日露の「共同経済活動」は、領土問題解決の突破口になる?
ロシア大統領選が3月4日に迫った。プーチン首相の返り咲きが確実視される中、北方領土交渉が進展するのではと期待する声が聞かれる。
1956年の日ソ共同宣言を有効と認めたプーチン氏の再登場に望みを託しているのだ。しかも「共同経済活動」を自ら提案するなど、日本側は解決を急いでいる感さえある。
しかし、プーチン氏に期待するのも、共同経済活動を突破口と見なすのも、誤りと知るべきだ。
プーチン氏は立場の後退が著しい。2000年の訪日時などに、2島返還を容認したのは確かだが、05年9月「4島の主権はロシアにある。国際法で認められた第2次大戦の結果だ」と言い切って以来、一度も譲歩していない。10年11月のメドベージェフ大統領による国後島訪問も、プーチン氏は少なくとも承認していたとの見方がもっぱらだ。
新たな焦点となったのが、北方領土における水産加工、漁業、地熱エネルギー、観光などの分野での協力、つまり日露の共同経済活動だ。一昨年11月、横浜でのAPEC首脳会議でメドベージェフ大統領が提案したもので、ラブロフ外相が繰り返し「ロシアの法的な枠組みの中で行う」と言明している点からみて、その意図は明らかに「北方領土は法的にロシア領」と日本に認めさせることにある。
ところが、前原元外相は、昨年2月の訪露で、「日本の主権を侵さない範囲で」との条件付きで、自分から提案したことを明らかにした。玄葉外相も今年(2012年)1月、北方領土の海上視察の際、共同経済活動に言及した。
特に前原氏の場合、4島に対する立場さえ害されないのなら、同活動が領土問題を動かす突破口になると錯覚しているようなのだ。
だが、同活動はもともとソ連・ロシアが1991年以来何度も提案している古証文。実際、98年には「共同経済活動委員会」が置かれた経緯がある。同委員会の日本側議長を務めた丹波実元駐露大使は、何も解決できなかったことを示唆した上、「ロシア側が自らの管轄権を前提としている」以上、「日本側は絶対この提案に乗ってはならない」と述べる。
また袴田茂樹・青山学院大学教授は、背景には「平均年齢が70歳を超える元住民」を前に、「日本外務省の官僚がタテマエやメンツ」にこだわり、共同経済活動や経済交流を拒否し続けるのは「硬直した役人の発想」という外務省批判があるとし、「国家主権に対する基本的な観点から、またロシア研究者としてロシア側の意図を熟知する者として、ロシアが提案する共同経済活動には安易に乗るべきではない」と断言する。
けだし高齢住民や地域経済をバネに日本政府と国民を離反させるのは、おなじみの世論工作。相手の出方が変わらない限り「領土問題は解決しない」と覚悟する必要がある。
(調査研究本部主任研究員 布施裕之)
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