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    カトリック系だからできる教育…東京純心

     東京純心女子中学校・高等学校(東京都八王子市)は半世紀余り、カトリックの教えに基づく女子教育に携わってきた。「今こそ本校の目指す教育が求められている」と語る松下みどり校長に、同校の理想とする人間像や、授業方法、時代に即した学校改革の取り組みなどを聞いた。

    「神様にも人にも喜ばれる」人間を育てる

    • 松下みどり校長
      松下みどり校長

     「今、多くの教育機関が目指しているのは、国や人種を超えてさまざまな人と協力し合い、社会に貢献できる人材の育成です。これは、本学が目指す『聖母マリアのように神様にも人にも喜ばれる』という人間像にほかなりません。私たちの一貫して行ってきた教育が、ますます求められるようになったという思いです」と、松下校長は建学の精神にうたわれる教育理念について語った。

     東京純心の教育の原点は、創立者である純心聖母会のシスター、江角ヤスの体験にある。1930年代、シスター江角は修道会設立のための修練をフランスで行い、また、文部省(現:文部科学省)嘱託の留学生として、ヨーロッパ各国の女子の中等教育を視察した。「日本も、女性と男性が共に社会を支え、外国と対等に交流し、世界に貢献できる国にならなければ」という思いを強くしたという。

     「本校では、英語は特別なスキルではなく、生きるための基礎能力と考えています。創立時から英語だけで授業を進行するなどの取り組みを行っており、現在も4技能(書く、読む、話す、聞く)をバランスよく伸ばすトレーニング型の指導をメインにしています」と松下校長は語る。

     東京純心にはさらに欠かせない教育理念がある。平和教育だ。学校の母体である長崎の純心高等女学校が原爆の惨禍に遭ったことが、これを決定付けた。

     同校では高校生を対象に長崎への研修旅行を行う。生徒たちは姉妹校の純心女子高等学校での交流や原爆資料館の見学を行い、さらにシスター江角が設立した被爆者のための養護施設「恵の丘長崎原爆ホーム」を訪問する。「原爆ホーム」では被爆者から直接に体験談を聞くプログラムがあり、生徒たちは平和への思いを深くするという。

    実践につながる「純心オリジナル探究型学習」

    • 図書館での探究型学習の様子
      図書館での探究型学習の様子

     こうした教育理念のもと、「社会に貢献できる人材」を育成するため、授業も実践を意識し、図書館を中心としたアクティブラーニング型の授業を長年行っている。東京純心では「純心オリジナル探究型学習」と呼んでいる。学習の基本的な流れは、生徒たちが各自課題を決める。それぞれが情報を集め、選択し、まとめて発表する。振り返りを行い、リポートを作成する、というものだ。

     最近行われた高2の現代文の授業では、探究型学習の対象として夏目漱石の小説「こころ」を取り上げた。タイトルの意味の考察や内容の要約、登場人物の分析、時代背景の考察などさまざまな角度から作品を調べた。最後のまとめでは、代表の生徒が漱石と芥川龍之介、中島敦という3作家になりきり、「近代文学と孤独」というテーマで話し合ったという。

     また、高1の宗教科の授業では、生命倫理をテーマとし、「安楽死の可否」「インフォームドコンセントは必要か」など、現代に特有の問題に取り組んだ。長崎への研修旅行でも、生徒たちは事前に長崎のキリスト教について調べたといい、「隠れキリシタンや、江戸期の禁教下で活躍した日本人伝道師バスチャンなど、マニアックなテーマに取り組む生徒もいました」と松下校長も驚きの様子だった。

     この他、中3では「時事問題スピーチ」を行っている。提示された時事問題の中からテーマを選び、1人につき約5分ずつ、スピーチと質疑応答を行う。「コンビニは必要か」「夫婦別姓は是か非か」など、生徒自身の生活や将来に関わる問題を考える機会になっているという。

    女子校ならではのメリットも

    • 平和への思いを深くする長崎への修学旅行
      平和への思いを深くする長崎への修学旅行

     女子校ならではのメリットについても聞いてみた。「異性の目がないので自分らしくいられて楽だという声をよく聞きます。友だちとの雑談もざっくばらんで話題を選びません。また、団体行動の際に男女の役割分けがないので、たくましくなります。リーダーシップに目覚める生徒も多いですね」と松下校長は話す。

     「英語の発音練習でも恥ずかしがらずに声を出します。英語教員からは“指導しやすい”という声を聞いています。一方、たとえば数学の抽象的な概念などは、男子に比べて理解に時間がかかる傾向があるようです。ある教員は、折り紙を用いて平方根の概念を視覚的に見せるなどの工夫をしています。こうした試みがしやすいのも、女子校の利点かも知れません」と松下校長は分析する。

    タスクチームによる教育改革

     揺るぎない教育理念を掲げる一方、現代社会に即した学校改革も進めている。今、力を注いでいるのは、教員たちのタスクチームによる取り組みだ。

     「二十一世紀型教育検討委員会」では、他校などの視察を行って言語教育の重要性を改めて認識した。「女子は男子に比べてよくしゃべりますが、コミュニケーション力が高いとは限りません。また、学年が上がってくると、疑問を感じても質問しなくなる傾向があります。質問と説明は、良い人間関係を結ぶためにも大切な力。授業を通して高めていきたい」と松下校長は語った。

     学校行事に関するタスクチームは、中1の学年研修として9月に「国立赤城青少年交流の家」(群馬県前橋市)で移動教室を実施した。この教室では、オリエンテーリングや野外炊事のほか、フィールドアスレチックのさまざまな課題をチームでクリアする「プロジェクト・アドベンチャー」というプログラムを実施した。「人を信頼する、自分の意見を言う、あきらめないという、私たちが求める力の育成にとても役立つプログラムでした」と松下校長は手応えを感じていた。このほか、総合学習や平和教育などのタスクチームも活動しているという。

     最後に松下校長は、「今は、国を超えて人間そのものに対する敬意が必要な時代。生徒たちにも問題意識を持って、自分と社会のつながりを考えてほしい。上に立つリーダーよりも、人と協力して良いものをつくりあげるリーダーやサポーターになれる教育を行っていきたい」と思いを語った。

    (文と写真:上田大朗 一部写真提供:東京純心女子中学校・高等学校)

    2017年01月10日 15時40分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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