2005年6月30日(木) 読売新聞
[ゆとり教育・子どもたちから](下)
学校間で取り組みに差(連載)
 ◆農業体験など、参加者少ないのが現実
 「総合的な学習の時間(総合学習)」の見直し、土曜日や夏休みの補習授業など、脱「ゆとり教育」の動きは強まる傾向にあるようです。しかし、ゆとり教育によって始まった新しい取り組みから私たちが得たものもあるはず。今回は「総合学習」と「土曜日の使い方」についてリポートします。(ゆとり教育取材班)


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農作業の後、レタスの葉をつまんで食べる参加者

 完全週5日制で「自由」になった土曜日、子どもたちはどう過ごしているでしょう? 東京・新宿区の旧大久保中学校の校庭の一部を使って行っている小学生を対象とした農業体験を取材しました。

 5年目を迎えたこの活動は、区学習推進委員や明治大学農学部の学生の支援を受けて、15人の小学生が野菜作りに取り組んでいます。90平方メートルほどの畑でトマトやナスなど10種類以上の野菜と、花を栽培。小学生たちは、実際に自分の畑を持っている講師から細かい指導を受けながら作業をしています。

 「嫌いな野菜も自分で育てたものなら食べられるようになった」と、区立柏木小3年の萩原南美さん。区生涯学習推進委員会の大浦正夫会長は「子どもたちは喜びと驚きを味わっているし、大人も楽しんでいる。季節感や農作業の大変さも体験してほしい」と話しています。

 本来の学校週5日制の目的は、このように家族や地域との触れ合いの時間を増やすなど学校ではできない体験をすることがねらいでした。各地区の子どもセンターなどでは、自然教室や観劇会、ボランティアなどさまざまな行事を行っています。

 しかし、平日の授業数が増えて忙しく、こうした活動に参加する人は少ないのが現実です。アンケートでは、「部活があるので土曜日も休めない」(中2)、「ボランティアなど課外活動をしたくても、どこで探したらよいか分からず、結局だらだらと過ごしがち」(高3)という意見もありました。

 先生の創意工夫で、教科にこだわらない学習を目的とした総合学習。その取り組みを、ジュニア記者とその友人にアンケートしたところ、「国際理解をテーマにグループで調べて発表」(高3)といった「調べ学習」が一番多く、ほかに農業体験や職場体験などがあがりました。そして、「自分の知らないことを知るきっかけになった」(中2)、「興味があることを調べられて有意義」(中3)と賛成意見が多くありました。

 多摩川に近い東京・大田区立矢口小学校で昨年度、6年生たちが半年かけて、渡し舟作りに取り組みました。お年寄りに戦後間もなくまであった対岸の川崎市を結ぶ渡し舟「矢口渡(やぐちのわたし)」の様子を聞き、カヌー愛好会の人たちの協力を得て、全長5メートルほどの舟を作り、実際に川を渡ってみました。

 「数え切れないほどの感動、達成感を覚えた」(道具将人君)など、子どもたちには印象深い授業だったようです。指導した中村泰之先生も「何もないところから本物を作り上げることで、自信や『やればできる』という信念がはぐくまれた」と語っています。

 しかしアンケートからは「他の教科の時間になったこともある」(中1)、「1年間取り組んだのにリポートが1、2枚の人も」(高3)、「3割の人は遊んでいた」(中3)という声もあり、学校間で取り組みに差があるのも事実です。
 

 〈取材を終えて〉
 ◆私たちはモルモットなの?

 本来「ゆとり」をもたらすはずだった新学習指導要領は、実際には子どもたちから「ゆとり」を奪ってしまっています。「急な教育環境の変化で一番影響を受けるのは子どもたち、ということを分かってほしい」(中2)、「子どもの側からすると、実験用モルモット状態」(高1)という切実な訴えもあります。

 学力の国際比較などに左右され、数年で教育方針を変えることは、今を生き、日々成長している私たち子どもにとって、有意義なものになるのでしょうか。もっと子ども一人ひとりに目を向けた「最善の教育」を考えてほしいと思います。(取材班 小6・吉武彰子、中1・斉藤亮、田村佳緒里、中2・林すみれ、藤川奈央美、中3・森口真衣、高1・浮津亜由美、伊藤彩、高2・関根万里子、高3・土田紗佑里、松野万里子、松本真実記者) 

作成日: 2005年07月01日

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