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新設される「原子力規制委員会」の課題は?

主に独立性、人材、予算の確保にあります。

壊れた壁や天井の撤去が進む福島第一原子力発電所の4号機。5月26日に原子炉建屋内部が報道陣に初公開された

 第一に、独立性です。原子力規制委員会は、国家行政組織法3条に規定する組織で、環境省の外局として置かれます。

 公害等調整委員会、公安審査委員会、中央労働委員会、運輸安全委員会といった「3条委員会」の仲間です。3条委員会は、原子力安全委員会などのように省府が設置した審議会などと違い、予算や人事面で省府から独立しています。したがって、ほかの省府からの影響を受けにくく、行政機関としての独立性が強いとされています。

 ただ、これはあくまでも組織としての独立性が形式的に担保されているに過ぎません。委員会は委員長と委員から構成されます。この委員長と委員の独立性が一番の問題になります。原子力安全に関する有識者の中から、原子力を推進する官庁や原子力事業者、原子力メーカーなど機関・組織から十分独立していたことが認められた人物を選ばなければなりません。選考は、国会等の公の場で適性審査を行うなど、過程に透明性を持たせる必要があります。このようにして委員長、委員を選ばなければ、委員会の実質的な独立性は望めないでしょう。

福島第一原発4号機を視察する細野原発相ら一行(防護服の一団、5月26日に本社ヘリから撮影)

 委員会の事務局は原子力規制庁が担います。「実動部隊」として事務局業務に当たるのは、これまで原子力の安全行政を担ってきた経産省原子力安全・保安院や内閣府原子力安全委員会事務局、文科省などの職員が中心になりそうです。慣例通りに本省との人事交流が残されれば、原子力の規制側と推進側の職員が混在する可能性が高くなります。この点に関し、規制庁勤務の職員については出身省府に復帰させない「ノーリターン・ルール」が採用されるということです。ただ、気になることがあります。当初の5年間に限り、やむを得ない場合には例外的に復帰を認めるという点です。官僚がよく使う手法ですが、例外規定を原則規定として運用する、ということが心配されます。これではルールが形骸化してしまうのです。注意しなければなりません。

 第二の課題は、独立性にも密接にかかわる人材の確保と育成です。委員会の手足となる原子力規制庁には本来、原子力の推進側から独立し、なおかつ安全管理に知悉(ちしつ)した人材が必要です。このような人材は、当面は原子力の研究機関や大学の研究者、技術者に頼らざるを得ません。しかし、原子力安全という狭い分野の人材は限られており、短期的に充実した人材の確保は難しいことになりそうです。
中長期的にみても人材の確保と育成は簡単にはいきそうもありません。長らく続いた原子力への逆風もあり、大学の原子力関係学科への進学希望者は減り、規制に携わる人材の育成にも悪影響を与えています。さらに、福島第一原発事故によって、原子力を全否定するような社会風潮も加わり、こうした状況に拍車をかけています。ある大学教授は「社会が否定するような分野に学生が興味を示すことはないでしょう」と言っています。

 原子力を否定するだけでは何も生まれません。原子力安全の研究や規制は、国内のみならず海外の原子力の安全にも寄与できる幅広く、有意義な分野であることを訴えるなど、国や関係機関が努力を積み重ねていかないと、原子力安全の分野に優秀な若い人材は集まらなくなってしまいます。

 第三に、十分な予算の確保です。安全規制の専門家の間から「事故や不祥事がないと安全規制に予算が回ってこない」という声をよく聞きました。しかし、私たちは福島第一原発事故を経験しました。もはやそうしたことはないと信じたいものです。

 日本がこの先、原子力を電源として維持していくにしても、原発の縮小もしくは「脱原発」に政策を変更するにしても、発電、廃炉、廃棄物処分などの安全規制は当然、必要となります。したがって、原子力を安全に扱っていくのには、安全に関わる予算が、継続的に、必要かつ十分に措置されなければなりません。そうするのは政治、行政の重要な役割です。

 福島第一原発事故で安全規制当局の当事者意識のなさ、情報公開の不徹底などの問題が数多く浮かび上がりました。これから一元的に原子力安全規制を担う原子力規制委員会には解決しなければならない課題が山積しています。
(調査研究本部主任研究員 三島勇)

2012年6月22日  読売新聞)

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