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    地域を巻き込んだ「エシカル」な学院祭…玉川聖学院

     この秋行われた玉川聖学院中等部・高等部(東京都世田谷区)の第55回学院祭では、これまで生徒が学び、広めてきたフェアトレード(公平な貿易)の理念に、エシカル(倫理的)な商品を扱う地元の定期市「くらしの天然市場」が共感し、同校の正門前で「第1回 自由が丘エシカルFESTA2017」を開催した。学校と地域企業との共同開催だ。生徒らは「商品には、フェアトレードやオーガニック、震災支援、パラリンピック支援など、貢献の気持ちが込められています」と話し、同校の教育理念であるキリスト教精神を発揮していた。

    授業で学んだフェアトレードを広めたい

    • 学校正門前で「自由が丘エシカルFESTA2017」が同時開催
      学校正門前で「自由が丘エシカルFESTA2017」が同時開催

     フェアトレードとは、途上国の生産者に公正な賃金や労働条件を保証する価格で商品を継続的に購入・消費して、途上国の自立や環境保全を推進する仕組みで、新しい形の国際協力として注目されている。同校がフェアトレードについて最初に授業をしたのは2012年(平成24年)。高2の選択授業「国際教養」で、フェアトレード推進企業として知られるイオントップバリュの社員を招いて講演してもらい、以来、毎年継続的に学んできた。

     学院祭実行委員長の佐藤史佳さんは、校外での勉強会にも参加。「ワークショップで、途上国と先進国の格差を実感しました」という。フェアトレードを知ってもらうため、学院祭での出し物も工夫した。フェアトレードの麻ひもを使ったミサンガを作ると玉川聖学院オリジナルパッケージのフェアトレードチョコレートがもらえるブース、フェアトレードの原料を使用しているアイスクリームの販売、フェアトレードとオーガニックのW認証のTシャツ作製・販売を行った。

     佐藤さんは、「フェアトレードという仕組みを多くの人に知ってもらいたい。学院祭で多くの人に発信できたのが、とてもうれしかった」と振り返る。

    地域を巻き込んだ学院祭に発展

    • 玉川聖学院オリジナルパッケージのフェアトレードチョコレート
      玉川聖学院オリジナルパッケージのフェアトレードチョコレート

     さらに、フェアトレードについて同校の生徒がプレゼンテーションを行った「オーガニック ライフスタイル EXPO」で、フェアトレードやオーガニックなどエシカル(倫理的)な商品を販売する定期市「くらしの天然市場」を主催する前田剛さんと知り合ったことがきっかけで、学院祭に合わせて同校正門前で「第1回自由が丘エシカルFESTA2017」を開催する運びとなった。前田さんが代表を務めるオーガニックコットン専門店「メイド・イン・アース」をはじめ、自然食品店、天然素材のスキンケア商品店、ハーブティーやアロマセラピーなどの店から、地域に根ざした自然エネルギーの供給を目指す「市民電力」や国際協力NGOまで11店のブースが並んだ。

     「自分たちの購買行動を変えて、エシカル(倫理的)な商品を選ぶだけで、消費者だけでなく、生産者の幸せや環境保全につながります。玉川聖学院の生徒たちとこうしたテーマで共感でき、今回の開催となりました」と前田さんは説明する。各ブースには学院祭に訪れた多くの保護者や受験生などが立ち寄り、にぎわっていた。

    人とつながり、自ら学んでいく生徒たち

     国際教養の授業にフェアトレードの学びを取り入れた社会科の高橋純司教諭は、「生徒をいろいろな大人とつなげていくのです。すると、気づいた子はどんどん自分から学んでいきます」とほほ笑む。高橋教諭が、会いたいと思う大学の先生やジャーナリスト、映画監督や弁護士など、さまざまなプロフェッショナルに出張講義を依頼。生徒たちは貴重な体験談からヒントを得て、自ら学んでいくという。フェアトレードも選択授業で取り上げた一つだったが、学院祭をはじめ学校全体で取り組むテーマにまでに発展した。

