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    保護者を魅了する伝統の文化講座…共立女子

     共立女子中学高等学校(東京都千代田区)は、在校生や卒業生の保護者に向けてさまざまな文化講座を開いている。数十年の伝統を持つデッサン教室をはじめ、本格的指導が受けられる華道講座、実用的なマナーが身に付く礼法講習会など、応募が殺到する人気講座ぞろいだ。同校が積極的に講座を開き、保護者が引き付けられるのはなぜか。その魅力を取材した。

    伝統の教室でクロッキーに集中

    • プロのモデルを囲みデッサンに集中する保護者たち
      プロのモデルを囲みデッサンに集中する保護者たち

     「美術科父母デッサン教室」と「華道入門講座」が開催された7月15日、同校を訪れて、両講座を見学した。

     美術科父母デッサン教室に参加したのは、卒業生・在校生保護者が中心の19人。絵画教室とはいえ、描く対象はプロのヌードモデルだ。緊張する参加者に対し、指導に当たった美術の中城芳裕教諭は、まず、人物のフォルムの捉え方やデッサンの描き進め方などを説明。すぐに実際のクロッキーに入った。

     モデルは5~20分ごとにボーズを変えていく。最初は戸惑っていた参加者もいたが、描くうちに制作に集中していく。モデルの体の線や量感を捉えながら、画帳に鉛筆を自由に走らせる。その間、中城教諭は参加者の間をゆっくり歩いては、ときおり質問に答えていく。

     「影の部分を意識してみましょう」と、途中でモデルに当てた明かりを落とすと、陰影がくっきりとした。参加者は約2時間で計10ポーズほどを描き上げた。「人物が描ければ何でも描けますよ」

     このデッサン教室は年7回、土曜日の午後2時から4時まで開かれている。開催日に都合がつかない場合は、別日程で行われる卒業生や高校生向けの「共立デッサン会」に参加することもできる。

    • 「美術科父母デッサン教室」を受け持つ中城芳裕教諭
      「美術科父母デッサン教室」を受け持つ中城芳裕教諭

     共立デッサン会の歴史は古い。およそ半世紀前、近隣の美術教師が集まり、勉強会として実施していた「玄木(げんぼく)会」が始まりだという。会場は、同校の近くにあった文房具メーカー「サクラクレパス」の社内会議室だった。中城先生が34年前に代表を引き継ぎ、同社移転に伴って会場を共立女子校に移した。それを機に、美大進学希望の生徒や卒業生向けに形を変えたのが、現在に続く共立デッサン会だ。

     やがて、生涯学習の大切さが世間で認識されはじめ、21年前に保護者を対象とした美術科父母デッサン教室も生まれた。「もう16~17年前から通っています」という卒業生の母親と叔母が話す。「娘が美術部ということもあり、デッサンに興味があって参加したのが最初です。ヌードモデルを対象にデッサンを描くのは、非日常的で面白い体験です。人物の曲線を観察するのは毎回新鮮ですね」。また、「こういった経験をすることで、私たちも学校を身近に感じることができます」と話した。

     10年以上参加している卒業生の父親は「娘が通う学校を見てみたいという気持ちから、参加しました」と話した。今では、自身の作品を展示する個展を開くまでになったという。

     娘の学校について理解を深めたいという思いで「デッサン教室」に通い始める保護者が多いが、学びが深まるにつれ、自分自身の趣味として打ち込むようになるようだ。

    生け花が取り持つコミュニケーション

    • 生徒一人一人がアドバイスを受けられる「保護者向け華道入門講座」
      生徒一人一人がアドバイスを受けられる「保護者向け華道入門講座」

     保護者向け華道入門講座では、池坊の近藤聡美講師が手ほどきをした。この日の花材は、ヒマワリ、アレカヤシ、ダテフォリアの3種類。20人ほどの参加者は、近藤講師から説明を受け、生け方のお手本を見た後、花とはさみを手に取った。

     参加者が一通り生けた後、近藤講師から、それぞれの作品に講評がある。「もう少し風の通り道を空けてあげましょう」。草花の間を少し空けると、生け花の表情ががらりと変わり、参加者から感嘆の声が上がった。

     同校ではもともと放課後に生徒向けの華道講座を開いていたが、保護者からも講座を体験したいという声が多く寄せられ、保護者向け華道入門講座が始まった。講座の募集はWEB申し込みの先着20人で、定員は瞬く間に埋まるとのことだ。年間を前期と後期に分け、月1回程度開催している。

     華道を習っている高2生の娘を持つ母親は、「簡単そうに見えて、こんなに難しいものだったのかと思いました。華道だけでなく、娘のことも理解が深まったように思います」と話した。

     ほかにも、「他の学年の保護者と話ができる場になっている」という声や、「他の流派を習っている娘と、それぞれの流派を組み合わせた生け花も楽しめる」といった声もあり、さまざまなコミュニケーションのきっかけとなっている。

    講座通して教育理念への理解を

    • 「礼法講習会」では小笠原流の礼法が学べる
      「礼法講習会」では小笠原流の礼法が学べる

     7月と12月に2回ずつ、無料で実施される「礼法講習会」も人気が高い。今年で4年目だが、7月は100人の募集に対し、応募が殺到したため、特別に2日間に分けて実施した。父親の参加者も数人いたそうだ。

     内容は、「道徳」の授業で生徒に指導している礼法の授業を保護者向けにアレンジしたもの。7月の講習は、保護者から要望の強かった弔事がテーマだった。仏式と神式の葬儀の違いやマナー、袱紗(ふくさ)の扱い方など「弔事の拝礼」について、講師の大島容子先生から小笠原流の礼法を学んだ。大島先生は「礼法の基本は、おもてなしを形にしたもの。目上の方だけではなく、身近な大切な人をもてなすためにも必要」と話した。

     これらの保護者向け講座を設けた理由について、今井利夫教頭は「単に保護者の方に教養を高めてもらうためというだけでなく、本校の教育理念を理解してほしいということなのです」と話す。「本校は日本文化を大事にしてきた学校です。生徒には、日本文化を理解し、身に付けた上で、グローバル社会で活躍してほしい。そうした本校の教育を、保護者、家庭にも理解してもらい、一緒に推進していきたいのです」

     保護者向け講座は、教育理念を知ってほしいという学校の思いと、子供の通う学校の様子を知りたいという保護者の思いがマッチして生まれたものだが、それは当初の目標を超えて、保護者同士、あるいは親子のコミュニケーションを深める場としても発展した。同校は、今後も保護者向け講座を増やしていく予定だという。ますます文化への理解、共感を通じた教育の礎が固まっていくことだろう。

     (文:いちじく舞 写真:中学受験サポート、共立女子中学高等学校提供)

    2017年09月06日 15時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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