2007年4月14日(土) 読売新聞
「12歳の文学賞」 大賞に追本さん、井上さん 大人もうなる表現力 ◆姉思いの妹描いた
「小学生だからこそ感じることを小説で表現してほしい」と、小学館が創設(そうせつ)した「12歳の文学賞」の第1回表彰式が先月、東京で行われました。大賞を射(い)止めたのは、「月のさかな」の追本葵(おいもとあおい)さん(12)=富山市=と、「『明太子(めんたいこ)王国』と『たらこ王国』」の井上薫(ゆき)さん(10)=神奈川県鎌倉市=です。ふたりに小説を書く楽しみ、受賞の喜びなどを取材しました。(中1・平井絵未理、中3・田中成美、高2・平岡涼子、高3・本橋優穂記者)
大賞受賞のインタビューに答える追本さん
募集は昨年3月から9月末まで行われましたが、予想を上回る2205編もの応募があり、うち8割が女子からでした。
「月のさかな」は次のようなストーリーです。夜、学校のプールに忍び込んだ美月は泳ぎながら、「私は月に行くの」と、妹に話しかけます。ところが翌日、プールに幽霊(ゆうれい)が出て、それも数年前に、行方不明になった女の子だったといううわさが立ちます……。
追本さん自身はふたり姉妹の姉ですが、作品では妹の視点から、「家の中に居場所がないという姉に共感して、夢をかなえてあげたいと思う妹の心理を伝えたいと思いました」。審査員の作家、あさのあつこさんは、「完成度の高い作品で、文章力にびっくりしました」と驚いています。
本が大好きで、小4のころから童話を書き始めたという追本さん。小学校では書いた小説を、やはり小説を書いている友だちと批評し合うなど積極的でした。友だちとテーマを決めて1章ずつ書くリレー小説にも取り組みました。
「こんなに大きな賞をいただくなんて」と驚いています。4月から中学生になった追本さん。「文芸部に入り、自分の気持ちを伝えられるような小説を書きたい。将来は、面白い本を生徒に勧(すす)められる学校図書館の司書になりたい」と、声を弾(はず)ませて話してくれました。
◆宮部みゆきさん目標
一方、井上さんは「すぐに福岡に住むおばあちゃんに知らせました」と受賞の喜びを話してくれました。
作品について話してくれた井上
さん「大好きなまんが家の西原理恵子さんに、自分の作品を読んでもらいたい」と、昨年の夏休みに取り組んだ作品です。明太子屋の明太子たちが、店員の知らないうちに、「明太子王国」を作っていました。その王国に女の子が生まれたところ、ライバルの「たらこ王国」から、「女の子が生まれたら国を滅ぼす」という手紙が届き、両国は戦いに突入。そこへおにぎりが登場します……。
ふだんは新聞の折り込みチラシの裏などに、短い小説を書いている井上さんですが、この作品は原稿用紙とにらめっこして32枚の長編となりました。審査した西原さんは「小学4年生の集中力と創造力がすばらしい」と語り、作家の重松清さんも「一つのオリジナルな世界観を作っているし、何よりも本人のワクワク感が伝わってくる」と絶賛しています。
「普通なら動かない物を主人公にしたら面白いのでは?」と、大好きな明太子とたらこを主人公に設定しました。ほかにも、給食で残された「残飯(ざんぱん)」が、子どもたちに仕返しをする小説も書いています。
「今はファンタジーを多く書いていますが、将来は大好きな宮部みゆきさんのような推理小説を書いてみたい。そのためにはいろんな知識が必要なので、たくさん本を読みたい」と話していました。
ふたりの大人顔負けの表現力に圧倒されるとともに、私たちも大いに刺激されました。ふたりの次の作品がとても楽しみです。なお、この文学賞受賞作を集めた『12歳の文学』が同社から出版されました。作成日: 2007年04月15日
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