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    教養の礎となる理数教育を中高時代に…成城学園

     成城学園中学校高等学校(東京都世田谷区)は、受験に特化した学びではなく、豊かな教養を育むことを目標に授業を行っている。この春には、理科実験室8室を備えた施設「サイエンスゾーン」が完成し、実験を通じて生の知識に触れられる態勢がさらに充実した。同校の理数教育への取り組みについて、理科の網干守教諭と生徒を取材した。

    2017年春、サイエンスゾーン完成

    • 中学1年の生物の授業。藻の光合成で、水溶液の性質を調べる実験
      中学1年の生物の授業。藻の光合成で、水溶液の性質を調べる実験

     サイエンスゾーンは校舎南棟の2階と3階に配置され、理科実験室と理科職員室がある。隣接の新校舎とは廊下で結ばれ、教室移動もスムーズだ。

     最初に見学した部屋では、中学1年生が藻の光合成を利用し、水溶性の性質を調べる実験を行っていた。

     実験に先立ち、先生が手本を示しながら手順と実験のねらいを説明する。先生の手元に向けられたカメラのレンズを通じ、拡大した映像が教室前方のモニターに映し出され、教卓から遠い席の生徒も確認できるようになっている。

     黄色の酸性水を沸騰し続けることで、緑、そして青色に変わっていく様子がモニターに大きく映し出されると、生徒から「きれい」「すごい」と声が上がった。後方に座る生徒も、モニターで確認しながら説明を聞くことができ、素晴らしいと思った。

    • 中学2年の地学の授業。顕微鏡で火山灰を観察していた
      中学2年の地学の授業。顕微鏡で火山灰を観察していた

     続いて見学したのは中学2年生の地学の授業だ。各自、火山灰を顕微鏡で観察しながら、ピンセットで慎重に分類していた。授業の終盤、各自で顕微鏡を棚に片付けるときのことだ。生徒の様子を見ていた先生が、「顕微鏡は逆さにしない、両手で持って」とすぐさま指示した。火山灰については本でも学べるが、実際に見て分類し、そして顕微鏡を棚から出して片付けることまでして、初めて得られることがある。器具の扱い方も、その一つだ。

     教室によって設備が異なる。たとえば、半数にあたる4教室には大学や企業の実験室にある局所排気機能を備えたドラフトチャンバーが設置されている。食塩水の電気分解の実験の際などに用いるといい、安全性においても最新の環境が整っている。

    中高の学びは、大学受験のためだけでなく

     進学では、成城大学を含め、文系学部を志望する生徒が8割近いことから、数学や物理、化学や生物といった理数系科目の学びは多くないのではと思っていたが、理科の網干守教諭から「理数教育を重視しており、むしろ充実している」と、まったく反対の言葉を聞いた。

     理数教育を重視する理由はこうだ。

     「科学リテラシーは、文系、理系を問わず大学生にも社会人にも必要なものです。その基礎となるのが中高での学び。それも座学だけでなく、自分で手を動かし観察し、発見し、まとめる機会を多くつくり、単なる暗記ではなく自ら考えることを重視しています。本校では、中学3年間の理科の授業の約半分が実験室での学びです」

    理数教科を必修とし、幅広く基礎を養う

    • 教卓での実験を、モニターにも投影。全員が、先生の説明を聞きながら観察できる
      教卓での実験を、モニターにも投影。全員が、先生の説明を聞きながら観察できる

     さらに同校では、高校1年で数I、数A、物理基礎、化学基礎を必修で学ぶ。「高校1年のテスト勉強は科目数が多く、乗り越えるのが大変」との声が、生徒たちから聞かれるという。だが、「教養には、幅広い基礎的な学びが欠かせません。成城学園の理数教育は、受験勉強のためだけでも、一部の理数エリートを育てるためのものでもありません」と網干教諭は強調する。高校2年からは選択授業が増えるが、数IIと生物基礎は必修科目として全員が学ぶ。高校3年でも理系学部進学希望者は当然のこと、成城大学への進学者も数学が必修となっている。

