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    ICTで進む授業改革…足立学園

     足立学園中学校・高等学校(東京都足立区)が授業改革を本格始動させて半年になる。授業の形はアクティブラーニングの考えを基本に、大きく変わりつつあるという。その推進力となっているのがICTの活用だ。先行して電子黒板などを導入した中学2、3年に続き、今後、全学年に広げていく予定だという。寺内幹雄校長と井上実教務部長に改革の「今」を取材した。

    生徒の可能性を信じ、主体的に学ぶ授業へ

    • 寺内幹雄校長
      寺内幹雄校長

     教師が一方的に知識を教え込むのではなく、生徒が主体的に考え、行動し、問題を発見、解決していく。こうしたアクティブラーニングの考えを基本に、足立学園は昨年から本格的に授業改革を行っている。もちろん、入試改革やグローバル人材の育成といった社会の流れに対応しての改革だが、さらに根底には、「授業が面白くない」という寺内校長の直感があった。

     寺内校長はインタビューで、「先生の話を聞いて問題文を穴埋めするような授業が生徒にとって面白いでしょうか? それで主体的に学ぼうという姿勢が育ちますか?」と問いかけた。また、自らの高校時代について、「たとえば国語の授業では、一人の作家を長期間深掘りし、試験のかわりに『太宰治論』をテーマに原稿用紙10枚以上の小論文を課された」と振り返った。

     「共通1次試験やセンター試験が導入されるより前の話ですから、そこに戻ろうというわけではありませんが、生徒自ら考え、論述する力を磨く授業を、現在にふさわしい形で実現したい。入試を踏まえつつも、子どもたちの本来的な能力を伸ばすこと、率先して学び、自分の生きる指針を持てるような授業を確立したいんです」と熱く語った。

     また、一昨年まで授業改革の準備を進める中で、教師たちの背中を押したある研究授業の様子を語った。

     高校の数学、生物の教師に、試みに研究授業の10~20分を英語で講義してほしいと頼んだ。数学は大学レベルの空間図形がテーマ、生物はゲノム編集から生命倫理と今日的なテーマを扱い、いずれもかなり高水準の内容だった。生物の授業後、教員が生徒に感想を求めたところ、半数もの生徒が英語で答えたという。遺伝子操作が貧富の格差につながるのではという問題意識を述べる生徒までいたという。

     この授業によって、寺内校長をはじめ多くの教員が生徒の潜在力の大きさを再認識したという。「彼らの意欲はもう先生を超えているじゃないかと。その可能性を信じ、こちらも思い切っていこうと思いました」と話す。

    授業をアクティブラーニング化

    • 井上実教務部長
      井上実教務部長

     では、具体的にどのような授業が展開されているのだろう。8月に行われた「授業改革の実践報告会」を例に、教務部長の井上実教諭が説明してくれた。いずれの教科も、アクティブラーニングを実現するカギはICTの活用だ。

     まず、国語では、「課題文を読む」「意見を話す」「意見を聞く」「意見を書く」の4技能向上を目標としている。中2、中3とも高校で扱う評論文や小説を取り上げ、グループワークで授業を進めることが試みられている。また、ICTを活用し、「xSync」などの学習支援ソフトで、課題文の配布や解答の収集・添削を行っている。文中で対比関係にある語句を異なる色でマーキングして視覚化するなど、さまざまなノウハウも蓄積しつつあるという。

     数学は、グループワークによる学びにシフトしつつある。数学担当でもある井上教諭は「問題の解き方や概念を他の子に教えることで、『分かる』が『できる』にステップアップします。分からない子に理解させるために工夫も必要。コミュニケーションやプレゼンテーションの訓練にもなります」と話す。

     ICTを最も駆使しているのが英語の授業だ。たとえば、スピーチや朗読を録音し、教員へ送って添削してもらう。宿題も当日中に送れば翌日の授業までに採点結果を知ることが可能だ。ほかにも、電子黒板上での和文英訳の添削や、スライドショー機能で文が1語ずつ消えていくテキストを使った速読の練習など、さまざまな機能をフル活用している。

     理科では、学校で行うことが難しい実験などの動画を教員が用意して、解説しながら視聴させている。社会科も、地図や年表、人物写真などの図説資料を一斉配布するなど、ICTを積極的に利用している。

    ICTのメリットを全学年へ

    • ICTを最も駆使している英語の授業
      ICTを最も駆使している英語の授業

     井上教諭は、ICT導入の最大のメリットを「時間の有効活用」と語る。「教材の配布や回収が一瞬で済み、板書をノートに書き写す時間が大幅に短縮されます。配った資料をなくすおそれもありません。タブレット上で各自、書き込みやマーキングを行い、電子黒板上ですぐ一覧することもできる。こうして捻出した時間を、思考や討論に使うことができます」という。

     現在は中2、中3のクラスに電子黒板やタブレットを導入した段階だが、今後、段階的に学年を拡大して導入を急ぐ構えだ。ICTを使った授業改革は始まってまだ半年で、偏差値や進学実績などの数字には反映されていない。それでも井上教諭は、「担当する中2数学の追試者数が激減した」と効果を肌で感じているという。

    生徒と教員が高め合う

    • アクティブラーニングの考えを基本に、昨年から本格的に授業改革を行っている
      アクティブラーニングの考えを基本に、昨年から本格的に授業改革を行っている

     ICTに対する生徒の適応は非常に早いようだ。「教科書はうっかり忘れても、タブレットを忘れて来る生徒は滅多にいません。新しい形の授業にも関心が高いですね。教員の方が後れをとらないよう努力しなければいけません」と井上教諭は話す。

     もちろん教員たちもICTをはじめ教育スキルの向上に余念がない。しかも、足立学園ならではのオープンな空気が学びをサポートしてくれる。寺内校長は「元々教員どうしのコミュニケーションが良く、アイデアの共有や情報交換を、教科の枠を超えて積極的にやっています。ライバル意識もいい作用をしており、学外研修への参加も積極的です」と話す。「必ずしも、最初から優秀な教員などいません。しかし、意識や知識を高め合う環境が、教員のスキルを高める効果を発揮しています」とのことだ。

     また、「ICTについては、生徒の方がのみ込みが早い。細かい操作を彼らに尋ねることもあります」と井上教諭。生徒と教員が高め合う環境の中で好循環へと走り出した足立学園に、今後も注目したい。

    (文と写真:上田大朗 一部写真提供:足立学園中学校・高等学校)

    2016年12月28日 05時50分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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