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自衛隊にいつまでツケを回すのか

研究員の顔ぶれ

調査研究本部主任研究員  浜田 真彰

南スーダンでのPKOに従事するため、成田空港を出発する陸上自衛隊員ら(2012年1月11日撮影)

 1992年9月、日本の自衛隊が、国連平和維持活動(PKO)に初めて参加し、カンボジアでの停戦監視や道路、橋などの整備・補修などに従事してから、今年で満20年を迎える。

 自衛隊は、ゴラン高原、東ティモール、ハイチなど、各地で国際貢献の実績を積み重ねてきた。

 自衛隊派遣の根拠となるPKO協力法は、92年6月、社会党などの牛歩戦術による大きな混乱の中で成立した。当時、社会党は、「戦争か平和か」「息子を戦場へ送るな」などの的はずれなスローガンを叫んで同法に反対した。徹夜国会の末に派遣は決まったものの、国際常識とはかけ離れた武器使用基準のように、派遣にあたっての根本的な問題については、十分議論されないままに終わり、今なお放置されている。そのツケを回されているのが自衛隊だ。

 「読売クオータリー第20号」(1月31日発刊)に掲載した弊社の勝股秀通・主任研究員の解説によると、カンボジア派遣から半年後、国連選挙監視ボランティアと文民警察官が、武装ゲリラに襲撃されて殺される事件が発生した。PKO協力法には、民間人らの警護は武器の使用が前提であり、憲法で禁じた武力の行使に発展するおそれがあるとして、「邦人警護」の任務が盛り込まれなかった。しかし政府は、防衛庁に、41人の日本人選挙監視員の警護手段を考えるようひそかに要請した。自衛隊は軍隊ではなく、特別国家公務員の集団であるため、武器使用は警察官職務執行法で規定され、隊員個人の「正当防衛」と「緊急避難」の場合にしか認められていない。当時、防衛庁と陸上幕僚監部が出した答えは、隊員が〈人間の盾〉となり、自らの命を犠牲にして民間人を守るという作戦だったという。

 現行法では「任務遂行のための武器使用」については、一切認められておらず、仮に将来、任務遂行のための武器使用が制限付きながら認められたとしても、PKO協力法に、救出や警護の任務規定がないため「救出や警護での武器使用は、常に違法行為となる」という。

 高井晉・防衛法学会理事長は、同誌への寄稿で、国連が作成したPKOの標準活動手順(SOP)は、「自衛のためと任務遂行のための武力行使を認めている。軍事要員に認められている自衛は、国家の自衛権の行使ではなく『活動における自衛』である」と指摘。「国連PKOは、平和維持機能を実践する国連の活動であり、日本が直面する国際紛争ではない。したがって、国連SOPに従った自衛隊員の武力行使は、憲法第9条に規定する武力行使とは別のものと認識する必要があろう」と強調している。

 民主党政権は2011年12月、アフリカ・南スーダンで実施されるPKOに、陸上自衛隊の施設部隊の派遣を決めたが、活動の実態をふまえた議論を尽くしたとは言い難い。

 これまで派遣隊員に死傷者が出なかったのは、まさに「奇跡」(勝股氏)だ。自衛隊を軍隊と位置づけ、国際協力のあり方を憲法に明記することや、自衛隊員の安全を守り、任務を円滑に遂行できるようにするための法整備など、20年間放置してきた問題に政治家、そして国民が正面から向き合い、結論を出す時期にきている。

 PKOの実像を通してその問題点を整理した高井氏らの論文など、「PKO20年」を特集した「読売クオータリー第20号」の購入はこちらから

2012年2月8日  読売新聞)

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