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    OGも目を見張るICTによる英語教育改革…東京女子

     「『地球思考 Global Thinking』を持った女性」の育成を目指す東京女子学園中学校・高等学校(東京都港区)は近年、ICT(情報通信技術)を活用した英語教育に力を注いでいる。オリジナル教材とタブレット活用を組み合わせた新しい授業プログラムを、母校を訪れた卒業生とともに見学した。

    英語指導を集大成したオリジナル教材

    • 卒業生の八田さん(左)と、卒業生で八田さんの先輩にあたる英語科の石田教諭
      卒業生の八田さん(左)と、卒業生で八田さんの先輩にあたる英語科の石田教諭

     取材に同行してくれたOGは、現在、読売新聞東京本社広告局で活躍している八田瞳さんだ。大学も女子大(津田塾大学)を選んだ八田さんが同校に入学したのは2000年のこと。中学時代を振り返ってもらうと、いかにも英語教育に注力している同校の卒業生らしく、「中3のとき英検2級に合格したことですね」と答えた。「東京女子で学んだおかげです」

     この日は、英語教員らによるオリジナルの授業を2種類見学した。「World Study」と呼ぶ週1回の授業と、LL教室での授業だ。

     中学2年生の「World Study」を最初に訪れた。教材も、授業名と同じ「World Study」。同校が独自に作成したサブテキストで、中1から高2までの5年間使用する。授業前に教材を見た八田さんは、「Daily Conversation」という英会話文例集のページを開き、「見覚えがあります」と懐かしそうに話した。

    「私たちのときはプリントでした。こうやってテキストになっていると、なくさなくていいですね」。同校の多年の英語指導が集大成され、プリントからテキストになったのだ。これによって、意欲のある生徒は、自分のペースでどんどん学習を進めていくこともできるようになった。

     また、この「Daily Conversation」は、同校の英語科チームの手でアプリ版も作成されている。市販もされ、ますます使いやすくなっている。

    ストーリーも描画も発表もタブレットで自由自在

    • 「World Study」の授業で、タブレットを使い、グループで発表の準備を進める生徒たち
      「World Study」の授業で、タブレットを使い、グループで発表の準備を進める生徒たち

     「World Study」の授業は、2回のプログラムに分けて実施する。前半はまず、英語で日本の昔話を読み、グループに分かれて、昔話の中の単語や表現を使って英文のストーリーを作る。後半は、タブレット端末で物語に合わせた絵を描いたり、英文のセリフを録音したりして、発表することになっている。読む、聞く、書く、話すの4技能をバランスよく発揮するプログラムになっている。

     取材当日は、その後半だった。生徒が数人ずつのグループで相談しながら、タブレットの画像作成アプリを立ち上げて絵を描いたり、自分のパートのセリフを練習してはタブレットに録音したりしていた。授業終盤になると、グループごとに作品が完成し、タブレットからスクリーンに画像を投影したり、音声を読み上げさせたりして全員で鑑賞した。また、良かったと思う作品に生徒各自が手元のタブレットから投票し、優秀作品を決めた。

     「タブレットをこんなに上手に使いこなしているのに驚きました。デジタル機器に親しむことは、将来きっと強みになります」。仕事でプレゼンテーション資料の作成などもしているだけに、実感がこもっている。また、「私のときは画用紙に描き、その場で発表するというアナログなスタイルでしたが、内容は同じことをやっていました」と話した。

    • オリジナルサブテキスト「World Study」。礼法とキャリア・ワークブックも学校独自のテキストだ
      オリジナルサブテキスト「World Study」。礼法とキャリア・ワークブックも学校独自のテキストだ

     タブレットを使うメリットについて、英語科の石田千尋教諭は「何回でも録音し直せるので、一発勝負でなく、自分でいいと思えるまで繰り返せます。壇上で発表する必要がないので、人前での発表を苦手に感じる生徒も、積極的に取り組んでいます」と語った。英語教育の本質に変わりはないが、学びのツールは時代とともに進化しているのだ。

