2004年7月5日(月) 読売新聞朝刊特集
「第19回全国高校文芸コンクール」作品募集 今を見つめ、書く 「第19回全国高等学校文芸コンクール」(全国高等学校文化連盟、読売新聞社主催、文化庁後援、一ツ橋文芸教育振興会協賛)の作品受け付けが、9月1日から始まります。小説、文芸評論、随筆(エッセー)、詩、短歌、俳句、文芸部誌の7部門で募集します。昨年は2万2000点以上が寄せられ、若々しい視点と豊かな感性、表現力を結集した作品が高く評価されました。夏休みを前に、活動に熱心な文芸部を訪ねるとともに、作家重松清さん(41)と昨年の受賞者からアドバイスをもらいました。(ヨミウリ・ジュニア・プレス取材班、高1・足立治朗、上野みづき、硲ゆか、峰ゆかり、高2・遠藤理恵、松野万里子、高3・山代真希記者)
◇福岡県立若松高
◆「聞き書き」「歌物語」に挑戦
作家の松本清張や火野葦平(あしへい)のゆかりの地、北九州市。同市若松区の福岡県立若松高校文芸部を訪ねました。
新しい部室で創作に励む若松高の文芸部員(中央奥は顧問の今任教諭)
休部状態から復活してまだ5年目ですが、文芸部誌部門で一昨年から2年連続して優秀賞を受賞しました。今春、専用の部室が確保されて、部長の岩山さゆりさん(3年)をはじめ13人の女子部員は張り切っています。
最近は、いろいろな表現方法に挑戦しています。その1つが「聞き書き」。小田寛子さん(3年)は、林野庁などが高校生を対象に行った「森の“聞き書き甲子園”」に参加、炭焼き職人にインタビュー、テープに録音して書き取り、リポートを仕上げました。「方言を聞き取ったり文章をうまくつなげたり、初めての体験で大変でした。でも『自然を大切に』という気持ちを込めてまとめられた」と小田さん。
もう1つは「歌物語」の試み。今春卒業した先輩が作った「とりどりの色のおはじき散らばせてはじきあう指触れる一瞬」などの短歌を読んでイメージを膨らませ、2人の部員が小説を書きました。「何を書いたらいいか分からない」と悩んだ時、短歌が道しるべになるそうです。
詩が好きな人も多く、鑑賞会を定期的に開き、詩作の基礎を固めています。「今月の詩」は、担当者が様々な詩集から気に入った作品を選び、鑑賞会で印象や感想を発表、仲間からも批評を求める取り組みです。「会を重ねるにつれ、言葉の幅や表現力が身についてきたようです。部員の作品を批評することは苦手でも、第3者の作品なら意見を言いやすいのでしょう」と顧問の今任(いまとう)弘之教諭。
「グラスを手にすると」で始まり、「そっと置いた」で終わる――。冒頭と最後だけ今任教諭が決めて、部員が思い思いに20行の詩を10分以内に完成させる「即興詩人」は、ゲーム感覚で楽しめます。
今年のコンクールには、こうした日々の積み重ねをまとめた部誌『響(ひびき)』第五号を応募する予定です。「今までよりも校正を丁寧に行い、載せる作品もより多くの中から絞りました。最優秀賞をめざします」と、岩山さんと次期部長の内山知見(ともみ)さん(二年)は意欲的です。
◇前回の受賞者から
前回のコンクールで最優秀賞や読売新聞社賞に輝いた3人に聞きました。
◆自然にわき上がった言葉で
鳴海滋さん
サーカスを舞台に、人間のこっけいさを巧みに表現した詩で、最優秀賞に輝いた鳴海滋さん(東京・駒場東邦高卒)は、千葉大医学部に進学しました。勉強や部活のラグビーの傍ら、島崎藤村ら好きな文豪の詩集を読み返し、文芸部にも入って秋の大学祭への出品を考えています。
友だちが受験勉強に専念していた高校3年の時、鳴海さんは詩作にも時間を惜しみませんでした。「心にたまっていたものを解消するため、詩を書かずにはいられなかった。気持ちが安定し、知らない自分を発見することもできた」
創作時の心構えについて、「言葉で飾ろうとせず、感じたままに、自然にわき上がった言葉で書くようにしています」と鳴海さん。さらに「職人が丹精をこめて作る工芸品のような美しさも詩には欠かせない。同じ意味の言葉でも、選び方によって全体の雰囲気が変わるので、慎重に考えたい。声に出して読み、リズムや響きを整えることも大切」とアドバイスしています。
