川が峡谷部から平野部へと抜ける位置に架かる愛本橋。茶屋の娘が大蛇に嫁ぐ「お光伝説」が伝わる
    • 旧往来のおもかげがほのかに宿る舟見の町並み
      旧往来のおもかげがほのかに宿る舟見の町並み

     柳田先生、お団子おいしかったですか。愛本橋のたもとでつぶやいてみる。

     「遠野物語」で著名な民俗学者・柳田国男は、東京帝大法科を卒業後、農商務省に入省。農村の実態調査や講演などで各地を訪れている。1909年(明治42年)、公務出張で北陸地方を回った際の日記「北国紀行」では、田植えの風習や民家の屋根の違いなどにも注目しており、興味深い。

     日記によると、黒部の山林を視察した柳田は愛本橋のたもとの茶屋で休み、対岸で売る笹巻き団子を取り寄せている。かつて日本三奇橋のひとつに数えられた愛本橋は、茶屋の娘が大蛇に嫁いだ「お光伝説」ゆかりの地でもある。団子を食べながら、こうした昔話を耳にしたかもしれないと想像をめぐらす。

     愛本橋は参勤交代も通った旧街道に架かる橋で、ここから入善方面に向かうと街道沿いに1本の松がある。以前は両側に松並木が続き、旅人に木陰をもたらしていたという。往時のにぎわいを知る松も1本となり、さみしげだ。

     江戸時代に本陣が置かれた舟見は、豪華な七夕で知られるが、その始まりは参勤交代の藩主の旅情をなぐさめるためとされる。入善町消防団舟見分団前には舟見の本陣の案内板があり、うっそうとした木立に囲まれた広大な屋敷が描かれている。さすが加賀前田藩、こんなに立派な敷地があったのかと周囲を見渡す。

     「舟見も昔しのばるる処なり」と柳田が記した舟見の町。日本民俗学の祖とも仰がれる偉大な学者の足跡をたどりながら、往時のおもかげをしのんだ。

     

     ★「北国紀行」

     柳田国男の紀行文。農商務省の役人として飛騨・北陸などに公務出張した際の日記をそのまま発表したもの。五箇山から城端に入り、滑川、魚津、入善ほかを視察し、風土や暮らしの違いを書き留めている。筑摩書房「柳田國男全集」などに収録。

    2017年10月20日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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