     同校は2017年6月から、全生徒に各1台タブレットを貸与し、ICTの活用を本格化させた。このタブレットの特徴は、Wi-Fi(ワイファイ)端末でなく、携帯電話のネットワークが利用できるセルラー対応端末である点だ。タブレットを導入する学校は珍しくないが、セルラー対応機種を導入するのは都内でもまだ数少ない。

     セルラー対応機種を採用した理由は、通学途中の電車内などでも利用できることや、Wi-Fi環境がない家庭でも、タブレットで学習できることだ。たとえば、英語の宿題で教科書の英文をタイピングしたり、音読を録音したりし、タブレットのアプリを使って先生に提出することもできる。「発音のチェックまでしてもらえるのですね」と八田さんは驚きの声をあげた。

     タブレットには、英語以外にもさまざまな教科を補強するアプリを用意しており、校外学習のときにもタブレットは活躍しているという。

    歌いながら楽しく英語を学ぶ

    • LL教室ではネイティブスピーカーのAETが中心となり会話を練習する
      LL教室ではネイティブスピーカーのAETが中心となり会話を練習する

     次に見学したのはLL教室での授業だ。LL教室では、先の「Daily Conversation」もよく使われるが、この日は人気アニメの主題歌の英語版を教材にし、歌いながら学ぶという授業だった。ネイティブのオースティン・ミラー教諭が、オールイングリッシュで授業を進めていく。生徒たちの歌声を聴きながら、八田さんも思わず一緒に口ずさむ。授業に楽しさを加えることで、生徒たちはいっそうのびのびと4技能を学べることだろう。

     こうして培った英語力は、同校のさまざまな海外研修で発揮される。中3から高2を対象としたフィリピン・セブ島英語研修、高1対象の米シアトルでの海外教育研修、高1、2生対象のオーストラリア3か月留学など、希望すれば海外で学ぶチャンスが数多く用意されている。

    女子校で学ぶ人間関係が社会で役立つ

    • カフェテリア「OJエリア」で、在校生と歓談する八田さん
      カフェテリア「OJエリア」で、在校生と歓談する八田さん

     見学を終え、2016年に新設されたカフェテリア「OJエリア」に場所を移し、生徒たちと話した。在校生を代表して中学2年生3人が八田さんを囲んだ。「OJエリア」は明るく広々とした空間で、周りでは生徒たちが勉強したり、友達同士で雑談したりしている。

     「学校生活は楽しいですか」と八田さんが尋ねると、Iさんは「茶道部の活動が楽しい」と答えた。校内には作法室「清香庵」があり、音楽の授業では琴の演奏も体験できる。「畳の部屋への入り方など、礼法で学ぶことは社会人になってからとても役に立つよ」と八田さんが話すと、3人とも興味深そうだった。

     Kさんは共学校も合格したが、「女子だけがいい」と同校を選んだ。「女子だけなので、はっちゃけられて毎日、幸せ」という。「社会に出ると、女性の上司や同僚、部下もいる。そこで女子校での経験が生きてくるから」と八田さんが話すと、Kさんは「両親に、女子校での友達関係は社会勉強と言われました」と思い出した。Iさんは両親に「今から、もまれておきなさい」と言われたそうだ。女同士、本音で話し合えるのが女子校のメリットだ。

     Iさんと同じく茶道部員のOさんは、はじめは中学受験をする気がなかった。しかし、小学2年生から英語を学んでいたので、東京女子で英語入試が始まることを知ると、すぐに受験を決意し、合格できた。英語入試の入学者は少数派で不安もあったが、入学後しばらくして先生に「しっかり勉強できているね」と声を掛けられた。「一人一人を丁寧に見てくれている学校なんだ」と実感したという。

     先生の話になると、八田さんもついつい身を乗り出していた。公立と違って、私立の先生は息が長い。何年たっても母校を訪ねれば懐かしい先生たちの顔があり、後輩たちと同じ先生のことを話し合うこともできる。日々新しくなるICTなど教育環境の下でも、世代をつないで変わらない絆がある。

    (文と写真:水崎真智子)

    2018年03月09日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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