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    国際人としてのコミュニケーション能力を測る…国連英検

     国際連合公用語英語検定試験(事務局・東京都中央区)は、外交官や国連職員などグローバルプレーヤーを目指す人のための英語検定試験で、日本で受験できる英語検定試験で最も難関な試験の一つといわれている。それは近年のコミュニケーション能力理論の研究成果をふまえた、真の国際人としてのコミュニケーション能力を測るテストだからだという。国連英検統括監修官で言語学博士の服部孝彦・大妻女子大学大学院教授に話を聞いた。

    場に合った適切な表現を問う「社会言語能力」

    • 国連英検は1981年から日本国際連合協会が主催している
      国連英検は1981年から日本国際連合協会が主催している

     国連英検はE級(中学修了程度)、D級(高校1・2年程度)、C級(高校修了程度)、B級(大学レベル以上)、A級(国際的に通用する高度な英語力)、特A級(国際的に通用する極めて高度な英語力と国際常識)に分かれているが、どの級においても重視されているのがコミュニケーション能力だ。服部教授がこう解説する。

     「コミュニケーション能力という言葉は、今日いたるところで使われていますが、非常にあいまいな定義のまま使われています。実際には言語研究に科学的な手法が取り入れられた1960年代以降に生まれた概念で、(1)文法能力(2)社会言語能力(3)談話能力(4)方略的能力という四つの要素から構成されています」

     文法能力とは、語彙(ごい)、語形成、文形成、発音、つづりなどが含まれ、正確に文字通りの意味を理解し、表現するための能力だ。

     「中学校や高校では、この文法能力しか教えていませんし、中間・期末の定期テストでもこれしか質問されません。しかし、それだけでは外国人と会話できません。国際人としてのマナーが(含まれ)ないからです」

     例えば、上司の家のパーティーに招かれたとする。トイレを借りるときに、「Where’s your bathroom?」と聞くのは失礼で、怒られてしまう。一般的には「May I use your bathroom?」だが、上司に対してなら「Would it be alright if I used your bathroom?」と聞かなくてはならないという。

     この3番目の言い方のように、相手やその場に合った適切な表現を使用できる能力が社会言語能力だ。

     「『安い』をcheapではなくreasonable、『妊娠している』をpregnantでなくexpectingと表現するのがエレガントな言い方です。国際人はこう表現できなくてはならないのです」

     こうした能力も測るのが国連英検で、リスニング問題を多く導入するなど問題に工夫が凝らされている。E~B級では、リスニングが全体の40%を占めているという。

    「談話能力」は論理的思考にも直結する

    • 日米の大学で言語学を教え、英語教科書も長年、執筆してきた服部孝彦教授
      日米の大学で言語学を教え、英語教科書も長年、執筆してきた服部孝彦教授

     さらに、文の単位を超え、話の内容に一貫性や結束性を持たせる談話能力も、国際的に通用するには必要だ。

     「日本語はあいまいな表現が多く、和文ではなんとなく読めても、英文にするとロジックがめちゃくちゃだと気付くことが多くあります。英文ではまず、最初にトピックを持ってきます。次にその根拠をいくつか示し、最後に結論というように、段落をしっかり分けて書くことが必要です。それは論理的思考にも直結します」

     B級、A級、特A級では、この能力を問うために英作文が出題されている。

    上級の試験では国際知識と国際人としての資質が問われる

     各級とも、英作文の出題テーマは非常に難度が高い。例えば2017年第1回の試験で、B級のテーマは「あなたが関心を持っている国際問題は何ですか。またそれはどうしてですか」、A級は「国連が人権問題に関与するにはどのような方法がありますか」、特A級は「国の戦後復興を、国連はどのように援助できますか」だった。出題文はもちろん、すべて英文だ。

     当然、国連の理念や国際社会の諸問題を理解していることが求められる。国連英検は「世界平和と人類の福祉向上に寄与する人材を育成する」ことを主な目的としているからだ。

     それだけに、上級試験合格者への評価は高い。特A級は、外務省が日本人の国際機関への就業をサポートする「外務省国際機関人事センター」の「JPO派遣候補者選考試験」の語学試験として採用されている。つまり、国連などの国際機関で働ける英語力を証明するほどの資格なのだ。

    外国人との交渉に必要とされる方略的能力

     A級と特A級の試験には、面接もある。外交などの経験者が面接担当を務め、国際事情の知識に加え、それを理路整然と話せるか、深い議論が可能な分野を持っているか、などを問われる。

     この面接試験には、文法能力、社会言語能力、談話能力だけでなく、より高度なスキルである「方略的能力」を測る狙いがある。

     服部教授が説明する。「会話というのは、続けなければなりません。日本人はすぐに、『Yes』や『I think so』で話を終わりにしがちです。外国人の友人に『なぜ日本人はいつも黙っているんだ。まるで壁に向かって話しているようで、優秀な大学院生でさえ、2分待っても次の言葉が出てこない』と言われることがあります。実際の面接でも、使う語彙のレベルは非常に高いのに、会話が続けられない人がいます。聞かれたことに答えるだけでは、評価は低いのです。言葉を使ったり、または言葉以外のものを駆使したりして、切り返して話を続けなければなりません。それが方略的能力です」

     面接では「この国際問題に関して、あなたが今話したのは新聞によく出ている一般的な見方でしょう。そうではなく、日本人として、あなたはどういう立場でどう考えているのか」と聞かれることも多いという。

     こうした問いに答える方略的能力が、外交などの国際舞台で活躍するためには求められるという。

    国連英検が目指す四つの能力が今求められている

    • 受験者は中学生から70歳代までと幅広い。成績優秀者は表彰される
      受験者は中学生から70歳代までと幅広い。成績優秀者は表彰される

     国連英検の上級では単なる英語力ではなく、このような国際人としてのコミュニケーション能力を試される。このため、他の英語検定で1級などを取得した人が、さらに目指すべき高みとして定着してきている。また、慶応義塾大学や上智大学など多くの大学で、履修要件や入試の出願資格などに活用されている。

     「コミュニケーション能力には文法能力、社会言語能力、談話能力、方略的能力の四つの能力が必要と話してきましたが、これらはまさに、文部科学省の新しい学習指導要領で求められているものと同じです。文部科学省は、英語の4技能『読む・書く・聞く・話す』に『発表する』を加えました。プレゼンテーションを学ぶことが、日本人の英語力向上に役立つでしょう」

    子供の英語力向上には探究心をつけること

     子供に国連英検を受けさせたいと考える親は多いだろう。英語力を向上させるために、いい学習方法はないのだろうか。

     「無理に覚えさせてもダメです。本来、子供が持っている探究心を伸ばすことです。『これは何だろう』と常に考えて、自ら学ぶ喜びを見いださせることです。それには、真っすぐな道を行くとは限らない。回り道をするかもしれないし、道なき道を行くかもしれない。大人はそれを見守るだけで、先んじて道を示してはいけないのです」と服部教授は答えた。

     国連英検の出題は、グローバルな問題意識にあふれている。まず、その英語に触れさせてみてはどうだろう。それが、子供たちの探究心を触発するかもしれない。

     (文と写真:小山美香 一部写真:日本国際連合協会国連英検事務局提供)

    2017年12月08日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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