文字サイズ
    中学受験サポートに協賛する会員校の特色や、会員校からのお知らせなどを掲載しています。

    学年超えて激論、白熱の放課後ゼミ…浦和実業

     浦和実業学園中学校・高等学校(さいたま市)で昨年から、中学生から高校生まで学年の枠を超えて、生徒有志が自由討論する「浦実ゼミ」が開催されている。放課後に集まった生徒たちは、自主的に司会や討論ルールを決め、白熱する議論を交わしている。生徒たちのために、この“知性の競技場”を開いた国語科の小池克弥教諭にインタビューした。

    生徒たちの考えに「発表の場」を

    • 「浦実ゼミ」について語る、国語科の小池克弥教諭
      「浦実ゼミ」について語る、国語科の小池克弥教諭

     「浦実ゼミ」は、国語科の小池克弥教諭が、生徒有志を募って2016年5月から開催している自由討論会だ。学校の正規カリキュラムではないが、学年の枠にとらわれず、中学生から高校生までの幅広い参加者が放課後の約2時間、議論を楽しむ。早くも大学のゼミのような自主的な研究と発表の場になっているという。

     「そもそものきっかけは、一昨年、生徒に『慶応大学を受験したいから、小論文を見てほしい』と言われ、添削指導をしたことでした。彼はクラスであまり目立たず、活発に話す方ではなかったのですが、何度か小論文の指導をしているうちに、かなりの議論好きだということが分かったんです。普段あまり話さない子でも、いろんなことを考えているし、発表の場を与えれば意外と話すんですね。それで、生徒を集めて討論会のようなものをやってみようと思いました」

     「大学のゼミナールのようなもの」をイメージし、テーマと開催日時を決めて参加者募集のポスターを校内の数か所に貼り出したところ、10人ほどの高校生が集まってきた。「最初なのでどうなるか不安だったんですが、どの生徒も自分なりに準備して、自分の意見をしっかり言ったことに驚きました。3回目くらいから中学生が参加するようになって、そこからさらに面白くなりましたね。中学生は高校生の話を聞いて、すごいなと刺激を受ける。また高校生も中学生の意見に、なかなかやるなと感じているようです」

    司会やルール、生徒が決めて自主的に運営

    • 「人間と自然」をテーマとした2017年度第1回のゼミ
      「人間と自然」をテーマとした2017年度第1回のゼミ

     スタート時は、「電子書籍と本の将来」「貧困について」など大学入試問題で取り上げられたものを、小池教諭がテーマとして出していたが、徐々に生徒の方から「こんなテーマを取り上げてほしい」と提案してくるようになった。

     その一つが、昨年10月の4回目のゼミで論じた「人工知能(AI)に人権は必要か」というテーマだ。試しに討論会の司会も生徒に任せてみたところ、その生徒は、テレビの討論番組「朝まで生テレビ!」を見て、ジャーナリスト田原総一朗氏の司会を参考にし、張り切って準備してきたという。

     この時は、浦実ゼミ発足時のメンバーだった卒業生もスペシャルゲストとして参戦し、中1から大学生までが、「AIが感情や意思を持ったら、人間と同じ権利を与えるべきか」「人間にとって脅威になる」「そもそもAIが感情や意思を持つことは問題が多い」など、白熱した議論を交わした。

     「この頃から、まさに生徒主体のゼミになりました」と小池教諭は振り返る。「毎回参加する生徒も多く、自分たちで討論会を作っていこうという意識が高まっていきました。『討論が混乱したら、発言は挙手制にする』『持ち時間は1人1分』など、自分たちでルールを決めていきましたね」

    一つのテーマを巡り、知識を共有する

    • 毎回、激論が繰り広げられる
      毎回、激論が繰り広げられる

     スタートした昨年は不定期で計5回開催したが、生徒から「もっと開催してほしい」という声が上がり、今年度は月1回のペースになっている。今年7月に「SNSの功罪」というテーマを論じたゼミでは、中2から2人、中3から2人、高2から6人が参加した。

     「情報のスピードが速い。なんでもすぐに探せて便利」「自分の気持ちが率直に表現できるし、他人の意見も聞ける」「海外の人と日本にいながら交流できる」などのメリットが論じられる一方で、「デマもあるから必ず裏を取らないといけない」「人間関係のトラブルになりやすい」「依存する危険性がある」といったデメリットも確認し合った。

     同校は、フェイスブック、ツイッター、LINEなどのSNSを使うことを基本的に禁止しているが、この日の討論は盛り上がった。生徒たちにとって、やはり大きな関心事なのだろう。

     小池教諭は、「私たちが思っている以上に、生徒たちはSNSの良い面、悪い面をちゃんと理解していることに感心しました。一つのテーマについて、どうしたらいいのか、みんなが意見を出し合うことで、多くの知識を共有することもできます。ですから、今後は生徒にとって興味が薄そうなテーマも取り上げていきたいですね」と話した。

    生徒が自らを変え、可能性を広げる場に

    • ゼミ後はテーマやキーワードをリポートにまとめる
      ゼミ後はテーマやキーワードをリポートにまとめる

     型にはまらないゼミだけに、「思いもよらない方向に進化している」と小池教諭は話す。「印象的だったのは、ゼミをきっかけに高3の生徒と中1の生徒の交流が生まれたこと。登下校をともにする姿を何度か見かけましたが、ゼミのテーマについて話をしていたようです」

     学年を超えた絆が生まれるだけではない。文系と理系、文化系部と体育会系部など、普段は交流の少ない生徒同士が話し、まったく違う考え方に触れることで、彼らの内面に思いもよらない「化学反応」が起きるという。

     「ゼミをきっかけに、自分自身の中で何かが変わったという生徒もいます。その生徒は、見違えるように受験勉強に力を入れ始めました。授業で活発に話せるようになった子も多いです。自分の考えを言えるだけでなく、他人の意見をきちんと聞けるようになります。自主性が養われ、発想力、表現力がどんどん伸びていくことに驚きを覚えます」

     このゼミに参加し、中学生はさまざまなテーマを通して、将来への視野を広げてきた。高校生は「大学のゼミもこういうものだろうか」と思いを巡らせながら、大学進学のモチベーションを高めていることだろう。物事を深く考え、自分の意見を持ち、それを伝えることは、社会に出てからも必要になる力だ。浦実ゼミは、生徒たちが将来に向けて自分の可能性を広げる“知性の競技場”といえるだろう。

     (文と写真:石井りえ 一部写真:浦和実業学園中学校・高等学校提供)

    2017年09月13日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    おすすめ
    PR
    今週のPICK UP