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政権交代の成果はあった

政治部 穴井雄治

衆院予算委員会で答弁する野田首相(2011年11月10日撮影)

 劇的だった民主党政権の誕生から2年が過ぎ、労働組合幹部をはじめ、民主党を応援していた人たちから「正直なところ、政権交代して良かったと思う?」と聞かれることが増えた。

 声をひそめて話をするあたり、正面から「政権交代は失敗だった」とは言いにくいのだろう。いつも答えに窮していたのだが、先日の国会論戦を聞いてヒントを得たような気がした。

 政権交代の成果は、どんなときも「政権交代」と言えば済んだ時代が終わったことではないか。民主党は2008年のリーマン・ショックの際に「政権交代が最大の景気対策だ」と訴え、具体策は子ども手当導入だった。今、そんなことを言えば、有権者は「もっとまじめに考えろ」と怒るか笑うかに違いない。

 11月10日の衆院予算委員会。衆院の選挙制度を巡る細川政権の与党議員同士の論戦は、久々に見応えがあった。

 公明党の東順治副代表は、小選挙区比例代表並立制の「光と影」を論じる必要性を指摘し、05年の郵政選挙と09年の政権交代選挙についてこう説いた。

 「過度な政権交代が自己目的化し、過度な消耗戦が始まった。ちょっと立ち止まってもう一回見直さないといけないと、この二つの選挙は教えている」

 東氏はさらに「世界の潮流は比例代表制だ」と訴え、持論である小選挙区比例代表連用制の導入を主張した。

 これに対し、首相は現行制度を「政権交代が起こりうる選挙で民意を集約しようという趣旨で始まった。今も基本的には大事な理念ではないか」と擁護する一方、「『小さな政治』に陥っているのではないかという指摘もあり、もう少し冷静ないろんな議論があってもいい」とも語った。

 「小さな政治」というのは、小選挙区制では有権者の過半数の支持を得ようとするため、世論受けしない政策を避けがちになるということだろう。政治家が小粒になったというわけだ。

 公明党が連用制を主張する背景には、民主党が衆院比例定数の80削減を政権公約に掲げていることへの危機感がある。

 現行の並立制は、比例選の議席を決める際、各党の得票数を1から順に整数で割って商の大きい順に配分する。これに対し、得票数を1から順に割るのではなく、「各党の小選挙区選の獲得議席数+1」から順に割るのが連用制だ。

 この結果、小選挙区を含めた全議席数の配分は、比例選での各党の得票割合に近付く。連用制の本質は比例選だ。

 09年衆院選の得票結果から、比例定数を80削減した場合を試算すると、小選挙区選も含めた主要政党の議席数は下記のようになる。かっこ内は480議席の現行制度との比較だ。

 民主275(マイナス33)、自民94(同25)、公明10(同11)、共産4(同5)、社民3(同4)、みんな4(同1)、国民新3(増減なし)

 民主党は衆院での法案再可決に必要な3分の2以上の議席を獲得する一方、比例選への依存度が高い公明、共産、社民各党は軒並み半減する。

 一方、比例定数を80削減すると同時に、連用制を導入した場合はこうなる。

 民主224(マイナス84)、自民94(同25)、公明32(プラス11)、共産18(同9)、社民11(同4)、みんな9(同4)、国民新4(同1)

 民主党が激減するのとは対照的に、公明党以下の中小政党は議席が増える。与野党の一部に「連用制導入なら公明党も定数削減に賛成できる」という見方があるが、背景にはこんな計算がある。

 並立制のまま定数を大きく削減すれば、衆院での法案再可決に必要な議席数のハードルも下がり、第1党が大胆な政策決定を行う環境に近付くだろう。連用制なら中小政党の発言力が増し、協調的な政権運営となると考えられる。

 ただ、これは一般論に過ぎず、こうした改革がどのような政治をもたらすかを直ちに予測するのは難しい。並立制で初の衆院選が行われたのは1996年だが、2005年の郵政選挙まで、議席数が劇的に変動する小選挙区制の効果が明確に表れることはなかった。

 さらに、衆院の選挙制度だけ考えても、政治の姿は見えてこない。衆院選でどれほど大勝しても、参院で過半数割れした「ねじれ国会」になれば何も決められないのだ。

 参院の在り方が政権に与える影響がこれほど大きいという近年の経験は、細川政権の政治改革の盲点だったとも言えるだろう。現在も、衆院の選挙制度改革は衆院で、参院の選挙制度改革は参院で個別に議論され、全体像は置き去りになっている。

 かつて目標だった「政権交代可能な政治」は実現したが、政党の未熟さや議員の質の低下という新たな課題も見えてきた。とりわけ2大政党が対立する中でのねじれ国会は想像以上に深刻で、目の前にあるのは「何も決められない政治」だ。

 政権交代から2年。細川政権から17年。衆参の選挙制度を考えるにあたって、どんな政治を目指すのか改めて考えるときに来ている。

2011年11月21日  読売新聞)

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