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    新設「高校生版MBA」で在学中の起業目指す…郁文館

     社会で必要とされるスキルを教育に取り入れてきた郁文館夢学園(東京都文京区)は、2018年度から、国内で初めて高校生向けに起業を指導する「高校生社長講座」を開講する。同時に、中学生全員を対象に、お金に関して3年間学ぶ授業も始める。高校生版MBA(経営学修士)プログラムともいえる同講座のねらいを、学園常務理事で入試広報室長の西野聖司氏に取材した。

    日本社会の起業環境を補う

    • 常務理事・入試広報室室長の西野聖司氏
      常務理事・入試広報室室長の西野聖司氏

    ――「高校生社長講座」とは、一体どのようなものですか。

     2018年4月に入学する高校1年生から、単位に認定される授業カリキュラムとして、高校の3年間、選抜者を対象に実施します。科目名は「高校生社長講座」ですが、校内では「起業塾」と呼んでいます。選抜制で1学年40人を予定しています。高校3年次の会社設立を目指し、実際の投資ファンドとも連携します。この講座のゴールは、人材を育てて日本の起業環境をつくり、欧米レベルに追いつき、上回ることです。

    ――日本の起業環境は整っていないのですか。

     2017年版「中小企業白書」の「起業意識の国際比較」を見ると、調査対象となっている5項目のすべてで、日本は先進5か国中、最低という結果でした。なかでも「周囲に起業家がいる」「周囲に起業に有利な機会がある」「起業するために必要な知識、能力、経験がある」の3項目が低い。これは個人の問題ではなく、日本社会が持つ課題です。この足りない部分を学校が補って先進国を上回るレベルに整え、起業家としての生徒の能力を開花させたいと考えました。

    ――渡邉美樹理事長自身も、まさに起業家ですね。

     そうです。それが、本学園で起業人材を育成するうえでの強みです。「高校生社長講座」のカリキュラムには、渡邉理事長自身による講義も組み込んでいます。また、他にも著名な起業家を多数、講師として招く計画があり、先人たちが手探りで学び取ったことを、これからの時代を生きる生徒たちに伝授してほしいと考えています。

     日本は少子高齢化の一途をたどり、この先、生産人口が減少していきます。経済再生や地方創生を実現するために、若い世代に起業のノウハウを伝えるべきだと感じています。本学園が支援することで、生徒たちは手探りの状態よりも5年、10年早く成長できるでしょう。

     本学園には経営者の親を持つ生徒も多数います。事業の継承もまた、日本社会にとって重要な課題です。最近の傾向として、親が経営者であるかどうかにかかわらず、将来、社長になりたいという生徒が少ない。これも課題だと思います。保護者のみなさんが、我が子の将来を思い描き、どんな教育が必要かと考える時、その期待に応えられる学校でありたいと考えています。

     受験生や在校生の保護者世代はビジネスの最前線で活躍しており、すでに仕事で英語が必須となっている職場も多いと思います。本学園でも英語教育には力を入れていますが、これからの時代、その次に何が必要か。その答えの一つとして「高校生社長講座」に注目してもらえるのではと思っています。この講座は、郁文館高校と郁文館グローバル高校の両校に開かれたカリキュラムです。

    ビジネス教育を積み上げ、満を持しての開講

    • 文化祭の模擬店で、会社の設立から解散までを疑似体験する
      文化祭の模擬店で、会社の設立から解散までを疑似体験する

    ――新しい取り組みですが、生徒の保護者の受け止め方はどうですか。

     本学園は、「父親がすすめる学校」「お父さん()れしてもらえる学校」と言われることが多々あります。たとえば、「高校生社長講座」では、渡邉理事長の講義に加え、アクティブラーニングなども多く展開する予定です。100万円の模擬投資を行ったり、起業家の事例研究を行ったりします。ある時はコンビニに出かけ、冷蔵庫に並ぶ商品ごとのスパン(陳列幅)や、店内の動線などに着目し、その意味を探ることもします。こういったカリキュラムをすぐさま理解し、共感してくれるのは、父親の方が多いと感じています。

    ――指導方法やテキストはどのように準備しているのでしょうか。

     本学園には、「高校生社長講座」の開講に至るまでに積み重ねてきたものがあります。その一つが、十数年続けてきた「起業体験プログラム」です。たとえば文化祭に模擬店を出す際、事業計画書を作り、社員を募り、株式会社を設立・運営し、解散するまでを疑似体験します。生徒へのサポートを通じて、教員たちにもPL(損益計算書)、BS(貸借対照表)、キャッシュフローを理解する者が増えています。

     本校の文化祭には5000人の来場があるので、当然、収益は上がります。売り上げを上げる努力は必要ですが、マーケットを確保する努力は要らないのです。そこで、もう一歩進めたのが、「アントレプレナーシッププログラム」です。2016年4月にグローバル高校1年生のクラスでスタートしました。生徒自身がビジネスモデルを考え出します。BtoB(企業向け事業)でも、BtoC(消費者向け事業)でもいいのです。4月から準備し、秋に校外で実践します。来場者が多く、必ずもうかる文化祭とは前提条件が異なります。昨年は広告を入れたノートの販売や、埼玉の特産品を販売する店舗などの事例がありました。

     このように教員にとっても生徒にとっても、ビジネスプランを考えることは、本学園では普通のことになってきました。新しくスタートする「高校生社長講座」は、満を持しての開講と言えます。現在、経験を積んだ教員が、春の開講に向け、オリジナルテキストを作成中です。

    中学でもお金について学ぶ

    • 高校生社長講座では、渡邉理事長が毎月、教壇に立つ
      高校生社長講座では、渡邉理事長が毎月、教壇に立つ

    ――中学でも新しいカリキュラムをスタートさせますね。

     高校からの社長講座を見据え、中学ではお金について学びます。お小遣い帳をつけている生徒はいるでしょうが、PL、BS、キャッシュフローでお小遣いを捉えることを覚えてもらい、また、たとえば複利でお金を借りるとどうなるか、などについて学びます。

    ――中高の6か年を合わせて、ビジネススクールに近い教育になるのでしょうか。

     渡邊理事長は「経営者とは真っ白なキャンバスに絵を描く人のこと。社員とはその人の生き様に共感して仲間となり、一緒に夢をかなえる人のこと」と話します。本学園では起業という手段を教えるのではなく、自分の人生を自由に描くこと、つまり夢を描き、かなえることを最終的な目的としています。手段を伝授するだけではありません。目的と手段、言い換えれば心と科学をバランスよく習得します。

     教育改革という言葉がよく聞かれますが、英語教育やグローバル教育、アクティブラーニングなどについては、本校では既に対応が終わりました。夢学園の夢教育は、深化し、進化し続けています。

     「文化祭の起業体験があるから受験を決めました」という保護者の声も聞かれます。「高校生社長講座」は、そういった保護者の声の延長線上にもあるのです。

     (文と写真:水崎真智子 一部写真:郁文館夢学園提供)

    2017年10月31日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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