     理系学部受験のサポートについても、理系志望の生徒数に比して理系教員が多いことから、手厚いといえる。理系志望は1クラスと人数は少ないが、医学部や歯学部、東京工業大学、慶応義塾大学、早稲田大学の理工系学部をはじめとした他大学へ進学している。

     「大学の系列校ですが、内部進学以外の道もあります。高校2年からは希望のコースで学びます。本校では、成績が振るわないから希望のコースに入れないということはありません。ひとりひとりの希望に沿った進学をサポートします。ただ、成績だけで人を評価するようなことがない反面、勉強しないと落第もありえます。自分自身で未来を切り開く人を育てる教育が、成城学園の創立以来の変わらぬビジョンだからです」

    新校舎で先生との距離がより近くに

     中高の6年間に、成城学園の新旧校舎の両方での学校生活を体験した高校3年生の3人に、学校生活について聞いた。まずは、サイエンスゾーンについて。

    • サイエンスゾーン入り口にあるモニター。授業の教室が確認できる
      サイエンスゾーン入り口にあるモニター。授業の教室が確認できる

    O君「最近、生物の授業で動画の資料を見ながらの解説があり、視覚的にわかりやすく、記憶にも残りました」

    Yさん「以前からひとり1台ずつ、生物顕微鏡も双眼実体顕微鏡もありましたし、教室が新しくなって何か実験器具が増えたということはありませんが、教室も廊下も広く、新調されたものも多くあり、気持ちいいです」

     続いて、新旧の校舎について。

    Sさん「古い木造校舎から新しくなり、清潔感があって気持ちがいいです。先生が以前よりも頻繁にモニターやプロジェクターなどを活用され、私たちは効率的に勉強できていると思います」

    O君「中高が別々だった校舎の時と比べると、中高の校舎が一緒の今は先生との距離が今まで以上に近くなったと思います。高校になっても、中学の先生と校内で顔を合わせます。以前の校舎では、なかったことです」

    Yさん「生徒同士も近くなったと思います。校舎が一緒になったタイミングで常任委員会(生徒会)が中高一緒になり、私は委員ですが、中学生に教えながら一緒に活動しています。中高学年を超えての交流が増えました」

    毎朝7時30分開放、理科実験室が自習室に

     次は、受験勉強について。

    O君「僕は、毎朝7時30分から理科実験室で始業時間まで自主勉強をしています。サイエンスゾーンのある南棟の入り口は、受験生のために本館より早く開きます。朝の理科実験室は集中でき、勉強がはかどります」

    Yさん「私の自主勉強の場所は、新しくできた図書館です。お気に入りの席があります。受験勉強にぴったりの場所です。図書館には大学別の過去問も備えられていて、便利に利用しています」

     最後に、進路について。

    Sさん「私は中学に入学したときには、まだ進路について具体的に考えていなかったのですが、細胞学の研究者である祖父を見ていて、将来、研究に携われたらいいなと考えるようになり、理系進学を決めました」

    Yさん「私は小さな頃に始めたバレエを通じ、骨格や筋肉など身体に興味を持ち、そのことをきっかけに、将来は医者になりたいと思っています。成城大学だけでなく、理系の大学への進学実績のあるここで学びたいと思い入学しました。先生と生徒の心の距離が近い学校ですし、特にサイエンスゾーンには理科職員室があり、いつでも先生に質問しに行けるのがいいです」

    O君「数学が好きで得意だったので、伸ばしていきたいと理数コースに。この夏休みは、受験勉強一色だったのですが、新学期に登校すると気持ちが安らぎました。受験校であれば、学校全体が入試までガチガチに勉強一筋でしょうが、成城学園はふんわりした雰囲気なんです。英語教育が充実しているから、語学を極めたいと上智大学や国際基督教大学などを目指す生徒もいます。いろいろな生徒がいて、自分のしたい方向に進める学校だと思います」

     授業を見学し、先生と生徒を取材してわかったのは、教養教育の実践と、夢に向かって自分らしく挑戦する生徒たちの姿勢という、成城学園が変わらず大切にしてきたものだった。

     (文と写真:水崎真智子) 

    2017年11月13日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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