     学院祭に来ていた卒業生も、「国際教養の授業が自分の人生に大きく影響しました」と口々に話す。OGの首藤祐希さんは、「(国際教養の授業で)国際問題に触れて、平和のために自分はどうしたらいいのだろうと考えるようになりました。ボランティアに参加して、アジアを学びたいと思うようになり、現在は大学の日本・東アジア文化学科で学んでいます」と話した。同じくOGの大宮萌さんは、「国際教養の授業でショックを受け、ボランティアに参加したり、講師だったイラク支援ボランティアの高遠菜穂子さんの本を読んだりして学びを深め、今は現代社会学科で学んでいます」と話していた。

    体験プログラムを通してキリスト教精神を学ぶ

    • 「世界をつなげる心を育てる」と話す安藤理恵子学院長
      「世界をつなげる心を育てる」と話す安藤理恵子学院長

     学院祭で生徒や卒業生に接すると、他者とつながろうと積極的に行動する女性に育っていることが感じられるが、安藤理恵子学院長によると、それには同校のキリスト教育がベースにあるという。

     「座学よりも、人と出会い、その人に関心を寄せて学んでいく体験的な学習のほうが女子の学習意欲を刺激します。本校の豊富な体験プログラムを通して、生徒たちは自分の可能性を見つけていきます」と安藤学院長が説明するように、生徒たちは中等部から障害者施設や高齢者施設を訪問するプログラムを経験する。

     「同じ国の中にも異文化はあります。最初は、障害者や高齢者とどう接したらいいのかわからない。でも、自分の存在が、他者を笑顔にし、時には涙と共に喜んでもらえる。そんな体験を通して、自分が世界に必要な存在であることに気づき、神に愛されているかけがえのない自分であることを再認識します。そして、みなそれぞれ違っているから素晴らしいと気づくことを通して、人と共に生きるための自分の使命を発見していくのです」(安藤学院長)

    何かに貢献したいと当たり前のように思う

     学院祭の会場をまわると、あちこちの出し物に、人と人がつながるというテーマが共通しているように感じた。

     体育館では障害のある人とつながろうと、元・車いすバスケットボール日本代表キャプテン根木慎志さんによる、車いすバスケットボールの実演と体験が行われた。参加した滝澤みこさん、溝口萌音さんは「障害のある方にどう向き合ったらいいのか最初は分からなかったけど、根木さんは明るくて何事も前向きにチャレンジしていてすごい。障害があるとかないとか関係なく楽しめて、パラスポーツの素晴らしさを感じました」と口をそろえた。

    • 韓国語で「たませい」と書かれたTシャツは、復興支援のため熊本のメーカーに発注した
      韓国語で「たませい」と書かれたTシャツは、復興支援のため熊本のメーカーに発注した

     チヂミとチャプチェを販売する高2のクラスでは、韓国の人たちと、そして被災地熊本の人たちとつながろうとしていた。韓国の交換留学生が同校に来たこと、韓国への修学旅行を前に、韓国の人たちへの思いがあった。また、クラスで作ったTシャツは、復興支援のために熊本のメーカーに発注したという。

     このクラスの光常花音さんは「Tシャツひとつをとっても、何かに貢献したいという気持ちが当たり前のように一人ひとりにあるのです。私は高校から入学しましたが、みんな外に目を向けていて、前の学校との意識の違いに驚きました。本当に楽しいです」と目を輝かせた。

     ほかのクラスでも、学院祭Tシャツは被災地の熊本や仙台のメーカーに発注し、売り上げの10%を寄付しているという。

     「私たちは“世界をつなげる心を育てる女子教育”をキャッチフレーズにしています。自分と違う人との間に壁をつくるのではなく、人と人とをつなげる道を選んでほしいのです。それにはエネルギーが必要だし、人の目を気にしていたらできない。神様から愛されているという縦軸の価値観が必要なのです。自分の中に素晴らしいものがある、他と比較する必要はない、何があっても自分は大丈夫だという本当の安心感があると、人を差別せず大切にしていく勇気を持つことができるのです」(安藤学院長)

     学院祭のテーマは「Change Ourselves」。実行委員長の佐藤さんは、「世界に目を向けて、私たち自身が変化することで、平和への一歩につながれば」と祈りにも似た気持ちを語っていた。

     これまでの授業や学院祭で、さまざまな人たちとつながって、心に変化が起こりつつある生徒たち。その変化はたとえ小さくても、日本そして世界の平和につながっていくのではないだろうか。

     (文と写真:小山美香)

    2017年11月09日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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