2002年7月12日(金) 読売新聞朝刊特集
夏に磨け、感性 第17回全国高等学校文芸コンクール作品募集 ◆第17回全国高等学校文芸コンクール作品募集 「第17回全国高等学校文芸コンクール」(社団法人全国高等学校文化連盟、読売新聞社主催、文化庁後援、財団法人一ツ橋文芸教育振興会協賛)の作品受け付けが9月2日から始まります。募集するのは今年も小説、文芸評論、随筆(エッセー)、詩、短歌、俳句、文芸部誌の7部門です。年々応募作品数、質とも高まりを見せ、昨年は2万5千点を超す力作が集まりました。夏休みを前に、応募に向けて取り組んでいる高校を取材するとともに、昨年の受賞者と作家島田雅彦さんにアドバイスをいただきました。(ヨミウリ・ジュニア・プレス特別取材班 高1・戸祭あゆみ、高2・伊東希恵、小島務、酒井由夏、松井香織、高3・石野麻衣子記者)
詳しい募集要項はこちらへ◆あふれるパワーと個性 東京・筑波大学付属駒場高校
東京・世田谷区にある筑波大学付属駒場高校では、一昨年春まで休部していた文芸部を新入生たちが復活させました。以来、このコンクールに2年連続で入賞するなど、活躍が目立っています。
![]()
今年のコンクールへ意欲を見せる筑波大付属駒場高・文芸部員(最奥は顧問の関口隆一教諭)
前部長の竹村浩昌君ら現3年生が、友だちを誘うなどして復活させた時は、部員が10人程度でした。それが今、31人にまで増えました。その背景には、アイデアあふれる企画があげられます。
その1つが、ホームページを立ち上げたこと。部員の最新作やコンクールでの入賞作を載せています。「他校の文芸部の人たちが読んでくれています。作品をほめてもらうとうれしいし、意見や感想も創作の参考になります」と竹村君。昨年の夏休みには、岡山県立岡山一宮高の文芸部と、ホームページで作品を発表し合い、インターネット上で合評も行いました。
秋の文化祭の即興詩会も好評でした。お客さんからリクエストのあった「愛」「秋」「富士山」などのテーマで部員が詩を書き、その場でプレゼント。この企画は校内の審査で、30団体中の4位に選ばれました。
さて、今年のコンクールには、昨年奨励賞に選ばれた文芸部誌部門に、最新の「air mail 第4号」を出品する予定です。B5判、108ページの冊子は、例年よりも企画ものを充実させました。座談会「パソコンの文字と書いた文字」では、創作の時、手書きとパソコン打ちで、それぞれどんな長所、短所があるかを話し合うなど、自分に引きつけた内容が光っています。新企画として、「高層ビル」「紙」「定規」の3テーマで即興詩会を開き、優秀作を収めました。
随筆部門で2年連続、優秀賞、優良賞を受賞した桔梗(ききょう)聡君(3年)は、「孤独をテーマにした作品を出したい。今、推敲(すいこう)しているところです」と張り切っており、他の部員も小説、詩部門などへ意欲を見せています。
顧問の関口隆一教諭は「部活の復活は生徒の自発的な取り組みだし、いろいろな企画も自主性に任せています」と話します。部員の作品と取材中の会話からは、パワーと個性が伝わってきました。
◆合評会、率直な批評が効果 愛知・県立時習館高校愛知県豊橋市にある県立時習館高校の文学部を訪ねました。創部が1949年と伝統があり、前回のコンクールでは、小田ちひろさん(3年)が小説部門で、古橋慶子さん(同)が随筆部門で、それぞれ優秀賞に輝きました。
![]()
最新の部誌を読む時習館高・文学部のメンバー(左奥は顧問の中尾和博教諭)
部室では、1960年の創刊で、年2冊ずつ発行している部誌「COSMOS(コスモス)」を見せてもらいました。最新の部誌「76号」には、高校生が主人公の小説など同世代の共感を得られそうな作品がB5判、109ページの冊子に収められています。印刷、製本も手がけました。現在、20人いる部員は、自分を自由に表現するため、一人一人が複数のペンネームを持ち、作品によって使い分けています。
部誌が出来上がると、合評会を開きます。部活の記録ノートには、「展開はいいが、主題がわからない」「漢字が多すぎる」など作品への意見や感想が記されています。「1年生も先輩に遠慮せず、率直に述べます。合評会後、自分の作品を手直しして、コンクールへの出品とつなげています」と部長の彦坂直輝君(2年)は話します。
もう1冊ノートがありますが、こちらは雑記帳で、毎日、昼休みや放課後に集まってくる部員が、詩やイラスト、仲間の作品の批評などを自由に書き込んでいます。
今、部員たちは「77号」へ載せる小説や随筆、詩などの仕上げに追われています。「今回は、ファンタジー系の小説に偏らず、幅広い題材の作品を盛り込みます。コンクールへは、昨年よりも多くの部員が出品できるようにしたい」と彦坂君は張り切っていました。
◆自分のテーマ探そう 回り道楽しむ余裕持って
◇作家・島田雅彦さん小説やエッセー、文芸評論などはどうしたらうまく書けるのでしょうか。『彼岸(ひがん)先生』で泉鏡花文学賞を受賞し、現在、近畿大学文芸学部助教授としても活躍する、作家の島田雅彦さんに話を聞きました。
――小説家になろうと思ったきっかけは何ですか。
