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    友と語り合った寮での日々が今をつくった…秀明卒業生が語る

     「秀明での学びが、今の医師の仕事に生きています」。医学部や歯学部に進学者を多く輩出している秀明中学校・高等学校(埼玉県川越市)に、2人の卒業生が訪ねてきた。医師の福田裕昭さん(38)と内海江里加さん(31)だ。福田さんは現在、菅間記念病院(栃木県)の内科科長、内海さんは前橋赤十字病院(群馬県)の救急科でフライトドクターとして活躍している。2人は五十嵐康則校長との再会を喜び、在学当時の思い出話に花を咲かせた。

    深い友情を育んだ寮生活

     福田さんは1998年卒の17回生だ。自治医科大学医学部に進学し、埼玉県内の小鹿野中央病院、深谷赤十字病院などを経て、今年4月から菅間記念病院の内科科長として勤務している。秀明に在学中は、生徒会長を務めていたという。

    • 五十嵐校長を訪ねた福田さん(右)と内海さん(左)
      五十嵐校長を訪ねた福田さん(右)と内海さん(左)

     福田 五十嵐先生には、本当にお世話になりました。

     校長 福田さんは、朝の体操のとき、いつも半袖短パンだったよね。

     福田 そう、冬でも。汗かきなんです。一番の思い出は寮生活。中高の友達は、いつ会ってもすぐに素の自分に戻って話せる。宝物ですね。当時、「どういう医者になりたいんだ、何をやりたいんだ」と、消灯時間過ぎても深く突っ込んで友達と話し合っていました。そこに先生も加わって、夜中まで進路指導してもらったこともありました。先生はいつ家に帰っているんだろうと不思議でした。本当に熱心ですよね。

     校長 寮にはテレビもゲームもスマホもない。だから友人や先生と深い人間関係が築ける。寮生活によって、コミュニケーション能力や自分の考えを表現する力が養われるんです。それは、今のような時代こそ大切になってくる。2020年からの新大学入試でも発揮できる力なんですよ。福田さんはしょっちゅう職員室に質問に来て、補習もよくやっていたなあ。

     福田 学校が楽しすぎて、どうやったら週末も帰らないで学校に残れるか考えていました(注:通常は遠隔地以外の生徒は月曜登校・金曜帰宅の4泊5日制)。実際、勉強もよくやりました。まわりが勉強しているから、一緒になって頑張ることができた。何もないから、遊びも必死で考えました。

     内海 私も秀明の友達とは、今でも気を遣わない、長いつきあいです。北海道から沖縄まで全国から集まった友達は、自分とは違う地域で育ってきていて、とても刺激を受けました。もともと姉が通っていたので、文化祭に来た時に気に入って。ここなら全国各地の友達ができそうだなと。

     福田 私は小さいころお世話になった地元の医師にずっと憧れていて、たまたま秀明が医学部に強いことを知って、両親にここに入りたいと直談判したんです。父は自分で起業して事業をやっていたのですが、自分のやりたいことをやれと応援してくれました。

     内海 私も親族に医療関係者がいる家庭ではなかったのですが、たまたまここに入ったことで、先生と面談したときに、「もっと上を目指したらどうか」と言われ、医学部を目指すようになりました。

    文武両道、勉強も部活も一生懸命やる教育

     内海さんは2005年卒の24回生だ。昭和大学医学部に進学し、卒業後は前橋赤十字病院の救急科でフライトドクターとして活躍している。今年10月、育児休暇から復帰し、仕事と育児を両立している。

    • 医療講演で在校生に向けて話す内海さん
      医療講演で在校生に向けて話す内海さん

     内海 私は運動と勉強しかしてなかったですね。春から秋は陸上部で、冬はスキー部、友達からも、「よく走っている子」というイメージだったみたいです。どちらも一生懸命やらなきゃと思っていました。寮じゃなくて自宅だったら、甘えてやらなかったでしょうね。寮生活を経験して、親のありがたみがよく分かりました。家に帰ると自然と「ありがとう」と言葉が出ました。

     校長 内海さんは東日本駅伝大会の埼玉県代表選手に2回選ばれて、テレビ中継されるなか、走ったよね。大学でもデュアスロン(注:マラソンと自転車の競技)の世界大会で銀メダルを取っている。文武両道で性格もいい。非の打ち所がない。

     内海 いえいえ、体を動かすのが好きで、頭で考えるタイプではないので。救急科を選んだのもそういう瞬発力のあるところに行きたいと思ったからです。救急科は大変だけど、アドレナリンが出るんでしょうか、何も考えずに、やらなきゃと勝手に体が動くんです。

     校長 後輩の生徒たちに医療講演してくれた時、生徒たちから「患者の生死の瀬戸際に迅速な対応が求められるなかで、冷静に判断できるのはすごい」「ドクターヘリに乗って、まるでドラマみたいにかっこいい」と感嘆の声が上がりました。

