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    「どの星に住む?」浦安人生学で考え抜け…東海大浦安

     東海大学付属浦安高等学校中等部(千葉県浦安市)は7月8日、宇宙アドバイザー協会から講師を招いて「宇宙探査と地球環境」と題する講座を開催した。この講座は、同校が実施しているユニークな教育プログラム「浦安人生学入門編」の一環だ。「どの星に移住したい?」。講師の問いかけに答えながら、中1生たちは天体の世界に思いをはせた。

    クイズ形式で講義スタート

    • 生徒に問いかけながら授業を進める吉田講師
      生徒に問いかけながら授業を進める吉田講師

     「宇宙って、どんなところでしょう?」。東海大浦安で7月8日、「宇宙探査と地球環境」と題した講座が開かれ、講師として招かれたNPO法人「宇宙アドバイザー協会」の吉田和雄さんは、会場の物理第1実験室に集まった1年生40人に、こう問いかけた。

     吉田さんがまず提示したのは、人口増加や温暖化現象、自然災害にさらされている地球が6回目の大量絶滅期にさしかかっているということと、この危機を回避するために人類が取るべき解決策の一つは、他の天体への移住であるということだ。宇宙へ旅立たねばならないとしたら、そこは一体どのようなところなのか、これが先ほどの問いかけの意味だ。

     「無重力!」「真空」「空気がない」「上下左右がない」。生徒たちの元気な答えが返ってくる。吉田さんは、一つ一つの答えに、正しければ「正解」「いいね」など、うなずきながら応答し、間違いであれば「残念」と苦笑してみせる。

     クイズさながらのやりとりを繰り返し、生徒たちが答えを出し切ったところで、吉田さんは「超高真空」と言われる宇宙の状態を説明した。「空気がないから真っ暗。でも、星がきれいに見える」。その一言で、生徒たちの宇宙のイメージがパッと膨らむ。

     「それじゃあ、みなさんと宇宙探検に出かけましょう」。プロジェクターが月の画像を映し出した。講座を受けるにあたっての事前学習で、月は「住みたい」という声が多かった天体だ。ここからは宇宙船に乗って地球からいろいろな天体へと向かう設定だ。

     まず訪れた月は、生徒たちの期待と異なり、「土だけの死んだ星」だと分かった。月には大気がないため、太陽光が直接降り注ぐ部分の表面温度は110度に達する。同時に、太陽光が当たらない部分はマイナス170度の極寒になる。大気がないため、宇宙から飛来する隕石(いんせき)はそのまま直撃するし、表面の砂はパウダーのようで歩きにくいという。

     月の「探検」を終えて、吉田さんが生徒たちにもう一度問いかける。「月に住みたいと答えた人、住めそうですかね」。しばらくの沈黙があり、「無理です!」と女子生徒の声が響いた。その後、生徒たちを乗せた「宇宙船」は、水星から海王星までの太陽系の天体を経巡った。吉田さんは、一つの天体探検が終わるごとに生徒たちに尋ねた。「この星に住みたいひとはいますか?」

    プレゼンテーションで認識を深める

    • グループごとに話し合い、意見をまとめる
      グループごとに話し合い、意見をまとめる

     講座の後半は、グループごとのブレーンストーミングに移った。4人1組の班に対し、与えられた課題は、「どの天体に移住しますか?」「そこでの生活は、どういうふうになりますか?」「これまでと同じように生活するためには、どうすればよいと思いますか?」の三つだ。

     各班で議論した結果をホワイトボードに書き込み、代表者がプレゼンテーションする。移住先に火星を選んだ班は、発電所を作り、植物を植えて住める環境作りをし、「強い風が吹くので外出を少なくし、気温が低いのでエアコンをフル稼働させて生活する」と発表した。これに対して吉田さんがコメントする。「外出を少なくするってことは、これまでと同じ生活はできないね。それでも地球を諦めて火星に住みたい?」

     各班のプレゼンテーションに対してこうしたやり取りが繰り返され、生徒たちは徐々に認識を深めていった。講座の終了後、火星にドームを建設するアイデアを発表していた生徒に感想を聞いた。「よく考えれば、火星にドームを建設するよりも、地球で建設するほうがよっぽど楽です。地球を住みやすい環境にする。そのことが一番大切なことだと思いました」

    中高6年かけて人材を育成する

    • 最後はグループごとにプレゼンテーションを行う
      最後はグループごとにプレゼンテーションを行う

     生徒たちは他の天体への移住の可能性をみんなで考え抜き、今、自分たちが暮らす地球がいかにかけがえのないものか、その認識に自力でたどりついた。この学びのあり方が「浦安人生学入門編」の狙いだ。

     「浦安人生学」は、昨年度から週6日制を導入し、土曜日の「総合的な学習の時間」で実践している教育プログラム。歴史上の人物の生き方に触れて考えたり、浦安の郷土文化に触れてみたり、時には職場体験もしたりする。教科書中心の授業とは違い、自分で考え、自分で表現する体験学習に力を入れているのが特徴だ。

     前期、後期に各1回、外部講師を招いて開催する土曜講座もプログラムの一部。今回の講座のように科学の魅力に触れる「自然科学系」、国際感覚を身につける「比較文化学系」、健康を考える「健康医科学系」の3分野を設定しており、1、2年生は、受けたい講座を選択できる。

     酒井孝允教頭が説明する。「講義を聴き、班ごとにブレーンストーミングし、お互いの意見を尊重しながら、自分たちが求めるものへと集約していく。この一連の流れの中で、知識を消化し、自分の意見をまとめる力、人との意見の違いを知る力、その違いと自分の意見をまとめる力、そして、まとめたものを外に発表する力が、一人一人の生徒の中で養われます。目指しているのは『知識と技能』『思考力、表現力、判断力』『主体性、多様性、共同性』の3要素です」

     「浦安人生学」は、中等部の「入門編」に次いで東海大浦安高に進学後も継続され、第1学年ではセカンドステージ、第2学年ではサードステージとレベルアップする。

     同高の3年生には、これまで学んできたものの集大成となる卒論が必修として課されている。「『浦安人生学』は、そのために必要な、ものの見方を養う訓練になるでしょう」と酒井教頭は話す。中高一貫教育の6年間をかけて、じっくりと視野を広げ、豊かな人間性を育てる教育プログラム、それが「浦安人生学」なのだ。

     後期の土曜講座は、「臭い」から考える環境問題だという。多感な中学生たちは、この講義からどんなことを考え、どんな気づきを得るのだろう。

    (文と写真:桜司郎)

    2017年10月05日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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