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    スリランカやタイでの貴重な体験…佼成女子

     「英語の佼成」と評されてきた佼成学園女子中学高等学校(東京都世田谷区)。独自の英語教育や海外留学などの成果が認められ、2014年に制定されたスーパーグローバルハイスクール(SGH)に初年度から指定された。その背景や取り組みに焦点を当てる。

    SGH発足の初年度から56校のうちの1校に指定

     SGHとは、文部科学省が全国の高校および中高一貫校を対象に審査し指定するもので、「急速にグローバル化が加速する現状を踏まえ、社会課題に対する関心と深い教養に加え、コミュニケーション能力、問題解決力等の国際的素養を身につけ、将来、国際的に活躍できるグローバル・リーダーを高等学校段階から育成する」ことを目的としている。

     審査にあたっては、SGHへの目的・目標・具体的な取り組みを記した「構想調書」を提出し、第三者委員会によるヒアリングを受ける。佼成女子の場合は「英検まつり」「英語イマージョン教育」など英語教育への独自の取り組みや、「ニュージーランド留学」「スリランカ交流プログラム」などの海外交流が高く評価され、初年度から指定校56校のうちの1校に選ばれた(3年目の現在、指定校は計123校)。

    英検1級合格者が多い理由

    • SGH事業執行責任者で事務局長の宍戸崇哲教頭
      SGH事業執行責任者で事務局長の宍戸崇哲教頭

     「SGHに指定されたのは、ほとんどがいわゆる名門校と呼ばれる学校です。偏差値で70を超える学校ばかり。うちは56~57ですから、SGHの集まりでお会いする全国の先生方に不思議がられています。その一方で、入学後の英語力の伸びが著しいことも皆さんよくご存じで、どうしてこんなに英検1級や準1級の合格者が出るんですか、どうしてこんなにTOEFLテストで高得点が出るんですか、日頃どんな授業を行っているのですか、などとよく聞かれますね」

     そう語るのは、SGH事業執行責任者で事務局長の宍戸崇哲(たかのり)教頭だ。SGH指定への推進力となった人物である。

    スリランカ交流プログラムは平和の懸け橋

     ここで、文科省が評価し、全国の先生方が不思議がる独自の「取り組み」について見ていくことにする。

     佼成女子では中学までの共通クラスが、高校に進むと五つのコースクラスに分かれる。特進文理コースの「スーパーグローバルクラス」「文理クラス」「メディカルクラス」の3クラスと、「特進留学コース」「進学コース」の2コース、合わせて五つだ。

     「文理クラス」「メディカルクラス」「進学コース」では、高1高2で「スリランカ交流プログラム」や「英国修学旅行」「英国短期留学」「中国交流プログラム」が実施される。このような施策を通じて生徒たちは国際的素養を身につけていく。

     それぞれに実りある成果を上げている施策だが、今年で4年目を迎える「スリランカ交流プログラム」の意義は大きい。

     このプログラムは、日本とスリランカの青少年が交流することで国際理解を深めることを目的としているが、スリランカの人々同士の和解と平和への貢献も果たしている。というのも、スリランカには「シンハラ」「タリム」「ムスリム」という三つの民族が混在し、それぞれ宗教・文化・歴史が異なるため、いまなお複雑に対立の様相だが、その子どもたちと生徒たちが交流することで、これまでなかった異民族同士の会話も生まれ、子どもたちの世代から対立の垣根を取り払い、和解と平和への道を歩みだそうとする動きへの一助となっているからだ。このような活動もSGH指定の大きな要因となっている。

     「特進留学コース」では1年間にわたる「ニュージーランド長期留学」が設けられている。多感な時期に長期の留学は得難い経験であり、英語力は伸びる。その一方、大学受験は大丈夫なのかという懸念は当然ある。それに対して佼成女子では予備校の講師を招き、ニュージーランドから帰ってきた生徒たちのために受験対策を講じている。今年は現役で北海道大学に合格した生徒もいた。鍛えられた人間力は抜群の集中力を発揮する。

    「スーパーグローバルクラス」はタイでフィールドワーク

    • 現地女子校と「フェドラ」見学の様子
      現地女子校と「フェドラ」見学の様子

     SGHに指定された後に新しく作られたのが「スーパーグローバルクラス」だ。このクラスは高2の夏にタイで17日間にわたるフィールドワークを行う。

     前半はチェンマイやチェンライなど北タイと呼ばれるエリアを訪れる。「レジナ・チェリ・カレッジ」という現地の女子高との交流があり、ストリートチルドレンを保護している「ニューライフセンター」や、山岳民族の子どもたちに裁縫など生き抜くための教育を施す機関「フェドラ」を見学する。

     「レジナ・チェリ・カレッジ」に通う女子高生たちは比較的裕福な家庭の子女が多く、同じ年頃ならではの夢や悩みが話題となるが、「ニューライフセンター」で保護されている子どもたちの親の多くが麻薬中毒患者であり、生徒たちは悲惨な現実を目の当たりにする。

     「フェドラ」を訪ねたときは七夕。そこの子どもたちが短冊に書いた、離れて暮らす両親の幸せを願う言葉を読んで、生徒たちは自分たちとのあまりの境遇の違いに涙する場面もあったという。

    • カレン族が暮らす村でのホームステイ
      カレン族が暮らす村でのホームステイ

     そのようななかで人気のアクティビティーが、少数民族・カレン族が暮らす村での2泊3日のホームステイだ。

     「日本にいるときはゴキブリ1匹にも悲鳴をあげる生徒たちが、ここで過ごすうちに鍛えられるのでしょうか、ハエがたかったご飯も平気になります」と宍戸教頭。鶏の声で目覚め、暗くなったら眠りにつく暮らしをいたく気に入る生徒たちも多いという。

     フィールドワークの後半はバンコクが舞台となる。タイの名門タマサート大学で5日にわたって研修する一方でスラム街も訪れる。スラム出身のプラティープ氏が設立した財団の配慮で、ゴミが散乱し異臭を放つ狭い路地を通り抜け、今まで見たこともない光景を目にする体験をさせてもらう。

     「確かにタイは安全面で難しいところもあります。でも、そこに我が子を送り込む父兄は、それこそ『旅をさせる』覚悟を持っています」と宍戸教頭は保護者の理解と勇気を語る。

    • 村では茶摘みやお茶作りも体験した
      村では茶摘みやお茶作りも体験した

     タイを経験した生徒たちは高3の春にロンドン大学アジア・アフリカ研究学院校で研修し、タイでのフィールドワークの成果を英語論文にするためのリサーチと論文作成を行う。

     「青山学院大学の地球社会共生学部は、アジアの負の部分を体験して欧米で学ぶと、思考や議論にいっそうの深まりが出てくると発表していますが、まったく私も同意見です」と宍戸教頭は語る。

     スーパーグローバルクラスの第1期生はいま高校2年生。タフさと国際感覚を自分のものとした生徒たちは、グローバル・リーダーとして必要な教養を身につけていく。

     (文と写真:松下宗生 一部写真提供:佼成学園女子中学高等学校)

    2016年09月05日 15時45分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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