ふるさとへの慕情たっぷり 「マチオモイ帖」共感呼ぶ
コピーライターの1冊がきっかけ 全国300人以上制作
自分の生まれた街や大切な場所を写真や文、イラストでまとめた「マチオモイ
ちゃんと食べてますか。ちゃんと笑顔ができていますか――。花柄の表紙をめくると、瀬戸内の穏やかな海や、緑鮮やかなスイカ畑の写真、母の作ったしょうゆ飯や祖母が歌う島唄の思い出とともに、家族を思う優しい言葉が並ぶ。村上さんが生まれ育った尾道市因島
実家はスイカやミカンなどを栽培する農家。村上さんは18歳で大阪へ出て、32歳でデザイン会社を起業した。両親は都会で働く娘を応援し、野菜や庭に咲いた花を宅配便で送ってくれた。だが、実家に帰るのは、盆と正月、収穫期の手伝いの年数回。忙しくて連絡が滞ることもあった。
故郷を離れて25年。昨年2月、島で景観保存活動に取り組む知人から「島のことを書いてみないか」と頼まれた。コピーライターとして使っているしゃれた言葉や写真が、島の人にどう伝わるのか。普段の仕事よりも悩んだ。しかし、構想を練っている最中に震災が起き、気持ちが決まった。
「今ある家族の姿や島の姿を記憶に刻もう」。4月にしげい帖を完成させ、自費で1000部印刷して島で配ると、すぐになくなった。冊子を手に島を巡る人も現れた。
しげい帖の話を聞き、「自分もやりたい」というクリエイターも登場。村上さんは、それぞれが大切な街をテーマにしていることから「マチオモイ帖」と名付け、さらに関西のクリエイターたちに呼びかけると、3週間で30冊余りもできあがった。6月に大阪市内で作品展を開くと反響を呼び、東京での展示会が決定。200点を目標に募集したところ、全国から約330点もの作品が集まった。
大阪市北区の天神橋筋商店街に生まれ育った泉屋宏樹さん(37)は商店街や天神祭の写真を使って「天神橋帖」を作った。ボランティアで訪れた福島県いわき市の子どもの写真と被災地への思いをつづった「いわき帖」を作成したアートディレクター東学さん(48)は「被災地の子どもを応援したい」と願いを込めた。震災で大きな被害を受けた宮城県南三陸町出身者が、被災の様子や町の人の思いを伝えた「南三陸帖」も寄せられた。
村上さんは「東日本大震災で古里や家族を見つめ直そうと感じた人も多いのでは。街を思う作り手の優しい気持ちが、見た人にも伝わっていってほしい」と話している。それぞれのマチオモイ帖は非売品。問い合わせはメビック扇町(06・6316・8780)へ。
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