◆自分がどう感じたか、素直に
佐藤文香さん
与謝野晶子の歌集を読み、独自の解釈をまとめ、文芸評論部門で読売新聞社賞を受賞した佐藤文香さん(秋田・横手高卒)。民俗学を研究するため、筑波大第2学群比較文化学類で学んでいます。
文芸評論は応募数が少ない部門です。有名な作家や作品の評論は多く出ていることもあり、「独自の視点を出すには」と悩むためでしょう。
晶子についても、たくさんの評論があり、その多くは若いころの歌集を高く評価していますが、佐藤さんは晩年にも優れた作品があると論じました。「解釈の違いをあまり気にせず、開き直って構想や執筆を進めました。歌集をじっくり読み、作者が何を伝えたいのか受け止める。そして、自分がどう感じたかを素直に書くことが大切だと思います」と話します。
今も、評論や小説のアイデアが思いつく度にノートに書き留めています。「好きな京極夏彦の小説からヒントを得て、書きたいテーマを見つけました。生まれ育った田舎の環境を舞台にした作品も書き続けたい」と話しています。
◆気づいたこと、まめにメモ
野月寛紀さん
俳句「ラケットで春の空気をたたきけり」で、最優秀賞を受賞した野月寛紀(ひろき)さん(青森・三本木高卒)は、弘前大人文学部に入学、文芸部に入り、新聞の文芸欄にも投稿するなどして創作を続けています。
最近の作品から。「葉桜や自分に自信持てません」。授業で、班活動のまとめを発表する際、失敗して沈んだ気持ちを詠みました。
この句を、母校文芸部顧問の宮内香宝先生にメールで送ったところ、内証で部の句会に投句され、1位に選ばれました。
「落ち込んでいた時、後輩から温かいものをもらい、うれしかった」と野月さん。
俳句作りをしている高校生には、「視野を狭めず、心を開いて身の回りを見てほしい。嫌なものを見てしまうこともあるけれど、いろいろな発見がある。私はいつもノートと筆記用具を持ち歩いています。俳句の題材を集めるには、気づいたことをこまめにメモし、日記をつけて1日を振り返るのもいい」とアドバイスしています。
◇重松清(しげまつ・きよし)さん 作家
◆「上手」より「びっくり」読みたい
〈家族〉について多くの作品を書き、その短編を集めた『ビタミンF』で直木賞を受賞した作家重松清さんに、書くことや言葉についてうかがいました。
――なぜ作家になろうと思ったのですか。
「あこがれてなりたかった、という訳ではないんです。編集の仕事やフリーライターをやっているうちに、『小説も書きませんか』と誘われたのをきっかけに書き始めました」
――高校時代、文芸活動はしていましたか。
「まったくしていません。高校時代にまんが以外で読んだ本は、歌手の矢沢永吉さんの『成りあがり』1冊だけ。でも代わりにまんがをたくさん読んでいました。小説を書く時も、まんがから受けた影響の方が大きいかな」
――まんがも書くために役立った訳ですね。
「いきなり名作を読まなくてもいいと思います。どんなメディアからでもいいから、いろんな人が出会い、悩み、ぶつかったりしながらコミュニケーションしている世界を知ることは、すごく大事ですね」
――子供のころ、よく転校したそうですが、創作活動に影響していますか。
「転校すると、自己紹介をしますよね。自己紹介をするってことは、自分の人生のあらすじを作るってことなんですよ。また転校生だったので、よく人間観察をしていました。誰となら仲良くなれそうか、とか。そうやって自然に人間のパターンを増やすことができましたね。小説っていろんな人間が出てきた方が面白い。だけど高校生は大人に比べたら出会った数が少ない。そこを補うためにまんがや小説を読んだり、映画を見たりしていけば良いと思います」
――言葉を駆使して表現する楽しさとは。
