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    プログラミング授業で磨く「新しい学力」…文教大付

     文教大学付属中学校付属高等学校(東京都品川区)は昨年4月から、中3生を対象に1年かけてロボットのプログラミングを学ぶ新しい実習授業を続けている。問題解決能力や論理的思考力を養い、時代が求める「新しい学力」を養うのが狙いだ。同校は、この学力観に基づいて2月1日の入試では、「みらい創造入試」と題した適性検査型入試も新たに実施する。プログラミング授業の実際と新入試について報告する。

    年間15時間のプログラミング実習

    • プログラミングの授業を新たに設計した技術の千葉悟教諭
      プログラミングの授業を新たに設計した技術の千葉悟教諭

     プログラミングの授業は2012年から中学の技術・家庭科で必修となり、20年には小学校でも必修化される。中学校学習指導要領では「プログラムによる計測・制御」として、コンピューターの基本的な仕組みや情報処理の手順、簡単なプログラムの作成などを学ぶことになっているが、授業時数は学校によってまちまちで、その内容も指導する教師の資質によるところが大きい。

     同校は、プログラミングを通して問題解決能力や論理的思考力を養うことを重視し、2017年春から中3を対象に、年間約15時間の「技術」の授業のほとんどをプログラミング学習にあてている。特徴的なのは、パソコン上でプログラミングを完結するものではなく、実際に手に取って目の前で動きを確認することのできるロボットを使ってプログラミング実習を行う点にある。

     この授業のカリキュラムを作った技術科の千葉悟教諭によると、現代は、自動ドアや駅の自動改札機、自走式自動掃除機など、自動化が進んで暮らしが便利になった反面、機械に任せっきりで理系的な思考法や、思考力が低下している。そこで、ロボットでの実習を通じて問題解決能力や論理的思考力を身に付けてもらい、目には見えないプログラムが、こうした自動化された機械を制御し、社会のインフラとして大きな役割を担っていることを体感させようと考えたという。

    ロボットの制御は試行錯誤

    • タブレットをペンでタッチすることでロボットのプログラムができる
      タブレットをペンでタッチすることでロボットのプログラムができる

     授業に使われる教材用のロボットは14台。それぞれモーターで動く二つのタイヤとアーム、小さなモニターやスピーカーも備えている。また、超音波で距離を測るセンサー、傾きを測るジャイロセンサー、色を識別するカラーセンサー、接地した圧力を測るタッチセンサーの四つのセンサーを搭載している。

     授業では3~4人で班をつくり、ロボットのプログラミングに取り組む。タブレットにダウンロードしたアプリケーションを使って、前進や回転、停止などの動きの指示と四つのセンサーの働きを組み合わせることで、自走式自動掃除機のように壁があると分かれば方向を変え、また階段の端から落ちないように制御することもできる。

     入力は、タッチペンでタブレット上の記号を並べていくだけでいい。直感的にプログラムできるよう開発された教材を選んだのは、プログラム言語の学習が狙いではなく、論理的思考力を養うことが目的だからだ。

     扱いやすい教材のはずだが、実際のプログラミングとなると、ロボットは思うように動いてくれない。たとえば、前進する、超音波センサーで距離を測る、一定の距離以内で止まる、と指示したつもりでも、壁の直前にロボットを置くと、距離を測る前に前進してぶつかってしまう。また、カラーセンサーで机の色を認識させ、机の端から落ちる前に止まるようなプログラムも、認識する色の設定やセンサーの働く適切なタイミングなどを試行錯誤しなければならない。

    発見が生まれ、進化する授業

    • 班内で相談しながら試行錯誤して、成功へと近づいていく
      班内で相談しながら試行錯誤して、成功へと近づいていく

     「設定する、試してみる。だめだったら『なぜか』と考え、違う方法を試してみる、その繰り返しをすることで、失敗してもチャレンジを重ねることや、他の人のアイデアや発想を認め、発言に耳を傾けることなどを生徒たちは学びます」と千葉教諭は話す。「実際に授業で、ロボットがミッションを達成すると教室中に拍手が起きます。大きな達成感を味わえることでしょう」

     さらに、授業の中で思いがけない発見もある。実習中、ある生徒が、ロボットのスピーカーの機能に音程を変える設定を見つけ、これを使ってメロディーを奏でたことがある。このアイデアはすぐに他の班でも試され、クラス全体に広がっていったという。

     「答えは一つではないのです。プログラミングの授業は、私が生徒の時代にはありませんでした。私が教員になってから生まれたものです。時代に学びながら 生徒と一緒により良い授業を考えていきたいです」と千葉教諭は話す。

     最近、小学5、6年生を対象に2時間ほどのプログラミング体験授業を実施したところ、タブレットの扱いに慣れている児童が多く、柔軟な発想で生き生きと楽しく取り組む姿が見られたという。彼らを後輩に迎えるときには、同校のプログラミング授業もますます進化していることだろう。

    多様な生徒迎え、「みらい」を作る入試

    • 「みらい創造入試」の導入を手がける末延昭二教頭
      「みらい創造入試」の導入を手がける末延昭二教頭

     同校のプログラミング学習は、学習指導要領で打ち出された「新しい学力観」の方向に沿う取り組みの一つだ。同校は、自ら学ぶ意欲や、思考し、判断し、表現する力を問う、この「新しい学力観」のもとに、この2月1日の入学試験で、2科目(国語・算数)と4科目(国語・算数・社会・理科)の試験に加えて、新たに「みらい創造入試」と命名した適性検査タイプの試験を導入する。

     新入試の準備をしてきた末延昭二教頭は、2005年に都内初の公立中高一貫校となった白鴎高等学校附属中学校で、適性検査の作問から実施、採点までにゼロから関わり、1期生の卒業を見届けた経歴を持つ。

     「適性検査で問うのは、知識とその運用能力ではなく、考える力と表現力です。2005年当時は、昨今話題の大学入試改革はもちろん、現在のような新しい学力観もありませんでしたが、問うている力の趣旨は同じといえます。時代背景が変わり、適性検査はますます時代の要請に合ってきたといえます」

     適性検査での解答は、主に文章で説明するスタイルなので、作問も採点も手間がかかる。それでも今回、適性検査型の新入試を加える理由は、多様な生徒を迎えたいからだ。

     「みらい創造入試」と名付けた理由もそこにある。末延教頭は「新しい学力観に沿った生徒を迎えることで、生まれる多様性が、すべての生徒の未来を創造する。学校としても新しい学力観に即応し、進化し、未来を創造していきたい」と語った。

     この「みらい創造入試」に臨むには、受験生はどのような対策をしたらよいか。末延教頭は、「子供たちには『新聞や本を読もう。分からないことがあれば調べてみよう。まとめてみよう。そしてそれを保護者に見てもらおう』とアドバイスし、保護者には『適性検査型入試は、一つの正解を求めるものではありません。塾での勉強でなく、普段から自ら学び、親子でも学ぶ受験を楽しんで下さい』」と答えるそうだ。

     公立中高一貫校を目指している受験生にも、ぜひ挑戦してほしいとのことだ。

     (文:水崎真智子 写真:中学受験サポート 一部写真:文教大学付属中学校付属高等学校提供)

    2018年01月11日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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