     内海 2000日修業のおかげですね。秀明は中高6年間を2000日修業と例えるんです。早寝早起きして、アサタイ(朝の体操)やって。

     福田 確かに。そのおかげで今も早寝早起きが習慣づいてます。午前6時20分にペール・ギュントの「朝」の曲が放送で流れて、それから校歌が流れる。で、40分からアサタイで。

     校長 6年間あれをやってきたことが、自信になるんです。創立者の川島寛士先生が掲げた、「寮生活を通した人物重視の教育」だから、知力・体力・精神力すべてが鍛えられる。だから、本校は勉強だけでなく部活動も盛んなのです。

     内海 勉強面では、「大きい目標と小さい目標の両方を立てなさい」と教えられ、計画的に勉強できて成績も伸びました。

     福田 勉強は友達と切磋琢磨(せっさたくま)したおかげです。励まされたこともあったし、励ましたこともあった。先生方もみな温かくて、センター試験の結果が良くなくて落ち込んでいたとき、「おまえの勝負はこれからだ」と励ましてくださったことは今も心に残っています。

    「地域医療のために役に立ちたい」という夢を現実に

     福田さんは消化器科が専門。胃カメラや大腸カメラを使い、早期の腫瘍やポリープを摘出している。

    • 地域医療の充実をモットーとする福田さん
      地域医療の充実をモットーとする福田さん

     校長 今は内科全般を診ているんだね。

     福田 ええ。小鹿野中央病院の時は、「何科?」と聞かれると、「田舎」って答えていました。そのくらい田舎の病院なのですが、やはり自分が栃木県北部の田舎出身で、地域医療に対しての思いが強かったんです。一緒に救急車に乗って大きい病院に行くのですが、自分にも力がなくて「なぜここで手術しないのか」と言われたことが悔しくて。地域医療を充実させることが私の目標です。

     校長 それは学生時代から話していたよね。

     福田 大学受験を目指していくなかで、なぜ医学部なのか、そういった自分への問いを繰り返して、友達や先生とも徹底的に話し合ってきましたから。大学を選んだのも、「医療の谷間に灯をともす」という使命を掲げる自治医大に魅力を感じたからです。夢をもっていたから、中学も大学も自分で選べたと思います。中学受験をする小学生も、これから大学受験をする後輩たちにも、夢を持つことが大事だと伝えたいですね。

     内海 私の場合、夢が決まっていなかったのですが、この学校に来たからこそ夢が広がりました。まさか、医師になるとは思ってもみなかったですね。自分とは違う視点を持つ友達に会えることで、可能性が広がります。また、先生方はプロなので、大学入試の様々な情報が集まっている。特に医学部対策は秀明なら万全です。小論文対策や面接練習もやりましたよね。

     福田 よくやったなぁ。

     校長 内海さんも福田さんと同じく、地域医療のためにフライトドクターになったんだよね。

     内海 ええ。僻地(へきち)では少子高齢化が都市部よりも進んでいて、特に高齢者にとっては数時間かけて大きい病院に行くことが難しい。病院から遠いという理由だけで亡くなってしまう人がいるという状況を目の当たりにして、それを打開するためにもドクターヘリに乗ろうと決断しました。多いときには1日7回もフライトすることがあります。茨城県の水害のとき(2015年9月の鬼怒川決壊による水害)や、軽井沢のバス事故(2016年1月の軽井沢スキーバス転落事故)にも駆けつけました。

     校長 本当に厳しい現場で、冷静な判断と対処が求められる。ものすごい精神力が必要だよね。

     内海 それは秀明で培ったおかげですね。体力もです。体力がないとできませんから。まだまだドクターヘリの現場では女性が少なくて、私が群馬県で女性のフライトドクター第1号なんです。

     校長 2人ともこんなに立派になって、本当に感動しました。本校の教育方針がどれだけ人を成長させるのか、きっと多くの人に感じてもらえると思います。今日はありがとうございました。

    人と人がぶつかりあう環境で育つことの大切さ

    • 2人の思い出に残る、懐かしい学食の昼食
      2人の思い出に残る、懐かしい学食の昼食

     鼎談後は、懐かしい母校の食堂で昼食をとった2人。「第2のおふくろの味です」と何杯もご飯をおかわりする福田さん。お子さんをあやしながら「育児との両立で、毎日バタバタです」と笑顔の内海さん。2人とも同じ病院や地域の病院に何人も秀明出身の医師がいて、面識がなくても、同窓生ということですぐに盛り上がれるのだそうだ。

     「もちろん、生徒の希望により、医学部、歯学部以外を受験する生徒もいて、卒業生の中には弁護士や公認会計士、議員や会社経営など様々な分野で活躍しています」と五十嵐校長は言い添えた。

     スマートフォンを中高生も当たり前のように持つ今日、膨大な情報の中でかえって、人間本来の深いコミュニケーションは不足しているのかもしれない。寮という環境のなかで、人と人とがぶつかり合う環境で育つことの大切さを、2人の卒業生が教えてくれた。

     (文と写真:小山美香、一部写真:秀明中学校・高等学校提供)

    2017年11月08日 10時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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