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    「生徒は我が子」校長の挑戦…東海大浦安

     東海大学付属浦安高等学校・中等部(千葉県浦安市)は今年度、週6日授業を導入し、土曜講座として「浦安人生学」を開始した。「人としてのあり方、生き方」を見つめさせようと茂泉吉則校長が導入した。この講座には、生徒を我が子と思い、一人一人の希望と適性を見極めながら生徒の進路をサポートしようとする、茂泉校長の教育理念が込められている。

    「偏差値で大学を決めてはいけない」

    • 茂泉吉則校長
      茂泉吉則校長

     「私は生徒に対し、偏差値で大学を決めてはいけないと言い続けてきました。生徒を偏差値で切って大学に押し込んでいくようなことは、絶対にやってはいけないと思っています」

     インタビューで茂泉吉則校長はこう強調した。茂泉校長は、都立三鷹中等教育学校の校長から現職に就いた。茂泉校長は都立三鷹中等教育学校の設立準備期から関わり、2010年の開校時、初代校長を務めた経歴を持つ。当時は公立中高一貫校の新設ラッシュで、他校では「東大○人、医学部○人」といった進学目標を立てているところが多かったという。

     「進学校では教員や保護者が、『早稲田の文学部で学びたい』と言う生徒に、『合格できそうだから』というだけの理由で、東大の理科1類の受験をすすめるというような事例も少なくありませんでした」。そう振り返る茂泉校長は、生徒一人一人の希望や適性に合った進学指導に力を注いだ。「進路決定に際しては、その生徒が、将来どういう社会的役割を担っていくのかを、第一に考えるべきです」と力説する。

     前職で培った教育信念を胸に、茂泉校長が東海大浦安に就任すると同時に導入したのが、学校週6日制だった。今年度は中1と高1のみだが、将来的には全学年で週6日授業を行う。6日目にあたる土曜日に行うのは通常の授業ではなく、総合的な学習の時間を使った土曜講座「浦安人生学」だ。

    土曜講座で生き方学ぶ

    • 校長室に飾られた建学の精神
      校長室に飾られた建学の精神

     「浦安人生学」には三つの柱がある。ボランティア活動などを通して学ぶ「思いやり」。職場や大学、研究室訪問などで体験する「キャリア教育」。課題学習を中心とする「プレゼン能力育成」だ。狙いは大学のさらに先にある、人としてのあり方、生き方を学ぶことだ。

     「浦安人生学」の意義について茂泉校長は、「大学入学はゴールではありません。やるべきことを限界までチャレンジする力、相手の立場を思いやる心をどう育てるか。将来、自分は社会のどのような場所で貢献できるか。考え、努力することが重要です」と説明する。

     高3では、それまで学んだことを卒業論文としてまとめさせる予定だ。「将来、自分が何をしたいのか、探させるための土曜講座です。どう生きたいのかをじっくり考えるうちに、生徒は大きく変わっていくと思います」と期待を込める。

    東海大学との一貫教育

    • 校舎外観
      校舎外観

     東海大学は日本で一番、学部の多い大学だ。短大も国内の3校だけでなく、ハワイに「ハワイ東海インターナショナルカレッジ(HTIC)」がある。

     東海大学は、高大一貫教育の伝統があり、全国の付属高校から多くの卒業生が同大に進学している。付属高校・中学校の生徒が一堂に会し、文化部門とスポーツ部門で競い合う学園オリンピックでの優秀者には、奨学金のついた特別奨励入学が許されるといった制度もある。東海大浦安からも、例年、8割程度の卒業生が東海大学に進む。

     東海大への進学は、通常の成績と、年2回行われる「学園基礎学力定着度試験」という、付属14高校での統一テストの成績を基にして、校長が推薦をするという形をとる。

    多くの生徒は希望した学部に進むことができるが、医学部や工学部航空宇宙学科などの難関学部や人気学部は希望が通らない場合もある。

     酒井孝允教頭によると、医学部は例年7人ほど、航空宇宙学科航空操縦学専攻は毎年1人程度の難関だ。「特に、航空操縦学専攻は航空身体検査があって、身体作りが重要です。持病で受験できないこともありますから、早いうちからの対策が必要です」と話す。

    生徒の適性見極めて進路をサポート

    • 東海大浦安は県内有数のスポーツ強豪校でもある
      東海大浦安は県内有数のスポーツ強豪校でもある

     進学の保証は付属高校ならではの魅力であり、生徒にとっては大きな安心だが、茂泉校長は無条件にその流れを肯定するわけではなく、高2の生徒全員と1対1の面談を行っている。一人一人の希望を確認し、適性を判断していくのだ。

     「東海大学の中に自分が目指す道があるのなら、それに向かって努力すればいい。他大学への進学を希望し、それが本当にその生徒のためになるのであれば、できるだけの応援をします。他大学の受験者数が今後どう増減するかは問題にしていません」と語る。HTICでアメリカの正規の短大卒業資格を取得後、アメリカや日本の大学への編入を目指すという、新しい進路選択肢も生まれているという。

     「生徒一人一人が我が子です。進路決定においては、生徒が自分の個性と能力を見極め、ふさわしい進路を選べるように最大限のサポートを行いたいです」と話した。

    「まずは学校を見に来て」

     東海大浦安の受験を考える生徒や保護者に対し、茂泉校長は、「とにかく学校を見て来てほしい。学校選びがミスマッチになってしまうことは、生徒にとって非常につらい。受験校選びで大切なのは偏差値ではなく、生徒本人に向いている学校かどうかです」という。

     どんなに評判のいい学校でも、入学してみたらミスマッチだったというケースはある。生徒全員を我が子と考えるという信念を持つ茂泉校長は、本当にミスマッチであれば、その生徒に合った転校先が決まるまで面倒を見るという。

     もちろん、学校が合わなくて苦しむ生徒を最初から生み出さないことが大前提だ。「本校の教育をよく理解して、受験してほしい。本校は発展的学習をせず、ゆったりと個人の能力に合わせて授業を進めます。文系、理系のクラス分けもしません。理系だから文学を知らない、文系だから数学の基礎知識がない、というのでは、社会に出た時に困ります。生徒には、素養と教養のあるバランスのとれた人間になってほしいのです」と茂泉校長は締めくくった。

     (文と写真 織江理央)

    2016年12月12日 05時50分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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