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「脱原発」宣言など、菅首相の決めた方針に、なぜ閣僚は従わないの?

憲法が「行政権は、内閣に属する」(第65条)としているため

閣議に臨む菅内閣の閣僚(2011年8月9日撮影)

 7月13日に菅首相が記者会見で「原発に依存しない社会を目指す」との方針を示したのが、事の発端でした。

 首相の発言ですから、記者も、その報道を受け止めた国民も、これは当然、政府の方針と思います。

 ところが、そうでなかったことは、2日後、菅首相自身が国会答弁で、「私の考えで述べました」と、要するに、政府の方針でなかったことを認めたことで最終的にはっきりしました。

 政府の方針であれば、閣議決定があるのが普通です。閣議決定をするには、その前に関係省庁、その代表である閣僚の間でなんらかの検討、討議が行われますが、一切なかったので、記者会見翌日の14日、枝野官房長官が「(脱原発方針は)政府の方針ではありません」と明言せざるを得なかったわけです。

 憲法第65条では、行政を行う権限は、「内閣」に属しています。

 首相(内閣総理大臣)は内閣の代表ではあっても、内閣そのものではありません。ですから、首相が内閣を代表して政府方針を発表するには、「私の考え」であってはならず、それについて閣僚の了承をとりつけ、内閣の決定(閣議決定)とした上で発表しなければ、何ら、行政権限の行使とは言えないというのが、政府の従来の公式見解です。

 「脱原発」の理想は、それが可能かどうか、それに踏み出すか否か、国内、国際の状況を踏まえて総合判断する必要があります。閣僚間の調整、認識の一致は不可欠です。それをサボって、菅首相が先見の明などと称し、いいかっこをするために突出したのなら、閣僚たちが従わないのも仕方がないでしょう。

 菅首相に関して不思議なことは、唐突な「脱原発」宣言の後も、いっこうに、「私の考え」を閣議に諮る努力をしなかったこと。東日本大震災からの復興のための懸案であった「復興基本方針」(7月29日決定)ですら、政府決定と言いながら、閣議決定を行わず、中途半端に終わらせたことです。

 菅首相のこの奇妙な対処方法を見た政治学者は、「おひとりさま内閣」(御厨貴・東大教授)とニックネームをつけました。複数であるべき内閣が「おひとりさま」ということ自体、形容矛盾ですから、内閣が機能していないことを皮肉ったものと思われます。

 あるいは菅首相は、あの6月2日「退陣表明」とみなされた時以来、憲法上の内閣の首長としての役割を放棄してしまったのかもしれません。

 そうであれば、菅首相は、首相の肩書を利用して私的発言をし続けた異例の政治家として歴史に名前が残るかもしれません。
(調査研究本部主任研究員 鬼頭誠)

2011年8月10日  読売新聞)

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