2008年6月6日(土)  読売新聞
[会いたい] アートディレクター・佐藤可士和さん 毎日がアイデアの源
 ◇さとう・かしわ 44歳 
  
 「ユニクロ」や「楽天」のロゴマーク、「SMAP」のCDジャケット、NTTドコモの携帯(けいたい)――。10代にもよく知られるデザインを手がける佐藤可士和さんに、創造力(そうぞうりょく)の秘密(ひみつ)を聞きました。(中1・横森萌々太、中2・高橋叶、高1・吉武彰子、高2・加藤あず佐記者)
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7月発売予定の携帯「スポーツエディション」を手に。デザインはストップウオッチのイメージ。歩数、消費カロリーなど運動成果を楽しめる。「アイデア、デザイン、広告まで、一貫性のある世界を作っていく」=松田賢一撮影


 オフィスに一歩足を踏(ふ)み入れると、りんとした空気が流れるのを感じました。白い壁(かべ)、ヒノキの床(ゆか)の会議室には、机(つくえ)といすしかありません。

 「入っただけで“潔(いさぎよ)さ”のあるセンスを感じてほしい。ここなら、普通(ふつう)でないものができそうと思われたい」

 アートディレクターは元々は、ポスターや新聞、雑誌(ざっし)などのグラフィック広告作りの総監督(そうかんとく)。佐藤さんは仕事の対象(たいしょう)を広げ、商品も空間もデザインできると考えています。

 「広告会社でデザイナーとして働いていた97、98年ごろから携帯やインターネットが普及(ふきゅう)し、テレビや新聞のコマーシャルが効(き)かなくなってきた感じがしてきた。物や店を総合的(そうごうてき)にデザインしないと反応がないのではと思ったのが、独立したきっかけです」

 手がけた携帯の一つNTTドコモの「キッズケータイ」は、本体デザインや宣伝(せんでん)以外にもアイデアを出しました。

 「書道、ダンスなど著名人(ちょめいじん)による様々な教室に、買った人が参加できる企画です。売れることより、役に立つことや、コミュニケーションをサポートするキッズケータイの世界観を作ろうとしました」

 東京・立川市にある「ふじようちえん」を2007年に新装。定員はすぐにいっぱいに、教員として働きたいという人も殺到(さっとう)したそうです。

 「建物が古くなって、園児の活動が制約されてしまう、と園長先生から相談されたんです。僕(ぼく)はこれを、デザインで解決しようと思った。各地の幼稚園(ようちえん)を見て回ると、きれいな建物でも、遊具(ゆうぐ)を取ったら小学校なのか幼稚園なのか分からない。だから、自分が作る幼稚園は、建物自体を巨大な遊具にしよう、と」

 ケヤキの木が建物を突(つ)き抜(ぬ)けていたり、屋上からすべり台が下(お)りていたり。ユニークな発想の秘密は日常の中にありそうです。

 「いつも、一般人とクリエイターの2人の自分がいます。映画が面白ければ、クリエイターの自分はなぜ面白いのか分析する。コンビニでペットボトルを買う2、3秒の間にも、なぜこれを手に取ったのか考える。それが仕事につながっていく。毎日がアイデアの源(みなもと)です」

 「商品が売れない」などと悩(なや)む人の問題をアートディレクターとして解決。でも、どんな仕事でも、クリエイティブな意識(いしき)はカギになりそう。

 「普通の生活でもアイデアは必要でしょう? これからの時代、問題を解決し、いい方向に持っていくため、創造力がとても大切になると思います」
           
 〈取材を終えて〉

 ◆デザインの力実感


 日常生活の中での分析がアイデアの基と知り、やはりアイデアは簡単(かんたん)には生まれないと思いました。デザインが身の回りの空間や働き方を変えられることも実感し、クリエイティブな意識は、誰(だれ)にでも必要なのだとわかりました。(T、K、Y)
 
 〈プロフィル〉

 1965年、東京都生まれ。多摩(たま)美術大学卒。広告会社博報堂(はくほうどう)に入社、2000年に独立し、クリエイティブスタジオ「サムライ」を設立。広告、企業のロゴ、店舗(てんぽ)など空間のデザイン、商品開発など、幅(はば)広い分野のアートディレクションを手がける。「東京ADCグランプリ」などデザインや広告関係の賞を多数受賞。明治学院大客員教授。

作成日: 2009年06月11日

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