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    進化する海外研修で世界に飛び立つ…市川

     市川中学校・高等学校(千葉県市川市)では、多くの生徒が夏休みや春休みに海外へ旅立つ。学校主催の海外研修メニューが多彩な上、国が進める「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム」やSSH(スーパーサイエンスハイスクール)海外研修などの活用を推進し、海外に目を向ける生徒たちを力強く応援しているからだ。これら海外研修の内容や体験者の受け止め方、教育効用などについて、宮崎章校長に取材した。

    帰国した生徒たちが文化祭で体験を語る

    • 宮崎章校長
      宮崎章校長

     今年の文化祭では新しい企画として、生徒たちによる留学体験の報告会が行われた。これは宮崎章校長のアイデアで、文化祭実行委員会が了承し、留学体験を持つ生徒たちが協力して実現した。宮崎校長は「外国に行っただけで終わりにしない。帰国後に体験を改めて言葉にすることで自分自身の中にしっかり根付かせるとともに、他の生徒と共有してほしかった」と意図を話した。

     登壇者の海外経験がバラエティーに富んでいることに改めて驚かされる。中学3年生から高校2年生まで、渡航先も欧米各国をはじめカンボジア、台湾、タイと多彩だ。笑いあり、涙ありの体験談は実感があって、生徒たちは引き込まれるように聞き入っていた。市川には、こうした海外での学びを身近に感じる場が数多くあり、留学を思い迷っている生徒たちも思い切ってチャレンジできるようだ。

     市川の海外研修メニューを利用したものだけでなく、官民協働で取り組む海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」での留学や、個人での留学もあって幅広い。

     報告の中で目を引いたのは「トビタテ!留学JAPAN」を活用しての留学体験。同制度の対象が大学生から高校生へ広がったことで、市川でもエントリーする生徒が増えたという。「生徒が自分でプランし、プレゼンテーションして選ばれ、留学支援を受けます。高校が窓口となりエントリーする仕組みなので、事務的な手続きなど学校の負担は増えますが、本校は自ら行動する生徒を応援する学校なので、生徒の挑戦を歓迎しています」と宮崎校長は説明した。

    年々充実する研修プログラム

    • オックスフォード大での研修
      オックスフォード大での研修

     学校主体の海外研修メニューも豊富だ。夏休みには、ケンブリッジ大学、オックスフォード大学、イートン校での英語研修や、カナダでホームステイする語学研修を実施している。春休みにも、ニュージーランドでホームステイする語学研修を行っている。

     ケンブリッジ大とオックスフォード大での英語研修は中3と高1が対象で、ともに寮に滞在して学ぶ。英語科の瀧本泰之教諭は、引率した教員が記す研修報告書の束を手に、「研修の内容は、細かなところまで年々洗練させています」と話した。

     例えば、この夏にケンブリッジ大での研修を引率した木内保太郎理科教諭によると、同大キャベンディッシュ研究所の訪問は科学史を履修済みの高1を対象とし、未履修の中3には別のコースを提案したという。科学史を学んでからのほうが研究所への理解が深まると考えたからだ。また木内教諭は「英国のアフタヌーンティーは日本の中高生には量が多いため、ランチとして体験したらいいのでは、というような提案もしました」と語った。生徒たちのことをよく知る先生ならではの改善提案だろう。

    他校の生徒と一緒に学ぶメニューも

    • 留学は語学上達だけではなく、その後の学びの大きな力になる
      留学は語学上達だけではなく、その後の学びの大きな力になる

     イートン校でのサマースクールでは、市川の生徒だけでなく他校の生徒とも一緒に学ぶ。中3から高2までが対象で、参加者は寮で生活し、男女別、能力別にクラス分けして学ぶ。市川からはこの夏、22人が参加した。中でも中学3年生2人はともに最も難度の高いクラスで学んだという。

     中学3年生の生井真菜さんが英語を本格的に学び始めたのは、中学に入学してからだという。「学校の授業のほかNHKのラジオ講座などで英語を勉強し、中3の初めに英検2級に合格しました。ハリー・ポッターシリーズを映画で見たり、翻訳でシャーロック・ホームズのシリーズを愛読したりするうちに英国に興味を持ち、その文化に触れたいと思って、8月上旬にイートン校で学びました。2020年の東京オリンピックでボランティアをしてみたいです」と話した。

     同じく中学3年生の板垣夏実さんは、幼い頃米国で暮らし、帰国後はインターナショナルスクールに通学した。小学校は英語を使う環境だった。「英検準2級は小5で取得しました。授業だけでなく24時間、英語を思いっきり使う生活がしたいと思い、研修への参加を希望しました。希望通り、19日間ずっと英語での生活ができました」と話した。

    数多い選択肢と到達目標

    • ケンブリッジ大での研修に参加した生徒たち
      ケンブリッジ大での研修に参加した生徒たち

     これらの研修に参加するには、校内の選考をクリアしなければならない。そのためにはしっかり英語を学び、一定の成績を収めることが必要だが、目標はその先にある。

     「10~20日程度の海外経験で英語力が大きく伸びるわけではありませんが、この先、英語を学ぼうという意欲は劇的に上がります。意欲あふれる生徒にどんどん挑戦をしていってほしい。市川には海外研修のメニューが多く、たくさんの生徒にチャンスがあります」と瀧本教諭は話す。

     生徒たちには海外経験の選択肢が数多く用意されている。ホームステイか寮か。他校生と一緒か市川生だけか。ケンブリッジ大研修は理系、オックスフォード大研修は文系の要素が強いので、理系か文系かで選ぶこともできるという。

     留学の希望の有無にかかわらず市川では、英検の受検を推奨しているという。帰国生は中3で準1級、高校卒業までに1級を。一般生は中3で準2級、高1で2級、卒業までに準1級の取得を目標にしている。

    40年以上にわたる国際交流への取り組み

     今やグローバル教育の重要性が叫ばれ、各校の国際交流への取り組みに注目が高まっているが、市川が海外研修やホームステイを開始したのは1970年と、かなり早かった。

     当時は1ドル360円時代で今ほど気軽に海外に渡航できる時代ではなく、研修先もアメリカだけだったが、85年からはイギリスでの研修も開始し、97年にはニュージーランド語学研修もスタート。対象を中学生にも広げた。

     その後、ニュージーランドは高校生向け、カナダは中学生向けなど、生徒の適性や時代に合わせて研修先や内容に変更を加え、現在へとつながっている。進化し続ける市川の海外研修に注目していきたい。

     (文と写真:水崎真智子 一部写真提供:市川中学校・高等学校)

    2016年11月25日 05時50分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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