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    伝統に基づくリーダー育成と新たなグローバル教育…成城

    • 成城の教育を語る栗原卯田子校長
      成城の教育を語る栗原卯田子校長

     独自のグローバル教育を展開する成城中学校・高等学校(東京都新宿区)。それを主導してきたのが栗原卯田子校長だ。都立小石川中等教育学校校長からの転身が大きな話題になってから丸3年がたつ。

     今春、本校のグローバル教育の柱であるエンパワーメント・プログラムの1期生を卒業させた栗原校長に、現在の状況と今後の展望を聞いた。


    新たなグローバル教育の取り組みと成果

    • 研修後も交流が続くエンパワーメント・プログラム
      研修後も交流が続くエンパワーメント・プログラム

     エンパワーメント・プログラムとは、米国カリフォルニア大学の学生を招いて5日間の校内研修を行うもの。5人ほどの生徒と米国大学生1人がグループを作って、英語のみでディスカッションやプレゼンテーションなどを行う。大学生は生徒の家庭にホームステイし、まさに寝食を共にする。

     「帰国後も、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などを通して交流が続くことが多いようです。7か月後の本校卒業式で、式場にその米国大学生がいて驚いたこともあります。個人的に来日し、当時の生徒の家にホームステイしているというのです。プログラムの終了後も、こうした交流が継続していくということは、私も予測していませんでした」

     エンパワーメント・プログラムへの参加は希望者のみだが、他の生徒への影響も大きいという。

     「米国人大学生を受け入れている友人と最終日に東京を案内したり、一緒に過ごしたりするだけでも、大きな刺激になります。進学先を日本に限らず考える生徒が出るなど、さまざまな影響が見受けられます」

     本校ではエンパワーメント・プログラム以外にも、オーストラリアや台湾への海外研修、国内でのグローバル講演会など、さまざまなグローバル教育プログラムを用意している。また、校外の事業に参加する生徒も出てきた。

     「日米交流団体であるジャパン・ソサエティーのジュニア・フェローに応募し、日本代表の10人(うち2人は震災被災地から選抜)に選ばれた生徒もいます。プレゼンテーションや仮説を立てて検証する能力が評価され、狭き門を突破しました」

    伝統に基づいたリーダー力を向上させる男子教育

    • 全国に先駆けて始まった伝統の臨海学校
      全国に先駆けて始まった伝統の臨海学校

     陸軍士官学校の予備校として1885年(明治18年)に創立された歴史を持つ男子校に、「グローバル時代のリーダー育成」を目指して新風を吹き込んでいる栗原校長だが、「伝統教育は捨てがたいと、日々感じています」と言う。

     長く公立の共学校で教員を務めてきたが、公立にはない伝統男子教育の良さを実感しているのだという。

     「本校には、全国に先駆けて林間学校や臨海学校を行った歴史があります。中1の臨海学校に高2が補助員として同行し指導するのが伝統になっているのですが、以前、廃止するか否かという議論があったと聞いています。事故がないように実施するために非常に手がかかり、教員の負担が重いというので見直しが検討されたようです。私が赴任する前の話ですが、存続することになって、本当に良かったと思っています」

     入学したばかりの中1にとって、頼りがいのある先輩との共同生活は、自分が高2になった時の姿を考える良い機会だ。

     「それ以上に、後輩の指導を任される高2への教育効果が高いと感じています。責任を持って後輩を引っ張っていく経験は、生徒を大きく成長させるからです。こうした男子校の伝統行事には、最近、強く求められるようになっているリーダー力の向上に役立つものが多いのです」

    変わらない教育の本質と変化に対応できる「成城の教育」

     伝統教育とグローバル教育との両輪で新たな「成城の教育」を目指す本校だが、やはり気になるのは大学進学にどう効果が出るかだ。

     「今年の進学実績を見ると、理系、文系ともに、グローバルにかかわる分野が伸びているのを感じます。現役で東京工業大学や東京海洋大学、慶応大学や上智大学に合格する生徒が増え、これまで志望する生徒が少なかった国際基督教大学に2人の合格者が出たのは、グローバル教育の成果だと思っています。学力が上がっただけでなく、志望の傾向が少し変わってきたように思います」

     これまでは、国立コースにいても、いざ受験となると安全志向で私学受験に転じる生徒が多かった。今年は志望を変えずに国立を目指す生徒が増えたという。私学志望者も、やみくもに多くの大学、学部を受験するのではなく、本当に行きたいと思えるところに絞る傾向にある。

     「東大に入った生徒は、センター試験で手応えがあったためか、私大受験をやめ、一本に絞って合格しました。学校としては、生徒が受験先を減らすと合格校の延べ数が減り、進学実績が低く見えるということがありますが、実際には、現役進学率がここ近年上昇しているといった成果も出ています」

     今後の説明会などでは、進学情報に合格実績だけでなく、実際に生徒が進学した数を表示するなどの工夫をしたいという。

    自発的な学習習慣をつける…自学自習

     栗原校長が学校運営で最も気をつけているのは、成績下位の生徒を支えることだという。時には、提出物を出さない中学生徒を校長自ら指導することもある。

     「『あなたには力があるのだから、もうそろそろやったらどう』と励ましたり、出さないのか、それとも出せないのかをはっきりさせるために、どこに問題があるのか考えさせたりします。いちばん大切であり難しくもあるのは、中学生のうちに自分で勉強する習慣を作るように仕向けることです」

     自学自習というのは、創立以来の教育目標でもある。

    • 自学自習しやすい環境を整えている自修館
      自学自習しやすい環境を整えている自修館

     「自修館という自習室の開館時間を朝7時半から夜7時までに延ばしたり、チューターを常駐させたりと、自学自習しやすい環境を作っています。チューターは、早稲田など近隣の大学から招いていますが、大学受験の感覚が残っていた方がいいので、一般受験で合格した、なるべく若い学生をお願いしています」

     70席の自修館に加え、教室や図書室、カフェテリアも開放して、生徒の自発的な学習を支えている。友だちや先輩が自習する姿を日常的に目にすることで、自発的に勉強する習慣がつく相乗効果もあるという。

     「卒業する生徒の保護者を対象としたアンケートの中で、新中1生の保護者に対するメッセージをお願いしたところ、『入学時には、やる気スイッチが入る時があるのだろうかと心配しましたが、大丈夫。スイッチが入る時がちゃんとありました』という回答がありました。本校の生徒には、のんびりした子が多いのですが、本人の自覚があれば、結果は後から必ずついてきます」

     2020年には大学入試の大幅な改革が予定されているが、「あわてる必要があるとは思いません。私たちがしっかり教育をし、そこに生徒自身の主体性が加われば、改革がどのようなものになっても太刀打ちできるはずです。入試の改革だけでなく、世界情勢を見ても、今の子どもたちは大変な時代にいるなと思うことはあります。それでも、人間としてしっかりした土台ができていれば、個々に向いたチャレンジの場が必ずあるはずです」と、栗原校長の信念に揺らぎはない。

     (文と写真:織江理央 一部写真提供:成城中学校・成城高等学校)

    2016年07月14日 05時40分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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