1999年5月2日(日) 読売新聞日曜版7面
文部大臣 有馬朗人さん 楽しんで学校へ行こう ◆ 自然に親しむ機会を
みなさんは、今の文部大臣はだれで、どんな人か知っていますか。有馬朗人さんです。
有名な物理学者で、東京大学の学長や日本のこれからの教育について考える中央教育審議会の会長も務めました。
そんな有馬文部大臣に会いました。有馬さんは自分の子供時代のことから、いじめの問題、理科教育などについて、私たちの質問にてきぱきと答えてくれました。
有馬朗人さん■子供時代
小学五年のころまではとにかく毎日よく遊びましたね。真空管ラジオも作りました。学校で一生懸命(けんめい)勉強し、家では書き取りぐらいしかやりませんでした。小さいころの病気で足を引きずっていた私に、足の速さを見いだしてくれた先生がいました。毎日猛(もう)練習をし、四百メートルの選手になり、静岡県の西の地方の大会で二位に入りました。
■物理学者への夢
中学生になって、アインシュタインの本などに影響されて物理学者になりたいと考えるようになりました。もっとも小学の四、五年くらいから科学者になりたいと考えていましたが。当時はエジソンに興味がありました。
■理科教育 私は六年ぐらい前から、理科の楽しさを知ってほしいと思い、実験教室などを開いています。小、中学生のうちは理科に興味がある子が多いのに、高校生になると苦手な人が増えるのは高校で実験をする機会が減るからだと思います。理科好きにするには実験のおもしろさをもっと教えるべきだと思います。
■いじめ
いじめを苦にして自殺する人がいますが、昔はそんなことはありませんでした。私は二回転校しました。いじめられたこともありましたが、きぜんとした態度で向かいました。時には相手の暴力に体で対抗したこともあります。
なぜ、いじめを苦に自殺するのかを考えると、厳しい状況に対応できなくなったからだと思います。学校に行けないような国の子供たちは逆に強さがあります。日本の子供たちが弱いのは、豊かになった証拠です。私の子供のころ、戦争があって食べ物がなく、サツマイモの茎まで食べました。そのころは自殺する子はあまりいませんでした。
耐える力を身につけるために、私は一週間から一か月くらい田舎に行って自炊したり自然に親しむことができるような場を作りたいと考えています。とくに都会の子は自然にふれる訓練をすべきだと思います。
■みなさんへ
まず健康に気をつけよう。寿命は長くなっています。長い人生を送るには丈夫な体が不可欠です。そして、学校が楽しい、勉強が楽しいと思えるようになってほしいと思います。私は音楽、体育、習字が嫌いでした。でも、学校に行くのは楽しみでした。だからみなさんも、楽しんで学校に行こう。そして、楽しんで十分に勉強しよう。
(小6・李辰男、中2・酒井由夏、高3・西田祐子記者)
◇取材を終えて◆僕の心がっちりつかんだ大臣
有馬文部大臣のインタビューは名古屋市で行いました。会場に着いた時、ぼくはすごく緊張しました。何しろ文部大臣に会えるのですから。おまちかねの大臣が数人の人たちとやって来ました。お年寄りでしたが元気がありそう。そして笑顔。何となく優しさが伝わってきました。
質問一番手はぼくです。高鳴りする心臓をおさえ、「どんな子供時代でしたか」とたずねました。ぼそぼそと言うものとばかり思っていましたが、返ってきた言葉は「よく遊びましたね」ときっぱり。まさか! 大臣ともあろう方が、よく遊びましたとは。質問に次々と答え、さらに、「李君、ちゃんとメモ取っているかい」と言ったのです。大臣がぼくの名前まで覚えていてくださるとは。うれしくてしょうがないくらいでした。
物知りで、遊び主義、しかもやさしくて、すばらしい大臣。この人は、いつまでもぼくの心をとらえてはなしませんでした。
(小6・李辰男記者)
更新担当者: 高2・五嶌麻美記者
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