現在位置は です

本文です

TBSの「水戸黄門」が終了すると、テレビ時代劇はどうなるの?

日本の伝統的な映像文化は危機的状況

「水戸黄門」の収録を終え、記念撮影する5代目黄門役の里見浩太朗さん(前列中央)ら

 民放で唯一の連続時代劇だった「水戸黄門」は、12月19日に放送される第43部の最終回で42年の歴史に幕を閉じます。

 最盛期には30%台の平均視聴率を稼いだ人気番組も、時代劇の退潮とともに長期低落傾向をたどり、最近は10%前後に落ち込んでいました。TBSは「今も多くのファンがいるのは承知しているが、時代の流れには逆らえない。惜しまれながら終わることにした」と、打ち切りの理由を説明しています。

 時代劇の退潮ムードは、民放各局で若者向けのドラマやバラエティー番組が増えた1990年代から加速しました。各局は次々に撤退し、「暴れん坊将軍」などの時代劇を看板にしてきたテレビ朝日も見切りをつけました。

 その理由としては、広告主の多くが若い世代をターゲットとし、中高年層に支持される時代劇を敬遠しがちなことが大きいのです。単純明快な勧善懲悪型時代劇のマンネリ化、新しい時代劇スターや若い作り手がなかなか育たない事情も挙げられます。昨年には、「木枯し紋次郎」など上質の時代劇を作ってきた京都の制作会社「映像京都」が解散し、時代劇関係者に衝撃を与えました。

 NHKは、歴史を描く大河ドラマと娯楽性豊かな時代劇を二本柱としてきました。今春の番組改編では、土曜の時代劇を終了させ、BSプレミアムで日曜に時代劇枠を新設しました。第1作として放送されたのは、司馬遼太郎原作の「新選組血風録」でした。

 「水戸黄門」が終了すると、地上波テレビの連続時代劇はNHKの大河ドラマだけになるところでしたが、テレビ東京は来年1月から、青山倫子主演の「逃亡者(のがれもの)おりん」の第2シリーズを始めると発表しました。2006年10月から半年間放送された連続時代劇の続編です。初回は2時間のスペシャルで、以後は深夜に放送されます。

 毎年1月2日には長時間の時代劇を放送してきた同局の島田昌幸社長は11月の定例記者会見で「京都の制作スタッフを残すためにも、何とか頑張って時代劇を作り続けたい」と語りました。

 民放では、フジテレビの「鬼平犯科帳」シリーズをはじめ、単発の時代劇は年に何本か放送されています。今年(2011年)2月、テレビ朝日で放送された藤原竜也主演の「遺恨あり 明治十三年 最後の仇討」は、放送文化基金賞本賞に輝きました。

 「水戸黄門」の終了記者会見で、5代目黄門役の里見浩太朗さんは「時代劇で育った者として、単発でもいいから、声をかけられれば喜んでやらしていただく。どこの局でもいい。そう思っている役者はまだまだいるはずだ」と発言したのが印象に残りました。

 時代劇には大道具や小道具から衣装、かつら、殺陣まで特殊な技能を受け継いだ専門的なスタッフが欠かせません。定期的な仕事がなくなったら、民放の時代劇作りを担ってきた京都のスタッフは散り散りになってしまう恐れがあります。

 テレビ時代劇の衰退は、映画を含め日本の伝統的な映像文化の危機的状況を意味します。テレビ史を彩ってきた時代劇がこのまま絶えてしまっていいのか、民放各局に問いたい気がします。
(編集委員 鈴木嘉一)

2011年12月5日  読売新聞)

質問はこちら

 ピックアップ

トップ


現在位置は です


おすすめPR