◆最高の響き、観客全員へ
会場の大型スクリーンに次々と映し出される画像に合わせて、光彩(こうさい)ひらめく照明が歌手やダンサーを照らし出す――。最近のライブ・コンサートの舞台(ぶたい)は、ビジュアルの華(はな)やかさが目立ちます。それでも、主役はやはり音楽。それを陰(かげ)で支えるのが、音響(おんきょう)作りのプロたちです。日本を代表するサウンド・デザイナー志村明さんに、リハーサル前の演奏会場で話を聞きました。

さいたまスーパーアリーナのコンサート会場で音響の調節をするサウンド・デザイナーの志村明さん
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訪ねたのは、人気バンド“ミスチル”の公演があった先月中旬のさいたまスーパーアリーナ(さいたま市)。舞台は観客2万人以上が360度どこからでも見られるように設置されています。音響を調節する調整卓(ちょうせいたく)など、志村さんらが設営したミキシングブースは、舞台から離(はな)れた1階客席の中央付近にありました。
実際に、マイク調整作業で、音程(おんてい)の違(ちが)う声を出して響(ひび)き過ぎないように周波数(しゅうはすう)を整えるところを見学しました。
舞台の上部左右にそれぞれ10個ずつ組み合わせた前方向きのスピーカーと数個ずつの逆向きのスピーカーが吊(つ)ってありました。「これらの角度が1度違っても、5階ある円形の客席全体にうまく音が届(とど)かないので、設計どおりの設営が最も重要」と志村さん。会場内の響きのほかに、演奏中のアーティストが聴(き)く舞台上のモニタースピーカーとイヤホンの音の調節、各楽器の音の調整も行います。
音作りは実は、まずスタジオのリハーサルから始まります。そこでアーティストの要望やコンサートのテーマ、演出に従って音のアイデアを練(ね)ります。「曲調(きょくちょう)によってカオスのようにしたり、逆にストレートな音にしたり。今回はアリーナだからスケール感のある響きを目指しました」
志村さんは小、中学校時代は放送部員。機械いじりが好きでした。日大芸術学部放送学科技術専攻に進学後、バンド活動に励(はげ)みながら、1年の時から音響を作るPA(ピーエー)の会社でアルバイト。3年で音響機材を扱(あつか)うPA会社を自(みずか)ら設立しました。一時レコーディングスタジオで研鑽(けんさん)を積み、その後、再びPA会社「スターテック」を興(おこ)し、10年前からPA技術者らを束(たば)ねるサウンド・デザイナーとして一流アーティストたちの国内、アジアツアーを手がけています。また、年2回、大阪のPA専門学校で教えています。
「PAは出張が多い仕事だけど、近年女性が増えてきた。仕事は共同作業なので、まずは技術より人間関係をうまくやっていけることが大切」。音響機器も楽器もデジタル化で急速に進歩し続けています。「コンサートも一つとして同じものはない。常に様々(さまざま)な好奇心をもち、感性を磨(みが)くこと。実績を上げるには、良いアーティストと巡(めぐ)りあい、求められる音を具体化していくしかない」
コンサート中、一観客になって感極(かんきわ)まる瞬間(しゅんかん)があるそうです。「そんな何万人もの聴衆(ちょうしゅう)と心が一つになる快感を味わうため、日々本番を続けていると言えるかも」と、仕事への熱い思いで締(し)めくくってくれました。
《取材を終えて》
◆真剣な姿、憧れた
実際に機器を操作(そうさ)して説明する志村さんの真剣な姿に、すごく憧(あこが)れた。「日々挑戦(ちょうせん)、日々勉強」と言える生き方を私たちもしたいと強く思った。(中3・中沢麻美、高2・田村佳緒里、高3・加治さつき記者)
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