欧州経済危機とマラソン協議
ブリュッセル支局 工藤武人
「危機対策は短距離走ではなく、マラソンだ」
欧州財政・金融危機を終わらせるための方策を練る欧州連合(EU)のファンロンパイ欧州理事会常任議長(EU大統領)や、EU最大の経済大国ドイツのメルケル首相が、このところ、頻繁に使うフレーズだ。
2009年10月に、ギリシャが巨額の財政赤字を抱えていることが発覚して始まった危機は、アイルランドやポルトガルに拡大しながら2年以上が過ぎた。イタリアやスペインといったユーロ圏の中核にも信用不安が広がり、統一通貨ユーロの信頼回復には相当な時間が必要だろう。
それでも、通常年4回の首脳会議に、ユーロ圏首脳だけのものも含めば昨年1年間だけで10回も付き合って見ていると、危機の長期化は、首脳たちが、喫緊の課題を先送りにし続けてきたためではないかと考えたくもなる。
直近の例を挙げれば、1月30日に臨時開催されたEU首脳会議だ。財政危機に陥った国に対するユーロ圏の支援能力強化を求める声が、国際通貨基金(IMF)や米国からも上がっていたにもかかわらず、首脳会議では、追加負担を嫌うドイツに配慮し、検討することさえも、3月の次回首脳会議に先延ばしした。翌日の米紙ニューヨーク・タイムズは社説で「欧州首脳は最も緊急性が高い任務を前進させられなかった」と酷評した。
一方で、財政規律を強化するためユーロ圏諸国に財政均衡を義務づける新条約案は、英国とチェコを除くEU加盟25か国が昨年12月の首脳会議での基本合意から、わずか2か月足らずで正式合意した。条約制定は、規律を最優先するメルケル独首相が「盟友」のサルコジ仏大統領と組んで強く求めていたものだ。
「かかった時間で言えば、(新条約は)まさに代表作だ」
首脳会議終了直後の記者会見で、メルケル独首相が、満足そうに話しているのを見ていて、「その気になれば、すぐにできるじゃないか」との思いを強くした。
新条約制定の意図について、EU高官は「フランスは4月に大統領選がある。ドイツでも来年秋に総選挙がある。新条約は両首脳にとって成果をアピールする格好の材料になる」と解説する。新条約の署名は3月、発効は来年1月の予定で、独仏両国の政治日程に符合する。
マラソンだからといって、ゆっくり走っていいわけではない。
EU諸国の首脳、とりわけ、危機収束のカギを握るメルケル独首相には全力疾走をお願いしたい。
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