「物語の楽しみを知ったのが、中学2年くらいの時です。初めて夢野久作の作品を読んだ時はびっくりし、ドストエフスキーを読んだ時には、こんな小説を書くのは自分には無理だと思い、エドガー・アラン・ポーを読んだ時には、こういうふうに物語の世界を作っていく方法もあるんだと感心しました。過去の文豪の作品を読めば読むほど、自分が自由になる気がした。それから、詩や小説のようなものを書き始めました」
――高校時代(神奈川県立川崎高)は文芸部に入っていたそうですね。
「文芸部のほかに、山岳部やハンドボール部などにいたこともあります。クラブ活動は刺激を受けるには良いのですが、創作活動はとても孤独なものです。文学は、あらゆる営みと関係しています。心の底でもやもやした気持ちはだれもが持っていますが、それを言葉でどう表現するかを競って、詩や小説が成立しています。その言葉を使って何かを手に入れるのが文学です」
――小説のテーマはどのようにして探していますか。
「世の中には書きたいテーマが無数にあり、テーマが尽きることはありません。それに気づかない人がいるだけです。それこそ、1歩街に出たら、歩くたびにテーマが見つかります。私自身は、書き進めていて飽きないテーマを選ぶようにしています。自分にしか書けない、気づいたのは私だけというテーマを大切にしてほしいと思います」
――では文芸評論は、どんなことを心がけたらいいでしょうか。
「今までだれもやらなかった評論を書きたいなら、忘れられてしまった作家の作品を読んで、その中からたくさんのヒントをもらうことです。文学に限らず、どのジャンルも、いま壁に突き当たっている。いくら現在にとどまって考えていても、この壁は越えられません。過去まで戻ることのできる人だけが、未来について考えられると思う。明治や大正の作品を読んで現代的に論じれば、すごく新しい表現が模索できるはずです」
――エッセーの場合はどうでしょう。
「大抵の高校生は自分の生活について書きたいし、半径10メートルぐらいのことを書きたいでしょう。自分にしか興味のない人も多いようですが、これは悲しいことです。『自分』というのは、他人や環境、時代などとの関係の中で作られます。逆説的に言えば、徹底的に自分のことだけ考えると世界が分かり、世界を知ろうとすればするほど、自分のことが分かります。新聞に目を通す時も、全部自分に関係があると思って読んでほしい」
――最後に、応募を考えている高校生にアドバイスをお願いします。
「自分が10代の時には、携帯電話もパソコンもありませんでした。今は様々なテクノロジーが使われ、便利になっていますが、あらかじめ与えられているものを使っている限りは、みんな似たり寄ったりの考え方にしかならないと思います。一見、無駄に思える作業も、実は大事なことです。回り道をして、面倒なことも楽しむ心の余裕を持ってほしいですね」
◆詩部門で最優秀小説でも優秀賞
◇阿部真吾さん 書こうという勢い大切に昨年のコンクール詩部門で最優秀賞、小説部門でも優秀賞を受賞した阿部真吾さん(岩手県立盛岡第四高卒)は、映画監督になる夢をかなえるために上京、今、映像芸術の専門学校で学んでいます。「感性の開発」を重視した授業で、映画監督や脚本家などの講義を聞いたり、グループで映像作品を手がけたりしています。そのかたわら、文芸活動も続け、ふるさとをテーマに詩を書くなどしています。
ゴジラの映画を作った円谷英二監督を尊敬、高校時代、「シナリオを書く力をつけたい」と文芸部に入りました。仲間にも恵まれ、「作品を自分の中にとどめず、伝えていく大切さを実感した」と振り返ります。
詩作についてのアドバイスとして、「自分の内面から出てきたものに素直になり、書こうと思い立った勢いを大切にしてほしい。1か月ぐらいたってから読み直すと、客観的な目で推敲ができます」と話しています。
◆「文芸道場」全国7か所で
「第4回高校生文芸道場」(文化庁、全国高等学校文化連盟主催)が、8月から11月にかけて全国7ブロックで開かれます。高校生の文芸創作活動をより活発にというねらいから始められたもので、各会場では、高校生と講師の先生を囲んでの様々な企画が予定されています。
このうち北海道・東北ブロックは10月25日、山形市の県文翔館で、「詩の朗読ボクシング」を行います。道県代表の計16人がトーナメント方式で、自作の詩を3分以内で朗読し、日本朗読ボクシング協会代表の楠かつのりさんや生徒代表の判定を受けます。決勝に勝ち残った2人は、自作の朗読のほかに、その場で出された課題で即興的に作品を作って朗読しなければなりません。
北信越ブロックでは9月7、8日、新潟県・妙高高原のホテルに宿泊しながら研修します。芥川賞作家の藤沢周さんと「言葉の力・文学の力」をテーマにディスカッションしたあと、高原を散策しながら創作活動を行い、2日目は、作品の合評会を予定しています。
ほかに、関東ブロックでは8月20日に、埼玉県桶川市のさいたま文学館で、参加者は「喜・怒・哀・楽」のいずれかをテーマに随筆を書いて参加、お互いに作品について合評するほか、小森陽一東大教授の講演もあります。
中国ブロックでは、11月8日、山口県婦人教育文化会館(山口市)で、作家の高樹のぶ子さんの講演と分科会を予定しています。
作成日: 2002年07月22日
最上部へ ホームへ Copyright (C) 1997-2001 Yomiuri Junior Press 記事を読んだ感想を聞かせてください! メールアドレス:junior@yomiuri.com