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障害者の「就職支援」「工賃上げ」に成功報酬

事業者の「励み」期待 入所者選別の恐れも


就職を目指して、使い切りカメラの選別作業を行う森さん(「加古川はぐるまの家」で)

 障害者の就労を支援する事業者に支払われる訓練給付に、就職者数が多かったり、工賃が目標を越えたりした場合の成功報酬が上乗せされることになった。評価する声がある一方、「障害者が選別される」との懸念もある。(小山孝)

 「今年中に就職したい」。兵庫県加古川市の知的障害者授産施設「加古川はぐるまの家」で働く森将樹さん(26)が、汗をぬぐいながら語った。森さんの仕事は、回収された使い切りカメラから電池を取り除いて、再利用可能かどうかを調べること。昨年6月から施設に通っているが、課題だった作業スピードや「自信のなさ」は解消されつつあり、施設では年内に就職は可能と見ている。

 1980年に開設した施設は定員50人。就労重視の原則を掲げており、より実践的な経験を積んでもらおうと、企業から受注した組み立て作業などを行う。納期厳守で、品質管理も徹底する。就職する人を送る激励会は「後続の励みになれば」と盛大だ。

 平均工賃は月3万円。約80人が施設を巣立って就職した。高井敏子施設長は「これまでは就職させてもさせなくても評価は同じ。就職の支援や1円でも多く工賃を払うことがどんなに大変なことか」と話し、成功報酬の導入に理解を示す。

 福祉の支援を受けながら障害者が働く場には授産施設や福祉工場などがある。これが、10月から、障害者の希望や能力に合わせ、「就労移行支援事業」と「就労継続支援事業」に再編される(表参照)。4月に施行される障害者自立支援法に基づく見直しで、成功報酬の導入も盛り込まれた。

 授産施設の場合、働く場を提供するだけでなく、一般企業に就職するための訓練を行うという役割も持つ。しかし、「就職したい」という障害者の思いに、必ずしも応じ切れていない。授産施設などで作る全国社会就労センター協議会の調査では、知的、身体障害者の4割、精神障害者の6割が「施設を出て働きたい」と考えているのに対し、実際に施設を出て就職するのは年間1%程度という。

 また、知的障害者授産施設の平均工賃は月額約1万2000円。施設で働くだけでは1人暮らしなどは難しい。

 背景には、様々な能力の障害者が混在して能率が上がらない現状や、施設職員の就労に関する知識の乏しさが指摘される。ある施設関係者は「能力のある障害者が就職すると効率が下がるので、引き留めている施設もある」と明かす。

 成功報酬は、事業者が本来の役割を果たす動機付けとして期待される一方で、懸念もある。日本障害者協議会の藤井克徳常務理事は「そもそも施設の数が足りないので、事業者が成果の出そうな人を選別する逆選択が起きるのでは」と危ぶむ。「施設だけで、就職できる力を付けさせるのは難しい。能力のある人を探さざるを得なくなる」(関東地方の授産施設施設長)との声もある。

 新制度への移行は段階的に行われ、2011年度末に完了する。国は同年度までに、就職する人を現状の年間2000人から8000人に引き上げる目標を掲げている。全国社会就労センター協議会の星野泰啓会長は「すべてを施設で行うことは難しい。教育や労働行政と連携し、地域で支える仕組み作りが必要だ」と話している。

 ◎障害者自立支援法の内容については、厚生労働省の障害者福祉のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/)。

障害者自立支援法
 障害者の医療・福祉に関する総合的な法律。身体、知的、精神障害に分かれていた制度を一元化し、33種類の施設体系を「療養介護」「生活介護」「就労移行支援」など6事業に再編する。利用者の自己負担は原則1割。
障害者が働く場の新しい分類
就労移行支援就労継続支援
雇用型非雇用型
主な対象者と支援内容企業への就職や在宅就労を希望する人が対象。個別に2年以内の利用期間を決め、生産活動の指導や職探し、就職後の支援を実施就職していないが、雇用契約に基づく就労が可能とみられる人が対象。雇用契約を結んで働く場を提供就職していないが、就労を通じて生産活動にかかわる知識、能力の向上が期待される人が対象。雇用契約は結ばずに、働く場を提供
運営の特色就職後、同一企業で半年以上働く人が定員の2割を超えた場合、翌年の報酬を加算(予定)生産性向上のため、一定範囲内で障害者以外の雇用も可。労働基準法、最低賃金法を適用平均工賃が最低賃金の3分の1に達し、さらに目標水準額を超えた場合、報酬を加算。工賃が著しく低い場合、都道府県が指導
2006年2月27日  読売新聞)
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