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会話を通じ靴を「再生」

中川一康さん(ユニオン ワークス代表)

「お客さんと話している時が一番楽しい。お互いに靴への愛情が大きいから、気が合うんですね」(東京・銀座で)=高橋美帆撮影

 イギリス製の靴やカバン、アンティーク家具が品良く並ぶ落ち着いた空間。丁寧で温かな接客は、ホテルのコンシェルジュを思わせる。

 靴修理店「UNION WORKS(ユニオン ワークス)」は、業界のイメージを一新させた存在として注目されている。

 代表の中川一康さん(46)は週2回、東京・銀座の店に立つ。都内などに4店舗、川崎市内に修理工場があり、経営者として多忙を極める中、自らも工具を握る。

 店内には、靴底などの様々な部材が、見えるように置いてある。多くはイギリスで買い付けてきたものだ。それらを見せながら、顧客と会話して修理内容を決める。「仕上がり、価格、納期。すべてで満足してもらいたい。医療の世界に例えれば『インフォームド・コンセント』の徹底です」

 大学卒業後、靴修理工場で働きながらノウハウを身につけ、独立したのが18年前。「修理」を「ファッションの再生」というプライドに満ちた世界へと高めたかったという。

 当時、国内で手に入らない部材を一から手作りするなど、こだわった仕事ぶりが評判を呼び、徐々に事業を広げた。イギリス製の靴やカバンなどの販売も手がける。昨春、念願だった銀座に店を出した。

 計22人の職人を従える。「厳しい選抜をくぐり抜けた精鋭。20〜30代と若くてやる気にあふれています」と胸を張る。修理の仕事は10分で終わるものもあれば、3週間かかるものもあり、1か月に5000足ぐらい扱う。検品時には厳しい言葉も飛ぶ。「自分が客だったら、この仕上がりに満足できるのかと問います」

 父に買ってもらった大事な靴、初任給で手に入れたあこがれの靴――。顧客に接しながら、靴には一足一足に込められた物語があると、つくづく思う。お客さんの喜んだ顔、驚いた表情に至福を感じる。「お代はいりません。なんて思わず言いそうになります」(赤池泰斗)

◇自宅 観葉植物と日なたばっこ

 観葉植物にはまっている。モンステラ、リュウビンタイ、ビカクシダ……。書斎やリビングなどに、20鉢はある=写真=。「植物園みたいですよ」と笑う。

 2年前に育て始めた当初は、ゲーム感覚で世話をしていたという。そのうちに、もの言わぬ植物たちと一緒にボーッと日差しを浴びているのが、なんとも心地よいことに気付いた。「店に立った時などは、しゃべり通しですから、その分、癒やされているのかも」

 住んでいたのがマンションの高層階ということもあって、東日本大震災では鉢が割れるなどメチャメチャになった。枯れてしまったものもあるが、復活したものもある。「新しい芽が出る度、活力をもらっています」

靴を直す際に使う工具の数々。簡単な修理なら工場でなく店内で行うことも
愛車の英国製バイク。店舗のディスプレーにも使われている

 
【月曜】
10:00 川崎市内の修理工場にある事務所に出社。パソコンのメールをチェック
11:00 税務処理などを行う
14:00 東京・銀座の店舗へ。接客や修理をする

【火曜】
11:00 東京・青山の店舗へ。店内を小規模改装するのに伴い、アンティーク家具店を訪ねる
13:00 靴の販売事業で、輸入代理店の担当者と打ち合わせ

【水曜】
休日  子ども2人を連れて映画を見に行く

【木曜】
14:00 銀座の店舗で接客、修理
16:00 店の近所で遅い昼食

【金曜】
11:00 東京・渋谷の店舗、川崎市内の店舗へ。接客や品物の陳列状況などをチェック
15:00 顧問弁護士と面会し、経営について打ち合わせ

【土曜】
休日  伊豆、箱根へバイクツーリング

【日曜】
10:00 靴の修理
13:00 川崎市内の店舗に飾ってあるイギリス製のバイクを修理に出す

なかがわ・ひろやす
 1965年、東京都生まれ。大学卒業後、アパレルの企画製作会社に就職。靴修理会社へ転職し、2年間働いた後の94年に独立。96年に東京・渋谷に「UNION WORKS」1号店。昨年春に4店目となる銀座店を出店。
2012年2月21日  読売新聞)

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