――「古事記」とは、どのような書物ですか。
「現存(げんぞん)する日本最古の歴史書で、全3巻(かん)あります。天武天皇(てんむてんのう)が編(へん)さんを命じ、約30年かけて712年に完成しました。日本の国の成り立ちが書かれ、建国の精神(せいしん)や、『日本とは何か』『日本人とは何か』『天皇とは何か』といったことが分かります。同時期に書かれた『日本書紀』は、おそらく外国の中国向けの歴史書で、『古事記』は国内向けだったと考えられます」

「古事記」に登場する名前について説明をする竹田恒泰さん。「古事記のイベントや総合サイトの準備も進めています」=武藤要撮影 |
――研究していて、面白いと感じることは何ですか。
「ストーリーが緻密(ちみつ)で読み物として楽しめ、ダジャレも多い。漫画本(まんがぼん)をよむような面白(おもしろ)さがあります。古くさい、難(むずか)しいと思われがちですが、現代語訳(やく)なら難しくない。読むときの最大のコツは、名前を忘(わす)れること。神様がたくさん出てきますが、ほとんどは二度と登場しません」
――現代語訳を手がけています。どんな苦労がありましたか。
「原本は全て漢字ですし、なじみのない言葉が多く使われています。それを、現代の日本人がストレスなく読めるように、当時の習慣(しゅうかん)などを補足(ほそく)しながら訳しました。漢字の読み方一つ取っても学説が分かれるので、自分の立場を決めなければならないことも大変でした」
――そもそもなぜ「古事記」を研究しようと思ったのですか。
「大学で日本国憲法(けんぽう)を教えています。憲法は一番最初に天皇について書いてありますが、第1条にある『日本国の象徴(しょうちょう)』とはどういう意味なのか、原点を知るためには古事記を読まないと理解(りかい)できないと思ったのです。研究してみて、日本人なら知っておかなくてはならない内容だと感じました」
――「古事記」のような神話を学ぶ意味とは何でしょう。
「神話には現実には起こりえないことが書いてありますが、だから『なかった』とは言えない。事実を反映(はんえい)させた記述(きじゅつ)なのかもしれません。事実かどうかよりも、先人が長い間信じて大切にしてきた真実が書かれている、と理解すればいいと思います」
――「古事記」から学んでほしいこととは何ですか。
「自然観、死生観、歴史観という基本的な価値(かち)観が分かります。『いただきます』『おかげさま』という感覚や、仕事を生きがいと思う価値観は、日本人特有のものです。民族の行動は民族の価値観を見れば分かりますが、今の日本人に歴史観はありません。建国の精神を学び歴史観を勉強すれば、日本のことをよく知り、日本人であることの誇(ほこ)りを感じ、日本人はもっと輝(かがや)けると思うのです」
――先生は日本の伝統文化やあり方を学ぶ研究会を開いています。
「5年前に30人でスタートして、今では全国に4000人の会員がいます。最近、古事記の現代語訳を全国のホテルに無料配布することも始めました。今年は古事記編さんから1300年。一人でも多くの人が古事記と縁(えん)をつなげられるように、できることをしていきたいです」
感想 古事記は難しいものだとばかり思っていましたが、親しみやすい内容も多いと知って驚(おどろ)きました。古事記編さん1300年の今年、東日本大震災(だいしんさい)後に世界中から称賛(しょうさん)された日本人の心を読み解(と)き、日本人が日本について考える1年になればと思いました。(S)
◎先生=竹田恒泰(たけだつねやす)
1975年、東京都生まれ。慶応義塾(けいおうぎじゅく)大学講師(こうし)。著書(ちょしょ)に『語られなかった皇族(こうぞく)たちの真実』『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』『現代語古事記』など。
◎生徒(聞き手)=高1・佐々木凌、平川さつき、高2・横山達也記者
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