「言葉を使わなくてはならない関係って、本当は寂しい関係なんですよ。じゃあ何のために言葉で表現したり、伝達したりするかというと、分かり合えない人と分かり合いたいから。究極の幸せっていうのは、言葉がなくても分かり合える関係かも知れない。でも分かり合えない、知り合えない人間と、分かり合いたい、知り合いたい。そうやって世界を広げたいでしょ」
――そうですね。
「世界を広げる武器として言葉があるんだと思います。その言葉を磨いてコミュニケーションが取れると楽しいっていう気持ちを覚えてもらいたい」
――文芸活動をしている高校生にアドバイスを。
「1つだけ気をつけてほしいのは、独善的、独りよがりにならないこと。客観性や視野を広く持つことが大事です。そして、ぼくら大人が、『上手に書いてるね』とか『うまいね』って安心するようなものではなく、『こんなこと考えているんだ』とか『これがいまの高校生のリアリティーなんだ』って、びっくりするようなものを読ませてほしいですね」
《応募規定》
【募集部門】
▽小説=1人3編以内・400字詰め原稿用紙30枚以内
▽文芸評論=同・20枚以内
▽随筆(エッセー)=同・10枚以内
▽詩=1人3編以内
▽短歌=1人3首以上並記
▽俳句=1人3句以上並記
▽文芸部誌=1校1点。昨年10月1日以降に発行されたもの
▽応募作品はすべて縦書き。B4判400字詰め原稿用紙を使用し、所定の応募票を添付する。ワープロ使用の場合、B4判用紙で20字×30行
【応募資格】高校、盲・ろう・養護学校高等部と高専(3年まで)の生徒及び専修学校、各種学校の修業年限が高校と一致する生徒
【応募要項と応募票請求先】120円切手をはった返信用の角2封筒を同封し、〒020・0835 盛岡市津志田26の17の1 全国高等学校文化連盟((電)019・656・5010)へ。ホームページ(http://www.kobunren.or.jp)からもダウンロードできる
【作品の受け付け】9月1日から同月30日(必着)
【発表】12月中旬、読売新聞紙上
【賞】全国高等学校文化連盟会長賞、文部科学大臣奨励賞、読売新聞社賞
◆7か所で文芸道場
第6回高校生文芸道場(文化庁、全国高等学校文化連盟主催、読売新聞社、一ツ橋文芸教育振興会後援)のブロック大会が、8月から11月にかけて全国7か所で開かれます。文芸創作活動に取り組む高校生たちの交流を深めようと毎年開いています。
このうち、関東ブロック大会は8月23日、前橋市の群馬県社会福祉総合センターで約100人が参加して開かれます。大ヒット中の映画『半落ち』の原作者、横山秀夫さんの講演の後、参加者が、あらかじめ「『半落ち』の冒頭部分に続けて書く」か、「しあわせ」「山」をテーマに短編小説を書いてもらい、その作品集を基に合評します。
北信越ブロック大会は9月18、19日、金沢市の石川県立金沢二水高校で行います。森英一・金沢大教授の講演の後、室生犀星や井上靖らを生んだ郷土の文学資料が収蔵されている石川近代文学館を見学。2日目は参加者の作品集を基に部門別に合評します。
北海道・東北ブロック大会は11月5日、福島県郡山市のホテルで開きます。芥川賞作家で僧侶の玄侑宗久(げんゆうそうきゅう)さんの講演の後、参加者が小説、詩、短歌、俳句の各分科会で創作し、合評します。
ほかのブロック大会の予定は次の通り。東海・近畿=11月13日・津市。講演と交流会▽中国=11月12日・広島市。講演と分科会▽四国=11月21日・高知市。講演と交流会▽九州=10月25、26日・佐賀市。文学散策と部門別交流会。
《ヨミウリ・ジュニア・プレス》 1984年創設。首都圏の小学5年から高校生まで65人からなる子ども記者集団。大人記者の指導を受けながら取材活動をし、記事は毎週木曜日夕刊(一部地区朝刊)の「KODOMO 伝える」面などに掲載されています。作成日: 2004年07月09日
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