2003年3月3日(月) 読売新聞東京本社朝刊
[会いたい!] 希望持てる作品書く
作家・赤川次郎さん


◆仕事は夜中、今も手書き

 30年近い執筆活動で、書いた作品は440冊! 人気作家、赤川次郎さん(55)のミステリーは多くの中高生に支持されています。昨年から刊行されている小学生向けシリーズ「赤川次郎ミステリーコレクション」(全10巻、岩崎書店)も好評です。なぜ私たちをこんなにも引きつけるのか? 赤川さんにお会いし、変わらぬ人気の秘密を探りました。

 ――どんな子どもだったんですか。
 まんがを描くのが好きで、外では遊ばなかった。活発な子ではなかったですね。中学生になって、「シャーロック・ホームズ」に出合い、引き込まれました。それをきっかけに、まんがから小説へ興味が移りました。以来、ずっと小説を書いています。好きなことを続けてきて、それが仕事になった。とても幸運でした。

 ――原稿は毎日書くのですか。
 そうです。ただ、昼間は人に会い、夜は音楽会やお芝居に出かけます。ネタ探しのためではなく、いいものを見て感動する気持ちを忘れたくないからです。涙もろくて、よく泣きますよ。
 書くのは夜中の12時ぐらいから翌朝まで。連載は10本ぐらい。多い時は15本抱えていたこともあります。締め切りが迫っているものから順に書きます。
 原稿は手書きです。ワープロだと文章のリズムが変わってしまうので。それに文章のどこに力を入れるか、体で感じながら書くことができますから。
 いつもノートを持ち歩いて、アイデアを思いついたらすぐメモするようにしています。混乱しないように登場人物の名前や特徴を表にすることもあります。

赤川さんに話を聞くジュニア記者たち

 ――物語を作るうえで、気を付けていることは?
 自分が読みたいものを書きます。生きることを否定せず、人生に希望が持てるような作品を書きたいと思っています。
 最近は、現実に悲惨(ひさん)な事件が多くて、小説で人を殺すのがいやになってきました。人1人死ぬのは、とても大きいことです。それに、人間、やり直せるということが大事。犯人だって同じですよね。
 また、どんな時代にも通用する物語を心がけています。時代の特定もしないし、登場人物も年を取らない。すぐに古びる流行語も使いません。いつの時代も、大人になっていくステップは変わらないと思います。

 ――主人公に元気のいい女の子が多いですね。
 自分から一番遠い存在で、書いていて楽しいからでしょうか。ぼくは気が弱いので、引っ張っていってくれる強い女の子が好きです。それに、家に閉じこもってばかりいる子では、物語が進展しない(笑)。ぼくが運動音痴(おんち)だったので、運動神経バツグンの主人公を書くなど、自分にできない夢を登場人物に実現してもらっています。

 ――シリーズ最新作『三毛猫ホームズの戦争と平和』(光文社)では、戦争がテーマですが。
 戦争は一度始まると最初の目的はどうでもよくなって、殺し合いが連鎖的に続いてしまう。最近、あちこちで争いが起きていやだなあと思います。とんでもない世界を残したとみなさんに言われないよう、ぼくらの世代が戦争の起こらない世の中を作らないと。その願いをこめた小説を今、書いています。
 
――子どもたちにメッセージをお願いします。
 中学高校時代は、人生の中で一番、本が読める時期です。人生を変えてしまう本もある。そんな本は、若いころに読まないと意味がありません。失恋や現実とのギャップなど、本の中で体験していると、実際に直面した時に乗り越える力になるのです。身のまわりだけ見て、この世の終わりなんて決め付けてはいけません。世の中には、たくさん素晴らしいことがある。本はそれを教えてくれます。
             ◇
 〈プロフィル〉 
 ◇あかがわ・じろう 福岡市生まれ。桐朋高校卒。1976年『幽霊列車』でオール読物推理小説新人賞を受賞しデビュー。『三毛猫ホームズ』シリーズ(光文社、2600万部)を始め、『セーラー服と機関銃』(角川文庫、173万部)、『ふたり』(新潮文庫、122万部)など、映画化された作品やベストセラーも多数。最新作は『友よ』(角川書店)。
 
 ◆優しさとプロ意識 ―私たちが取材しました―
 作家は大変だなあと思いました。でも、赤川さんの話を参考にして、今しか読めない大切な本を読んで、将来は作家になりたいです。(小6・米丸悠子記者)
 赤川さんの優しい性格が、作品のキャラクターの雰囲気を作っていると思いました。好きなことを仕事にしていると話す姿は輝いていて、すごくあこがれます。
 (中2・関根万里子記者)
 本に関係のある仕事、できれば作家になりたいと考えている私にとって、赤川さんの話は現実味があり、とても有益でした。(中3・前田菜摘記者)
 「超」がつく有名作家が、まさかこんなにも温和な方だとは。しかし、話の端々から、「作家・赤川次郎」の厳しいプロ意識を感じました。(高3・石野麻衣子記者)
 

作成日: 2003年03月05日

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