◆航空写真+足で確認
私たちの生活に欠かせない地図。国土地理院(茨城県つくば市)の中にある「地図と測量(そくりょう)の科学館」を訪(おとず)れ、意外と知らない、地図のあれこれを学びました。〈ヨミウリ・ジュニア・プレス取材班=小5・青柳孝信、中2・石井遥、高2・平井絵未理記者〉
■全国に基準点
国土地理院は、国土の測量や地図作りなどを行う国の機関(きかん)です。地図と測量の科学館では、楽しみながら地図作りの方法や歴史などについて知ることができます。

縮尺10万分の1の日本列島。3Dの眼鏡をかけて見ると、山が飛び出して見える |
平井英明(ひらいひであき)・建設専門官(けんせつせんもんかん)に見所を案内してもらいました。1階の床(ゆか)には、縮尺(しゅくしゃく)10万分の1の日本地図が描(えが)かれています。「この眼鏡(めがね)を使うと、立体的に見えますよ」。右目が青、左目が赤の3Dの眼鏡をかけると、山々が浮(う)かび上がってきました。日本の国土は山がちで、広い平野に都市が発展(はってん)したことが一目でわかります。
正確(せいかく)な地図は、どうやって作るのでしょうか。国は地図を作る際(さい)の測量のため、緯度(いど)や経度(けいど)などを表す「三角点」、標高(ひょうこう)を示(しめ)す「水準(すいじゅん)点」などの基準点を全国に約13万か所設(もう)けており、その基準点が写るように航空(こうくう)写真を撮影(さつえい)します。同館隣(となり)の地球ひろばには、1960〜83年に活躍(かつやく)した初代の測量用航空機・くにかぜが展示(てんじ)されています。下に潜(もぐ)ると、胴体(どうたい)の真下に撮影用の窓(まど)がありました。

展示されている測量用航空機・くにかぜの胴体の下には、撮影用の窓がついている(地球ひろばで) |
この航空写真などを基(もと)に、コンピューターで地図を描きます。基本となるのは2万5000分の1の地図で、主な建物や地名、道路のほか、等高線で土地の起伏(きふく)なども表示。これが市販(しはん)される地図の基となり、国や自治体の都市計画、災害(さいがい)時の危険(きけん)を示す地図作りなどにも利用されています。
「航空写真でわからない部分があれば、現地(げんち)へ足を運んで確認(かくにん)します。再開発(さいかいはつ)などで街が大きく変われば、更新(こうしん)していかなければなりません」。1枚(まい)の地図を作るには多くの手間が必要なのです。
■時代で違う特色
コンピューター導入(どうにゅう)以前は、もっと大変でした。昭和の終わり頃(ごろ)までは、図化機という機械が使われていました。レンズをのぞいて航空写真を見ながら、両手と右足でペン付きの金具(かなぐ)の位置を操作(そうさ)。左足のペダルを踏(ふ)むと、ペン先が紙について地図が描(か)けます。操作させてもらいましたが、両手両足をうまく連動させなければならず、まともに線を描けませんでした。「一通り地図が描けるまで2、3か月かかる」という話に納得(なっとく)です。

図化機を見学するジュニア記者。画面奥で操作すると、手前のペンが動いて地図を描く |
地図の歴史も紹介(しょうかい)しています。旧陸軍(きゅうりくぐん)が1884年(明治17年)に完成させた皇居(こうきょ)周辺の地図と、国土地理院が2000年に作製(さくせい)した同じ地域(ちいき)の地図を見比(みくら)べてみました。フランスの技術(ぎじゅつ)を用いた明治の地図は色遣(いろづか)いが美しく、美術的(びじゅつてき)な価値(かち)が高いそうです。一方、平成の地図は道路などが詳(くわ)しく表示され、より実用的に感じました。
このほか、目測(もくそく)で距離(きょり)や高さを判定(はんてい)する体験コーナー、何の地図記号か当てるクイズなどの展示もあります。
最後に、20万分の1地球儀(ちきゅうぎ)の一部を表した「日本列島球体模型(もけい)」へ。直径(ちょっけい)約22メートル、高さ約2メートルの模型の上を歩くと、地球が丸く、日本列島が弓なりになっていることがわかります。「模型の上に立って見る地図は、高度約300キロ・メートルにある国際宇宙(こくさいうちゅう)ステーションからの光景とほぼ同じ。旅客機で飛ぶ高度1万メートルの位置は、この模型上では5センチ・メートル上に過(す)ぎません」と平井さん。
地球の大きさを実感。家に帰ったら、地図を広げてゆっくり眺(なが)めようと思いました。
◆東日本大震災 被害くっきり
地図と測量の科学館では、東日本大震災に関する特別展も行われています。震災発生直後とそれ以前に撮影された被災地(ひさいち)の航空写真を見比(みくら)べると、津波(つなみ)で沿岸(えんがん)の地形がどれだけ変わったか、どれほど多くの家屋が被害(ひがい)に遭(あ)ったかがハッキリと分かり、改めて心が痛(いた)みました。
航空写真を活用し、国土地理院は青森県八戸市(はちのへし)から福島県いわき市の一部までの地図を作製。道路や鉄道が寸断(すんだん)された状況(じょうきょう)、水害に遭った地域(ちいき)などを示し、救助や復興(ふっこう)に取り組む国や自治体に提供(ていきょう)したそうです。

震災直後の被災地の地図について説明する平井さん(左)。災害時の迅速な状況把握も大切な仕事だ
|
また、同院は全国約1200か所に「電子基準点」という全地球測位システム(GPS)を使った観測点を設置。電子基準点と人工衛星(えいせい)の通信で位置情報を把握(はあく)し、日本列島周辺の地殻(ちかく)変動を継続的(けいぞくてき)に観測しています。
今回の震災で、宮城県石巻市牡鹿(いしのまきしおじか)の電子基準点は、東南東に約5・3メートル動き、約1・2メートルの沈下(ちんか)を観測しました。こうしたデータは、地震を引き起こした断層(だんそう)の動きを分析(ぶんせき)する研究などにも役立てられるそうです。
平井さんは「日本列島はプレートの境界近くに位置しており、これまでにも大規模な地震が発生してきました。また、火山も多いため、地殻変動を継続して監視(かんし)し、防災の研究に役立てていきます」と話していました。
|