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    本になったPGTプログラムの3年間…秀明八千代

     独自の教育手法「PGTプログラム」を実践している秀明八千代中学校(千葉県八千代市)は、過去3年間の取り組みを1冊にまとめ、「中学校各教科の『見方・考え方』を鍛える授業プログラム」(学事出版刊、2300円=税別)として出版した。同プログラムは2021年度から実施される中学校の新学習指導要領を先取りした内容。出版の狙いを編著者の富谷利光校長と学事出版の編集担当・丸山久夫氏に聞いた。

    独自のPGTプログラムがベース

    • 富谷校長(左)と学事出版の丸山氏
      富谷校長(左)と学事出版の丸山氏

     ――この本のテーマである「PGTプログラム」について説明してください。

     富谷校長 「PGTプログラム」はPractical skills(実践力)、Global skills(国際力)、Traditional skills(伝統力)の頭文字を取った本校独自のプログラムです。2013年3月に基本構想を固め、各教科の教員が内容を具体的に検討して2015年度から実施しています。

     ポイントは子供たちの学ぶ意欲を刺激するように、社会と結びついた体験活動を基に半年ごとにプロジェクトを行い、いくつかの教科の学びをリンクさせることにあります。定期的に中高一貫カリキュラム検討委員会を開いてプロジェクトの進行状況を共有し、活動内容にリンクできる教科は、関連した内容の授業を行うように進めてきました。

     また、大学と連携した特別授業にも力を入れています。大学の先生の専門分野をそれぞれの学年に合わせてアレンジした特別授業は、新学習指導要領で重視されている各教科の「見方・考え方」を専門的な見地から鍛え、中学・高校の勉強の先にある研究がどのようなものかを知ることにも役立ち、学習のモチベーションを高めています。

     ――具体的な学習内容はどういうものですか。

     富谷校長 例えば中学1年前期は「和食の科学プロジェクト」、後期は「日本文化プロジェクト」といったように半年ごとに中心的な体験活動を設定しています。最初に行ったのは米作りで、2年目からは味噌(みそ)作りを理科の教員が中心となって行いました。

     ただ、教員にとっても他の教科と学びをつなげていくことは、ほぼ未経験ですので、この本にもあるように、3年間は試行錯誤の連続でした。中学1年後期の「日本文化プロジェクト」では1年目に「落語」を鑑賞し、その後にリンク学習として「和凧(わだこ)」を取り上げました。社会科では「凧の歴史」を、理科では「凧が飛ぶ仕組み」を学び、数学では「図形による凧の設計」を考えました。国語では、以上の学びをまとめ「凧新聞」を作りました。単発的な学習にとどまっていますが、凧を中心にいろいろな教科がリンクできました。

    • 「文楽」を体験する生徒たち
      「文楽」を体験する生徒たち

     2年目には「文楽」を鑑賞し、国語では文楽と関連して「竹取物語」のペープサート(紙人形劇)を行ったのですが、他の教科からリンクする糸口が見つかりませんでした。そこで、3年目は「義太夫」の鑑賞や百人一首を中心にしてみようと考えました。ちょうど百人一首をテーマにした映画が話題になった時期で、大学の先生にも百人一首を題材として授業をしていただき、映像なども使って、生徒の興味関心を喚起しました。さらに社会の授業でも学び、4月のイギリス英語研修では手作りの百人一首を持参して、イギリス人の先生とカルタをして、日本の伝統文化を発信することができました。

    新学習指導要領の方針を先取りした教育を実践

    • 「義太夫」を体験する生徒たち
      「義太夫」を体験する生徒たち

     ――身に付けたことを次につなげていくわけですね。

     富谷校長 来年は、さらに百人一首を英語で説明することを目指しています。単発的な学びから継続的な学びにしていくことで、ようやく形が定まってきました。途中、書籍化という目標を掲げたことも、教員たちにとって刺激になったと思います。学事出版の丸山さんには貴重な機会をいただいたと感謝しています。

     丸山氏 2015年の秋にPGTプログラムの活動内容をまとめた外部施設でのポスター展示を見学して、先生方の真摯(しんし)な取り組みが強く印象に残りました。その後、連絡した折に、新学習指導要領に示された方針を、いち早く具体化されていることに感心し、これを書籍化すれば多くの学校の指針になると確信したのです。

     富谷校長 私も新学習指導要領について学んだ際、本校の教育にきわめて近いと意を強くしました。教員と生徒が目標を共有して、プロジェクトをどんどんバージョンアップしていることも、提唱されているカリキュラム・マネジメントに合致しています。

    • イギリス英語研修では、手作りの百人一首を披露した
      イギリス英語研修では、手作りの百人一首を披露した

     丸山氏 当初は新学習指導要領に沿った教材モデルをご提案いただくつもりでしたが、すでに実践されている授業まで紹介でき、意図した以上の本になりました。大学と連携して取り組んでいることも大きな特長です。誰か一人のスキルではなく、学校全体が目標を共有していることが、PGTプログラムの成功要因だと思います。

     ――こうした新しい中学校教育の実践を示した類書はありますか。

     丸山氏 私が知る限りありません。新学習指導要領の解説書はありますが、現場の教員からすると、実際にどうすればいいかを知りたいわけです。その点、この本は具体例を挙げていますから、日本中の学校の先生方が、自分たちもやってみようというスタートラインに立ちやすいと思います。

    思考力・判断力・表現力が問われる時代の評価方法

    • 「PGTプログラム」の取り組みをまとめた1冊
      「PGTプログラム」の取り組みをまとめた1冊

     ――中学校で新学習指導要領が全面実施されるのは2021年ですが、同時期から大学入試も、思考力・判断力・表現力を重視したテストに変わると言われています。

     富谷校長 本校も生徒の思考力を育てるという観点から定期考査に独自の「スキルコード」を導入しました。試験の問題にスキルコードを示すことで、その問いが求める知識のレベルと思考の深さが分かる仕組みです。

     丸山氏 大学入試改革に対応するには、前提として、やはり中学からの教育の積み上げが必要になります。秀明八千代中学では、知識偏重のテストからの脱却にも取り組まれているということですね。

     富谷校長 基礎となる知識をきちんと身に付け、そして、それを入試や社会で求められる思考力・判断力・表現力へ発展させていく際に役立つのがこのスキルコードです。ポイントは、教員だけでなく生徒もそれを理解していることです。授業やテストで今日の目標は何か、何を求めているかが分かるので、思考を深める習慣ができていくと期待しています。

     ――PGTプログラムの頭文字には「Positive Growing Trial(前向きに成長を目指してチャレンジ)」の意味も込められているそうですね。

     富谷校長 本校は学ぶ意欲を持ち、失敗を恐れずに前に進むことを何よりも大切にしています。難しい問題にも立ち止まらず、考えることが本校のテーマです。体験活動についても、今後はもっと地域の方の協力を得ながら、生徒たちの学びをより生き生きとしたものにしたいと思っています。今年度は新たに千葉県オリンピック・パラリンピック教育推進校に指定されましたので、これもPGTプログラムに組み入れて、生徒の成長を応援したいと考えています。

     PGTプログラムには常に改善が加えられ、バージョンアップを続けている。「主体的・対話的で深い学び」にいち早く取り組んでいる学習環境で、子どもたちの思考力・判断力・表現力はぐんぐん伸びることだろう。

     (文・写真:山口俊成、一部写真:秀明大学学校教師学部附属 秀明八千代中学校提供)

     秀明大学学校教師学部附属 秀明八千代中学校について、詳しく知りたい方はこちら

    2018年06月01日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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